フィンセント・ファン・ゴッホ


というと、ひまわりと日本の浮世絵が一緒に浮かんできます。


絵や音楽は、
その人の生き方だったり、ルーツだったり、
そういったものを感じられるところがいい。



この本は、ゴッホの兄弟と、日本人の画商の林忠正と加納重吉のフィクションです。

ただ、実在している人物だから、話にリアリティーがあるし、ぐいぐい引き込まれます。


先端をいく印象派の画家たちのなかでも、更に先にいってしまったゴッホの報われない(絵を購入してくれる人がいない)人生。


だけど、絶対に、時代が追いついて、理解してもらえると心から信じて、応援してくれる弟と、友人がいます。


それは、幸せなことなのに、自分を追い詰めていってしまう。


悲嘆にくれてばっかりだけど、それがゴッホの作品には必要だったのかな、

だからこそ、この見る人の目を離さない作品ができたのだと思います。







1886年

小見出しに時と場所が書いてあります。


想像もつきやすい。



日本は、明治19年。

帝国大学、小学校と中学校と師範学校が発令交付された年だそうです。

まだまだ幕末の香りが残っていますね。



この年に、歌川広重の『大はしあたけの夕立』の浮世絵を見たゴッホの弟は、

『斬新な構図、新鮮な色。細部まで完璧に刷り上げる版画の技術の高さ。そして、画家の風景に対する独特の解釈、卓越した表現力。
こんな絵を描くことができるとは…
ー広重が生まれた国、日本とは、どういう国なんだ?』

と、衝撃を受けます。



日本の美術の影響をもろに受けた画家たち。
マネ、モネ、ドガ、ピサロ、ルノワール、印象派として数多くの作品が生み出されました。


そして、ゴッホは、『名所江戸百景』『花魁図』などの浮世絵から影響を受け、日本に行きたいと本気で熱望します。



相談を持ちかけた林忠正に、こう言われます。

『あなたの日本への片恋は度を越しています。会ったこともない女に恋い焦がれているようなものだ。』


まさに、図星。


そこからの言葉に感動しました。


『あなた自身の日本をみつけ出すべきです。あなたにとっての芸術の理想郷を』

ゴッホは、忠正にとても感謝しているし、恩人です。



そこからのゴッホの絵が凄まじかった。




と、破綻していく精神。



ぐっと掴まれていく小説でした。




ゴッホの画集を借りて、じっくり拝見しよう、

落ち着いたら、美術館に見に行こう、

そう考えながら、余韻に浸りました。