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設問1

1 課題1

(1)肯定説は、共同訴訟人の間で主張共通を認める。肯定説は、主張共通は弁論主義の現れであり、弁論主義の趣旨は私的自治の訴訟手続への反映であるとし、私的自治が適用となる範囲を共同訴訟人を1個のものとして適用すると考える。そして、このような私的自治に関する考え方により、共同訴訟人間で主張共通を認めるものである。もっとも、一方の共同訴訟人にとって不利な他方の共同訴訟人の主張に主張共通を認めることは、他方の防御権を害する。したがって、両方の共同訴訟人にとって有利な主張のみ主張共通の適用があるというべきである。

(2)(ア)の主張は、Xの請求原因の一部を認める旨の主張であり、これによって、Xの請求原因から発生する法律効果が生じるという点において、Yらにとって不利な主張である。したがって、(ア)の主張には主張共通の適用はない。

(イ)の主張は、Xの請求原因に対する抗弁にあたる主張であり、相殺を主張するものである。相殺の主張は、自らの債権と訴求債権を対等額で消滅させ、請求棄却を導くものなので、被告にとって有利となる主張である。(イ)の主張には主張共通の適用がある。

2 課題2

(1)否定説は、私的自治の適用を共同訴訟人間で別個と考えて、弁論主義を適用する。民事訴訟法39条では、共同訴訟人独立の原則について規定されており、その趣旨は、手続保障と個人単位での自由な訴訟行為を認めることにある。すなわち、否定説は、共同訴訟人はそれぞれ別個独立の当事者だから、各人に自分の訴訟を追行する自由と手続保障を与えるべきと考える。肯定説の私的自治を共同訴訟人側を1つのものとして適用する考えは、39条の趣旨に反するので、肯定説は妥当ではない。

(2)Y1は、(ア)において、Y1訴訟のXの請求の要件事実である本件契約の締結と仕事の完成について認めている。そして、Y1は、(イ)において、甲に瑕疵があったことによる契約不適合により発生した甲の修理代金とXの訴求債権との相殺を主張している。

 肯定説によると、(ア)には主張共通の適用はなく、(イ)には主張共通の適用がある。もっとも、(イ)の主張は、(ア)の主張を前提として相殺の主張をするものなので、(ア)には主張共通の適用はなく、(イ)には主張共通の適用があるとすると、(イ)の主張はY2にとって、意味がないものになってしまう。

 したがって、肯定説を本件に適用すると、Y1の主張がY2にとって意味のないものになってしまうという問題点がある。

設問2

1 課題1

(1)証拠が「技術の秘密」(197条1項3号)にあたる場合でも、それを開示することの公益との衡量によっては、開示が義務付けられる場合がある。これは、「技術の秘密」を公開することによる開示者の被る経済的や職業的な不利益と公開により確保される真実の発見などの民事訴訟上の公益との比較考量の結果、開示することが適当であると判断される場合があるという理由による。そこで、平成12年判決や平成18年判決が示した「保護に値する秘密」にあたるか否かは、開示により開示者が被る不利益の内容や程度、開示の必要性、開示により真実が発見されることの期待の有無や程度、開示により確保される公益の内容や程度から総合的に判断するものと考える。

(2)本件図面等は、ZがXから請け負った部品の製造過程に関するZの「技術の秘密」にあたる。そして、たしかに、本件図面等は、Xから請け負った部品の製造のみに使用されたものではあるが、その技術の内容は、Zの社外秘であり部外秘とされている他の主力製品の製造工程と共通する部分が多くあったものである。このような事実からすると、本件図面等が開示されることによって、Zに技術上及び経済上の損害という不利益が発生するとともに、主力製品に係るものも多いという事情からは、その不利益の程度は大きいといえる。

 他方、Y1が依頼した修理業者は、欠陥の特定について直ちには分からないと発言しているものの、詳細な分析をすれば、XとZのどちらの工程に欠陥があったのか判明することができる可能性を否定できない。そして、仮にZからの本件図面等の開示がなかった場合であっても、Xが納品した部品を専門家に分析させることなどによって、欠陥の特定をすることは可能と考えられる。したがって、開示の必要性は高いとまではいえない。

 また、たしかに、開示によって、Zが使用した図面等の内容を把握することができるが、欠陥は図面等に存在したとまでは断定できず、他の原因により発生した可能性が相当程度認められるといえるから、真実が必ずしも発見されるとは限らない。

 そして、たしかに、開示によって、紛争解決には資する側面があるので、民事訴訟の目的を達成するのに役立つといえるから、公益は確保されるといえる。しかし、上記のようにZが多大な不利益を被ることを考慮すると、必ずしも開示が正義の実現にはつながらない。したがって、開示により確保される公益は限定的といえる。

(3)以上のような事情を総合的に考慮すると、Zの「技術の秘密」は、「保護に値する秘密」にあたるというべきである。

 よって、Zは、本件図面等の提出を拒むことができる。

2 課題2

(1)私見としては、課題1で言及した「保護に値する秘密」の判断基準と平成16年判例の判断基準は異なると考える。

(2)197条1項2号は、弁護士等が職務上知り得た事実のうち「黙秘すべきもの」について、提出義務を免除している。同号は、一定の専門家が依頼主などとの接触を通じて知り得た職業上の秘密のうち、依頼主にとって、主観的利益だけではなく、客観的にみて保護に値するような秘密について特に提出義務を免除したものである。このような規定の仕組みからすると、同号は、依頼人等が主観的のみではなく、上記のような専門家との関わり合いによって、客観的にみて、その信頼関係が保護に値するか否かより、提出義務の免除を判断していると考えられる。したがって、197条1項2号の趣旨は、専門家とその依頼主の間の信頼関係を保護することにあると考える。そうすると、秘密が「黙秘すべきもの」にあたるか否かは、それを開示することによって、客観的にみて、専門家と依頼主等の間の信頼関係が破壊されるか否かにより判断すべきである。また、信頼関係は第三者との間でも生じうるので、第三者との信頼関係も保護に値すると考える。

(3)他方、課題1で言及した「保護に値する秘密」の判断基準は、開示による開示者に生じる不利益と開示によって確保される公益を比較考量するものである。したがって、197条1項3号の趣旨は、個人の「技術の秘密」の秘匿の必要性と公益との権衡を図ることにある。そして、そのような趣旨から、上記のような判断基準が導かれる。

(4)このように、197条1項2号と197条1項3号では、趣旨が異なり、その判断基準も異なる。

設問3

1 課題1

(1)既判力(114条1項)とは、確定判決のもつ後訴への通用力のことをいう。既判力により、後訴裁判所は前訴確定判決に矛盾する判断をすることができなくなる。既判力が正当化される根拠は、手続保障の充足と紛争の蒸し返しの防止にある。

(2)確定判決の既判力には遮断効が発生する。遮断効とは、前訴口頭弁論終結時までに存在した事由を後訴で主張できなくなるという効力である。遮断効が生じる根拠は、前訴口頭弁論終結時までは、当事者は自由に攻撃防御方法を提出できたのだから、その時点までは手続保障が図られていたといえ、これを後訴で提出することは紛争の蒸し返しになることにある。

(3)昭和51年判例のような事案においては、たしかに、保証人に対する判決は、主債務者に対する判決の後になされている。しかし、主債務者の勝訴の原因となる事由は、保証人敗訴の裁判の口頭弁論終結前に発生していた事案である。したがって、保証人は、自らに対して保証債務の履行を請求する訴えにおいて、主債務者の勝訴の原因となる事由を提出することができたといえる。このように解すると、保証人による請求異議の訴えにおける主債務者の勝訴確定判決を援用することについては、前訴において、自由に攻撃防御方法を提出できたのだから、その時点までは手続保障が図られていたといえ、これを後訴で提出することは紛争の蒸し返しになるということができる。したがって、後訴で保証人が主債務者の確定判決を援用するという主張は、既判力により遮断される。

 また、仮に反射効を認め、保証人の地位が主債務者に依存するものだと認めたとしても、保証人の援用は、上記理由により、前訴確定判決の既判力により遮断される。

 よって、保証人は、主債務者に対する確定判決を援用することはできない。

2 課題2

(1)昭和40年判例の事案は、前訴の被告が、相殺権を前訴口頭弁論終結時に保有していた事案であり、当該被告が後訴において相殺権の行使を認めた事案である。他方、本件後訴は、前訴の被告はY1であり、後訴において、別の者であるY2が、前訴でY1が主張した相殺による代金債権の消滅を主張する事案である。したがって、昭和40年判決と本件後訴は、相殺を主張する当事者の立場が異なるが、同じ相殺の主張をするものである。

(2)昭和51年判例の事案は、確定判決による主債務の不存在という事実の確定が保証人による請求異議の訴えの後に生じたものではあるが、その事実の基礎となる事由は当該請求異議の訴えの前に生じていたものとして、既判力による遮断効を認めたものである。他方、本件後訴も、前訴確定判決の後に本件訴訟の判決が確定したものであるが、Y1勝訴となる事由に関する主張は、前訴口頭弁論終結前に発生していた事案である。したがって、昭和51年判決と本件後訴は、訴訟物や請求原因が異なるが、前訴口頭弁論終結前に被告による主張の原因となる事実が存在していたことで共通する。

(3)Y2の主張(2)は既判力により遮断されると考える。

 Y1は、本件訴訟において、Y1が有するXの契約不適合による債務不履行に基づく損害賠償請求権とXがY1に対して有する請負代金債権を相殺することを主張していた(民法505条1項本文)。また、民法457条3項により、Y2は、Y1の相殺権を援用して、Y2に対するXの請求を拒むことができた。

 たしかに、本件訴訟の判決が確定したのはY2に対する前訴の口頭弁論終結後である。しかし、Xによる契約不適合は、前訴の口頭弁論終結前に発生しており、Y1がこれを主張していた以上は、Y2もこれを援用して、Xからの請求を拒むことができたといえる。

 そして、このように考えると、後訴において、Y2の相殺の主張の根拠となるXの契約不適合の事実を主張することは、前訴の口頭弁論終結前に発生していた事由を根拠とするものであるから、これを主張することは、手続保障の充足と紛争の蒸し返し防止に反するといえるから、主張(2)は、前訴の既判力によって遮断されると考える。これは昭和51年判例の考え方を援用したものである。

 昭和40年判例が、相殺の主張を認めたのは、相殺の抗弁は、別の債権を犠牲にして勝訴判決を得る点において、実質敗訴の働きがあるので、前訴で相殺の抗弁を主張することが期待できなかったからであるところ、本件では、Y2は自らの債権を犠牲にして相殺を主張することができたわけではない。したがって、上記のように解することは、昭和40年判例にも矛盾しない。

 よって、主張(2)は、前訴の既判力によって遮断される。

(4)①Y2はY1の保証人であり、Y1から裁判資料の提供を受けることが可能であったと考えられるから、Y2は損害賠償債権の要件を主張立証することができた。②たしかに、Y2はY1の指示に従っていたのであるが、その判断をしたのはY2なので、自己責任というべきである。また、Y2は自分の訴訟であるのに、誠実にそれを追行していないという落ち度もある。③弁論が分離されても、訴訟外でY2がY1にコンタクトを取ることは可能である。したがって、①ないし③は主張(2)の当否に影響しない。