再現答案:行政法 | Takaの司法試験やるよやるよブログ

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2022行政法

 

第1         設問1

1 取消し訴訟を断念した理由

 取消し訴訟(行政事件訴訟法3条2項)は処分があってから6か月を経過すると提起することができなくなる(14条1項)。本件処分があったのは、平成18年4月14日であり、Dが訴訟を提起しようとしたのは令和に入ってからであると考えられるので、6か月を経過している。

 他方、無効等確認訴訟(3条4項)には出訴期間の制限はない。

 以上により、Dは無効等確認訴訟を提起したいと考えていると考えられる。

2 原告適格

(1)  原告適格

ア 原告適格が認められるには、「法律上保護された利益」にあたることが必要である。「法律上保護された利益」といえるためには、当該処分により、自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害され、または必然的に侵害されるおそれのある者である必要があり、当該処分を定めた行政法規がそれを一般公益に吸収・解消させるにとどまらず、個々人の持つ個別的利益としても保護する趣旨のときは、そのような利益も法律上保護された利益にあたると考える(36条)。

イ 処分の根拠法令である本件条例4条1項は、「町にとって」という文言を使用しており、これは当該規定が一般公益を目的としてものとも考えられる。

 もっとも、条例6条1項は、「所有者」が文化財を管理することを求めており、目的物の所有者にも一定の配慮をしていると考えられる。また、13条1項は、文化財を変更等しようとするときは、教育委員会の「許可」を得ることとしており、文化財に利害関係を有する者の利益に配慮した規定となっている。そして、19条、20条、21条は、文化財に関する諮問のための保護委員会について定めており、文化財の所有権を有する者について制限をしようとするときは、慎重な考慮を必要としている。

 したがって、条例は文化財の所有者の所有権を一般公益のものとして保護する趣旨であるといえる。

ウ 人が物に対して有する所有権は、物権の中でも中核的な権利であり、重要といえる。

 また、文化財の指定は恒久的な措置であると考えられ、所有権に与える影響は回復困難なものである。

エ よって、条例は、教育委員会の文化財の指定により、自己の所有権に著しい影響を受ける者の利益を個々人の個別的利益として保護していると考えられる。

オ Dが所有する土地の一部は、本件処分により文化財に指定されており、それは恒久的な措置であるといえるので、Dは自己の本件土地に対する所有権に著しい影響を受ける者として、原告適格が認められる。

(2)  補充性

ア また、無効等確認訴訟が認められるためには、「当該処分…を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達成できない」場合として、補充性が必要となる。

 補充性が認められるためには、無効等確認訴訟の方が他の手段よりもより直截的であることで足りる。

イ 民事訴訟の確認訴訟では、第三者効がない。他方、無効等確認訴訟には第三者効がある。例え、民事訴訟でDが勝訴しても、教育委員会に対してのみ効力を有し、その他の第三者には判決の効力が及ばない。Dが求めている法律効果を実現することができるのは、無効等確認訴訟であり、より直截的であるといえる。

ウ したがって、補充性も認められる。

(3)  以上により、Dの原告適格は認められる。

第2         設問2

1 裁量

 本件条例4条1項が「できる」という文言を使用したのは、教育委員会の文化財指定に関する専門技術的知識・経験を重視したからであり、教育委員会には効果裁量が認められる。

 また、「町にとって重要なもの」という基準は、教育委員会が町の事情に精通し、要件を満たすかについて専門的な知識を有するものとして、教育委員会に要件裁量を与えている。

 もっとも、教育委員会の判断が重大明白な瑕疵を含むときは、その裁量の逸脱濫用として、違法となると考える(行訴法30条)。

2 事実誤認

(1)   Dは本件処分は明確性に欠け、事実誤認があるので、重大明白な瑕疵があると主張する。

(2)   Dにとって、本件土地のどこまで本件処分の指定が及んでいるかは、所有権に係る事項なので、重要であるといえる。

(3)   C古墳の範囲は、本件石室部分のみを指し、盛土は含まれないから、本件石室の周囲1メートルまでの工事ならば、C古墳の現状が変更されるおそれはなく、その保存に影響を与えることもない。

 しかし、教育員会は、盛土部分もC古墳に含まれると判断している。加えて、本件石室の半径約10メートル以内の一帯がC古墳にあたることを示す標識等もない。

(4)  したがって、本件処分には事実誤認という重大明白な瑕疵があるといえる。

3 考慮不尽

(1)  条例20条1項は、保護委員を10人以内とし、22条2項は、会議は委員の半数以上が出席しなければ開くことができないと規定する。

(2)  本件では、本件処分にあたり、諮問は行われず、E一人の意見のみが採用され、処分をするに際し、条例の要件を満たしていない。

(3)  したがって、本件は本来ならば必要な委員による諮問がなされていないとして、考慮不尽の違法がある。

4 手続的瑕疵

(1)  また、上記のようにEのみの意見を参照したことは、条例22条2項が求める手続き的な要件を履践していないという手続き的瑕疵がある。

(2)  手続の瑕疵が無効原因になるか問題となるも、それが重大明白な瑕疵であるときは、無効原因となると考える。

(3)  本件では、諮問は文化財指定の重要な要件であり、瑕疵は重大である。また、諮問を要することと、過半数が出席することは条例の求めている要件であり、瑕疵は明白であるといえる。

(4)  したがって、本件処分は無効となる。

5 以上により、本件処分は無効となる。

以上