今日は、また「小さな物語」を書いてみます。
前回とは少し違うお話ですが、
静かな気持ちで読んでもらえたらうれしいです。
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ミルラ星では、七つの夜を迎えると、
子どもたちはひとり、静かな場所へ送られる。
それは「気づきの場所」と呼ばれていたけれど、
こわいところではない。
ただ、「いつも」がない場所だった。
ルロは七つになった夜、
ふわりと眠くなって、気がつくと知らない部屋に立っていた。
テーブルの上には、お皿が一枚。
ごはんはあるけれど、少し冷たくて、
具材が大きく、食べづらかった。
「……たべにくいな」
そう言ってみたけれど、
誰も聞いていないみたいだった。
次の日も、その次の日も、
ごはんは同じようなままだった。
お水はあるけれど、冷たすぎたり。
朝起きると、毛布が掛かっていなかったり。
こまっていても、「だいじょうぶ?」と聞いてもらえない。
ルロは、だんだん気づきはじめた。
ここには、「いつも」がないのだと。
ある夜、ルロは泣きながら小さくつぶやいた。
「……いつも、たくさんありがとう」
家では、
ごはんは食べやすくしてくれていた。
寒そうなときは、すぐに声をかけてくれた。
眠る前には、必ずそばにいてくれた。
それが、
当たり前じゃなかったことに、
そのとき、はじめて気づいた。
次の朝、
ルロは冷たいごはんを、ゆっくり食べた。
「……これも、ありがとう、かも」
そう言うと、
胸の奥が、少しあたたかくなった。
七日目の朝、
目を開けると、そこはいつもの家だった。
親のポポンが、やさしく笑っていた。
「おかえり、ルロ」
ルロは、ぎゅっと抱きついた。
「ごはんも、お水も、声も……
ぜんぶ、ありがとう」
ポポンは何も言わずに、
ただ、そっと頭をなでた。
ミルラ星では、
こうして子どもたちは知っていく。
「いつも」は、だれかの思いやりでできている
ということを。
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ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
毎日当たり前のようにあることは、
実は、誰かの思いやりの上に成り立っているのかもしれません。
この小さな物語が、
読んでくれた方の心に、ほんの少しでも残ったらうれしいです。
また、気まぐれに書きます🌱
