編集部撮影
ブログの中でも定番となった「漫画ブログ」。
名前のとおり、漫画形式で自分の日常をつづるこのジャンルの多くは、プロの漫画家ではなく、一般人が日常をつづったもの。
日記形式でストーリーがあるわけでもありませんが、これまで多くの作品が書籍化・映像化されています。
なぜ、ブロガーたちの日常が、ここまで読者の心をひきつけるのでしょうか？
そこで、数多くの漫画ブログを発掘し、コミックエッセイ作品として世に送り出してきたKADOKAWAコミックエッセイ編集課・編集長の山崎旬さん（「崎」は正式には「たつさき」）にその理由をうかがってみました。
山崎さんによると、アメブロの漫画ブログのなかで、コミックエッセイとして書籍化された2016年以降だけでも合計34名。重版される作品も多く、出版部数ものべ77万部を超えたそう（2016年以降）。
そんな漫画ブログの魅力は、「親しみやすさ」と山崎さんは語ります。
「1つは、子育て、一人暮らし、ペットとの生活など、読者の生活や経験と重なるテーマが多いので、まるで親しい友達・知人の体験談を共感しながら聞いたり、追体験をしているような楽しみ方ができるのが独特ですね。」
そんな身近なテーマを扱うからこそ、重要になってくるのは伝え方。KADOKAWAコミックエッセイ編集部は書籍化するブロガーを選ぶ際には、こんな細部にも注意しているそう。
「日常の切り取り方や、その表現方法にブロガーの個性があるかは重視しています。ブログから描き手の人柄が見えるかも大事な要素で、読者がそのブログをどう楽しんでいるかを想像しながら読むこともあります。
さらに、読者に面白さ・情報を伝えようとするサービス精神があったり、ブログ自体の読みやすさを工夫されているかなど、書籍化する際にも色々と面白い試みができるのではないかという印象がありますね。」
テキストよりも要素が多いぶん、細かなディテールで描き手の個性が垣間見えるコミックエッセイ。ブロガーのキャラを活かしつつ、ファンにとって「あたらしい一面」を見せることも書籍化の醍醐味です。
▼カワタミワさん
(C)Miwa Kamata/KADOKAWA カマタミワさんの新刊『ひとりぐらしこそ我が人生』より。
「ガス1口でも作れて野菜が250g摂れる」など、徹底した“一人暮らし目線”のレシピが書き下ろしで加わっている。
「たとえば、一人暮らしへのエンジョイぶりをつづるカマタミワさん。5冊目となる著書『ひとりぐらしこそ我が人生』では、
レシピを多めに書き下ろしたところ、
『いつものぶっ飛んだ一人暮らしネタに加えて、料理レシピが盛りだくさんで嬉しかった』
という感想がたくさん寄せられました。」
また、ブログにはなかなか掲載しづらい長編エピソードや、普段のブログとは印象の異なるややシリアスな内容の描き下ろしを収録することがあり、
そういった作品では『ブログとは一味違うブロガーさんの一面を見ることができて嬉しい。いっそうファンになりました』といった感想が寄せられます。」
▼さーたりさん
(C)Sa-tari/KADOKAWA 現役外科医ブロガー、さーたりさんのコミックエッセイ『腐女医の医者道！』より。
ブログでは重くなりがちな子育てと外科医の両立への葛藤をつづっている。
コミックエッセイは「深さ」を求める時代に？
このように、読者にとって身近なテーマ、ブログからさらに一歩踏み込んだブロガーの一面に触れられるコミックエッセイ。
子育てや恋愛など日常をテーマにした作品が主流ですが、今後のトレンドはどう変わっていくのでしょうか。
等身大という点は変わらないものの、
「より深度のあるテーマ、たとえば自分が好きなものやハマっていることについて徹底的に描くような、パーソナルな作品が増えているかもしれません。」
と山崎さんは捉えているそうです。
自分にとっては身近でなくても「誰かがとことんハマっている」ものはなんとなく面白く見えてしまいますよね。
ドラマやアニメでも、ディープな趣味が登場する作品が増えている昨今、コミックエッセイにもその流れがやってきているのかもしれません。
①カマタミワさんの『ひとりぐらしこそ我が人生』
一人暮らしも19年目に突入した人気ブロガーの5冊目となる書籍。
アラサーが真剣に考える「お風呂の楽しい遊び方」などゆるい一人遊びネタはもちろん、一人の家飲みレシピといった役立ちネタも書き下ろしも追加。
②さーたりさんの『腐女医の医者道！』
医局は実はオタクだらけ!? 知られざるドクターヘリの裏事情とは…?
さーたりさんの心に残る患者さんとのひと言――。
現役外科医だけが知っているお医者さんの世界のぞき見コミックエッセイ！
