長引く自粛生活や在宅勤務の影響で、暴飲暴食に走りがち、メンタルが不安定になりがちな人が多い。人生100年時代と言われる今、できるだけ長く健康でいたいものである。健康のために何を食べるかばかり重要視されるが、それを消化する腸内環境が悪ければ元も子もない。腸内環境がいかに大切なのか、専門医師に聞いた。
◆腸内環境の改善は水分摂取と温度の調節を習慣づける
これまで西洋医学では軽視されていた「小腸」こそが、腸の中で最も重要であると提唱する。
「人間の体内で各臓器に情報を伝えるのは神経とホルモンであることは周知の事実ですが、そのホルモンは味覚を感じる舌先やあらゆる臓器に存在している基底顆粒細胞から分泌されています」
この基底顆粒細胞が特に多く集まっている部位を東洋医学では「ツボ」と言うが、湿布や鍼などで刺激することによって細胞が反応してホルモンを分泌するため、痛みが和らいでいくという。
「特に小腸内に存在する基底顆粒細胞からは、セロトニンやソマトスタチン、ニューロテンシン、エンケファリンなど脳に存在するすべてのホルモンが放出されていることが明らかになっています」
◆暴飲暴食は「心の病」につながることも
しかし暴飲暴食を続けると、小腸内の基底顆粒細胞が飽食状態となり、脳内ホルモンの分泌が滞って生きる意欲を喪失するなど「心の病」も発症してしまう。
「心は脳ではなく腸がつくりだしている。腸内環境を整えれば脳内ホルモンが正常に分泌されます」
小腸が正常に機能していれば基底顆粒細胞も正常化し、腸内細菌も活性化され、免疫力や消化吸収力も高まっていく。
「食事面では、食べて寒さを覚える食材は自身の体に合っていない証拠なので、食べ過ぎないこと。また、小腸内の水分調節と温度調節の習慣化が必要です」
水分調節とは、ビールや水を大量に飲んで小腸の“根腐れ”を起こさないこと。喉の渇きを覚えた際は水を一気に飲まず、少しずつゆっくり摂取することを習慣化しよう。
温度調節とは、腸を温めること。就寝時に腹巻きをしたり、足湯をすることで循環が良くなり、腸を効率よく温められる。
◆腸内環境を改善する習慣
・水をガブ飲みしない
「水を一日2ℓ飲むと体に良い」は大嘘。喉が渇いたときだけゆっくり飲むこと
・足や腹を常に温める
腹巻きをして寝る、足湯で末端を温めることで循環が良くなり、腸内環境の改善に繫がる
◆酒を飲んだ直後、横にならない
「声のかすれや喉の違和感から咽頭がんを疑う患者が多いですが、実際は逆流性食道炎」
そうした人々は、遅い帰宅で飲酒後すぐ就寝しがち。朝起きると喉がイガイガして声がかすれていると、胃酸で喉がやけている証拠だ。
「睡眠時無呼吸症候群を合併していることも多いです」
就寝2~3時間前から飲食をしないのが改善策だが、やってしまった場合は「すぐに平らに寝ないで頭を上に30度くらい角度をつけて寝れば多少は変わります」