ニューヨークタイムズが社説で「秘密保護法」を批判したことの意味 梓澤弁護士 | 一日一回脱原発 & デモ情報in大阪

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アメリカのリベラル系大手新聞ニューヨークタイムズが、10月29日の社説で、今審議中の「秘密保護法」に強い懸念を示しました。

ニューヨークタイムズがオピニオンとしてではなく、わざわざ社説で「秘密保護法」を批判した意味とはなにか。


11月9日(土)放送の「デモクラTV本会議」に、ゲストとして電話出演した梓澤和幸弁護士のお話しです。

短いですが、重要な指摘がありますので是非お読みください。

一日一回脱原発 & デモ情報in大阪-梓澤和幸

◆梓澤和幸弁護士のお話しより、一部文字起こし(2013.11.09)


(「秘密保護法は」)ますます秘密が秘密になっているというところが明らかになってきたので、特に、アメリカの考えている戦争の火種との関係で、もっと反対の声を大きくして、とくに国際世論に訴えていく必要がある。


10月29日にニューヨークタイムズが個人的な意見ではなく社説でこの秘密保護法が自由に反する危険な法律であるということを指摘したんですね。

その要点はふたつあって


ひとつは、日本の政府は自分に都合の悪い情報をすべて隠すことができると。
なぜならば、秘密の定義があきらかでないからである、というのが一点。


二点目に最近衆議院を通過した「安全保障会議法(NSC法)」。
これの中で
中国を北朝鮮と同じに、同列に置いて、中国・北朝鮮部局というものを設けたことがアジアに紛争の火種をまく。 (※1)


と言ってわざわざニューヨークタイムズが、なぜいま社説を書いたのかということが大事だと思うんですね。


それはわたくしは、1971年のペンタゴンペーパーズ」(※2)ですね、7000ページにわたる、エルズバーグという公務員が暴露した、アメリカの欺瞞的なベトナム戦争計画ですね。
自分たちで嘘をでっち上げて、北爆をやると。

非常に残忍な計画を政府の文章の中に書いてあるのを、その政府文章を作ったうちの一人である、40人のスタッフのうちの一人であるエルズバーグが暴露したんです。

それをニューヨークタイムズが、アメリカ政府の「連載をやめろ」ということ(圧力)、それから仮処分の申請をはねのけて、ついに全部この7000ページの要約を載せたんですね。
そのことが戦争の虚偽の歴史を書き換えて、戦争終結に向かう世論をものすごく盛り上げた。

この教訓があって、最近とくにあのスノーデンがあきらかにした…つまり、アメリカは今、世界で孤立しつつあるわけです。イギリス、フランス、ドイツ皆に批判を受けて。


で、韓国で、たとえばいま地上兵力を、韓国をベトナム戦争のとき5万人連れて行って5千人の犠牲者を出しましたが、あのように韓国をつれていくことはもうできません。なぜかというと反対の世論の運動がものすごく強いですから。

じゃあどこかといったら日本なんですよ。日本こそ、お金といい、湾岸戦争の時うんと出させられたけど、お金といい、自衛隊の地上兵力といい、これを使うのに最もいいところだと考えている。

戦争を何かしかけた時に、戦争に大義がない、正義がないというその秘密を暴露されたら困るんです。


―中略―

もう一つ言いたいことがあります。
それはこの秘密暴露を共謀しただけで、それから、取材をかけただけで5年以下の懲役に処するというのがあるんですよ。
5年以下っていうのは何かというと、
3年以上の懲役の場合は、令状なしで逮捕ができるんです。
令状なしで逮捕ができるというのはどういうことが起こるかというと、逮捕にともなって、令状なしで、テレビ局や新聞社にガサ入れ、捜索、差し押さえができるんです。
じゃあもう記者の取材メモとか、マスターテープですね、テレビ局のマスターテープとか、これが全部持っていかれちゃうんですよ。

そんなすごい法律なのに、やっぱりまだメディアの批判の放列がまだ弱い。
これを聞いている記者の人たち、ぜひ頑張って、自分の良心に問うて頑張っていただきたいと思う。

(文字起こしここまで)



ベトナム戦争当時、アメリカ政府の圧力に屈せず、政府の欺瞞を暴くペンタゴンペーパーズの要約公開に踏み切ったニューヨークタイムズ。大手新聞社の勇気ある行動が、戦争反対の世論を大きく盛りあげました。

今日本政府が成立を急いでいる「秘密保護法」は、言うまでもなくこの真逆を行くものです。


そして今アメリカが(アメリカの一部の戦争屋が)日本に期待するのは、なにか。

9.11とそれに続くアフガニスタン、イラク戦争の苦い経験を経て、世界中の多くの人々がアメリカの欺瞞に気付きはじめ、自国内でも世界的にも厭戦の気分が高まっています。アメリカがシリアへの攻撃を示唆しながら、結局実行できなかった一連の流れは、この事実を端的に表していると思います。


もはやアメリカの掲げる戦争の大義名分など、誰も信じない。自国や他国の兵力を使いにくくなった今、時代錯誤の極右政権が政権の座につき、世界の潮流に反して極端な右翼的政策をおこなおうとしている日本を、アメリカはここぞとばかり自国の戦力の一部として、アメリカの一部の人間が望む戦争に使おうとしています。このことは孫崎享氏が、何度も繰り返して言っていることですね。



3.11前も3.11以降も、「御用マスコミ」としてのマスごみぶりを発揮し続けてきた大手新聞社やテレビ局。けれども今、この「秘密保護法」に関しては、マスコミの論調が変わってきていると感じます
。報道ステーションでも、ニュース23でも、強い口調でこの法案を批判し、廃案にすべきだと断言しています。朝日新聞でも連日特集が組まれています。


極右政権に尻尾を振って御用マスごみであり続けたら、最初は無用な圧力を受けたり不利な扱いを受けたりしない、一見楽で安全で賢い振る舞い方であるように思えるが、結局とんでもない大きなしっぺ返しが自分たちのところに返ってくる。そのことをジャーナリストのみなさんもひしひしと感じ始めているのではないでしょうか。


「秘密保護法」という怪物のような恐ろしい法案をきっかけに、政権に対するマスコミの関係も変わってくるのではないかと期待しています。


※1

「安全保障会議法(NSC法)」が、中国と北朝鮮をひとくくりにしたこと危険性について

NYタイムズ 社説で「日本版NSC」「秘密保護法」断罪の波紋

ゲンダイネット 2013年1月1日 掲載
http://gendai.net/articles/view/news/145618
ただ、ここまでは朝日や毎日など日本の一部新聞の主張と同じだが、NYタイムズはさらに踏み込んだ批判を展開。秘密保護法とセットの「日本版NSC」の事務局である国家安全保障局に「総括」「同盟・友好国」「中国・北朝鮮」「その他(中東など)」「戦略」「情報」の6部門が設置されることを問題視して、こう書くのだ。

6部門の1つが中国と北朝鮮。他は同盟国やその他という分類なのに、である。こうした動きは、安倍政権の中国への対立姿勢やタカ派外交姿勢を反映しており、これが市民の自由を傷つけ、東アジアにおいて日本政府への不信感をさらに高めることになる

日本版NSCと秘密保護法がアジアの安定を脅かす可能性にまで言及しているのである。

米国事情に詳しいジャーナリストの堀田佳男氏がこう言う。
「安倍首相は9月に訪米した際、シンクタンクの講演で<私のことを右翼の軍国主義者と呼びたいのなら、どうぞ呼んでくれ>と言いました。あの発言で、米国のリベラル系メディアは、ますます安倍首相を危険視するようになりました。このまま中国を刺激し続けると、日中間で戦争になってしまうのではないか、と本気で恐れているのです。安倍首相に対する危機意識は相当高まっています」

(引用ここまで)



※2

ペンタゴン・ペーパーズについて参考ブログ

ペンタゴン・ペーパーズ(ベトナム機密文書)を世に出した3人の男たち 2:マイク・グラベル
http://democracynow.jp/video/20070702-8

「ペンタゴン・ペーパーズ」とは、ベトナム戦争に関してアメリカ政府がどのように政策決定を行ってきたかを第二次大戦直後からの歴史をたどって分析した国防総省の7000ページにわたるベトナム機密文書の俗称です。そこには米国政府が不拡大を約束しながら、じつはトンキン湾事件をでっちあげて直接介入を始め、北ベトナムだけでなくラオスやカンボジアも爆撃して故意に戦線を拡大したことなど、歴代の政権が国民を欺いて"泥沼"の戦争に引きずり込んでいった経緯が如実に記されています。この最高機密文書の一部を、1971年6月13日ニューヨーク・タイムズ紙がスクープしました。

 ニクソン政権は出版差止め命令を出しましたが、ニューヨーク・タイムズ側は聞き入れず、ついに最高裁が政府の命令を違憲とする判定を下すという劇的な展開をたどったことは有名です。このときは、諜報活動取締法や国家反逆罪などをふりかざす政府の脅しにもかかわらず、『ワシントン・ポスト』など他紙も続々と「文書」の公表に踏み切り、大手マスコミが国家に反抗するという前代未聞の事態が起こりました。「世界に類を見ない、公的機関による市民的不服従」 とこれを称えるのは、長期の投獄を覚悟で最高機密文書をリークしたダニエル・エルズバーグです。彼はランド研究所から国務省に出向して「文書」の執筆に参加していました。政府のお尋ね者となり、地下に潜伏しながら文書の公開に奔走したエルズバーグの行動は、信念に満ちた勇気ある行動が周囲の人々を動かしていくことを示しています。
(引用ここまで)




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