小さな物語、六つ目のお話です。
今日は、ミルラ星の森に立つ
一本の木のお話。
――――――――――――
ある冬の日、
ユノがその木を見上げて言いました。
「この木、さみしそう。」
花もなく、
葉もなく、
ただ静かに立っているだけ。
トトも言います。
「ほんとだ。
なんにもしてないみたい。」
そのとき、
ルロがゆっくり首を振りました。
「そんなことないよ」
「この木は、ずっとここにいる。」
雪の日も、
風の日も、
森がしんと静まる夜も、
この木は
同じ場所に立っています。
ルロは木を見上げながら言いました。
「花が咲くときは、みんなが喜ぶ。」
「でもね」
「花がないときも、
この木は森の一部なんだ。」
根を張り、
土を守り、
風を受け止めながら。
何も咲いていない冬でも、
この木は
静かに生きています。
ユノは少し考えてから言いました。
「じゃあ、この木は
なにもしてないわけじゃないんだね。」
ルロはうなずきました。
「そうだね」
「花が咲くときだけじゃなくて」
「咲かないときも、
そこにいることが大切なこともあるんだ。」
そのとき、
冬の風が静かに森を通り抜けました。
枝だけの木が、
小さく揺れました。
ユノはその木を見上げて言いました。
「春になったら、また花が咲くね。」
ルロは少しだけ微笑みました。
「きっとね」
ミルラ星の森では、
今日も一本の木が、
静かにそこに立っています。
花が咲くときも、
咲かないときも。
――――――――――――
誰かの存在は、
花のように目立つときもあれば、
静かな冬のようなときもあります。
けれど、
そこに在ることそのものが
誰かの安心になっていることもあるのかもしれません。
ミルラ星の森は今日も、
静かな時間を育てています。