国士無双『史記』
マージャン愛好者には役満のひとつとしておなじみだが、もともとは、一国にふたりといないすぐれた人物の意で、名将韓信を評したことばである。韓信は、背水の陣を敷いたことで知られ、百万の大軍をおのれの手足のごとく動かすといわれた用兵の天才。そんなかれも、はじめは主君の劉邦にまったく認めてもらえず、いや気がさして逃げ出したことすらあった。が、丞相の蕭何に見出され、その推挙によってようやく活躍の場を得る。韓信ほどの男でも、上司の目にはなかなかとまらないもの、凡人は身の不遇を嘆く前におのれの能力を再点検するほうがいいようだ。(丹羽 隼兵著「中国古典の名言」より)