浅田次郎さんの本は初めて読みました。

最近完本として出て、こちらの人気が高いので気になっていました。


浅田さんの母の実家は、奥多摩の御嶽山の宮司を務めているご家庭です。

主に幼少期の神がかったお話を、伝聞、夜伽話、実体験とおぼしき話を、現実と小説の間の実に描写のうまいリアルなタッチで書かれており、短編集なので読みやすくまとまっています。


しかし、ゾッとする物語でした。

でも、怖いかどうかは自分が決める事だと子どもたちに言ってるので、気を取り直して読み進めました。



雪の降る年末の晩に、仲間を探しに来る方たち。

畏怖する存在の神や天狗、狐憑きの娘の話。

験力や神上がりが本当に恐ろしいリアルさで描かれています。


特に好きな?話は、日露戦争の兵隊さんのお話ですね。「兵隊宿」です。


坂の上の雲のドラマが再放送してますが、小説を読んで、苦しくて辛くて泣けて幸せで、すごい時代だなと、この時代に敬意をもっています。

ゴールデンカムイも、日露戦争始まりです。

なぜか、身近に感じるんですよね。




本当に、物語の展開が読めなくて。

それもそのはず、わたしはこの世界観をまだ理解せずに読んだ二話目だから。

それは、イツさんと同じ視点です。

戦争で苦労なさって帰ってきて、祝言の為に足を運んでくれた兵隊さんに、親切にしたい、我が家で面倒をみて、働いてもらうのはご神意にかなう、

そんなふうに言えるイツさんは心優しいし、そうするべきだと思いました。

でも、父である御師さまは、

『あの人は穢れている。山に住まわせるわけにはいかない。』



髭おじいさんが、大層な験力の持ち主で「髭の御師様」と呼ばれ、狐つきや神託を乞う人が多く訪れたそうです。

それは、常人には見えない世界。

決まり事や、護るべきものがある。

『いや、当家にも他意はございません。意を翻すようで心苦しいが、当家には当家の事情があります。』






時は大正のお話。

しかも山深い、神の山。

蛇か邪か神か、色々訪れていたんだろうなぁと想像できます。



婿養子できてくれた時期当主の話では、霊能力のないことも意味があるから役に立つ事ができるとありました。

そう、現実を生きてきて、人の世で揉まれた知恵と知識は役に立つ。

『いくら修行を積んでも験力など身につかぬあたりまえの人だが、そのぶん父には常識があり、感覚によっては祖父よりも聡明だった。』

『見えざるものを見、聞かざる声を聞く父や自分よりも、心やさしいこの人こそ神職にふさわしい。きっと夫は、神に希まれたのだと思った。』



大正は、まだ現実と畏怖存在との境界線が薄くて、みんな八百万の神を意識していたんだろうな、と思います。



その頃の、濃厚な、御嶽山のお話。



一つ、やっぱり気になる事が。

小説だとわかっていても。


赤坂の豊川稲荷が出てくるんです。

桜の季節に、満開の枝垂れ桜の下に立っているうちに、狐が憑いてしまった人の話。


びっくりして。

今、何故かレジャーランドかのように賑わってて、熱心に回ってる人がたくさんいますよ?

わたしも二回行ったのですが、もういいかな、と思ってて。

まさかね。

とおもいながら。


因みに、なに不自由のないお金持ちのお嬢さんに憑く事が多い、もしくは、別嬪さんで器量よしだとお狐様に気に入られる。

夜爪を切ってはいけない、

左右不揃いの靴や下駄を履いてはいけない、

満開の枝垂れ桜の下に立ってはいけない、

と叔母様が言ってます。




浅田次郎さん。

物語るうまさに引き込まれて、感服した小説でした。

今人気があるのも、なんとなく分かる気がします。



よろしければ、お手に取ってください。


お読み頂きありがとうございます。