今年オリンピックを開催する中国にとって、チベット問題は喉に刺さった棘になっている。聖火リレーは、チベット問題のプロパガンダの場と化している。

 どこの国でも、民族問題はデリケートで難しい問題である。この国においても、アイヌなどの少数民族や在日の問題は根深い問題である。

 1959年のチベット民衆の蜂起、ダライ・ラマ14世のインド亡命以来の問題であるが、これまでの共産党政権は少数民族の文化や宗教などへの介入を比較的慎重にしてきたはずである。その代表は、胡耀邦、趙紫陽であるが、いずれも小平に解任されている。

 小平に重用されたのが現在に指導者である胡錦濤である。彼の経済優先主義により鉄道を開通させ、漢民族のチベットへの移住が進んでいる。また、中国政府にとっては、資源としてのレアメタルも魅力である。チベット民族の危機感はここから発している。このままでは、経済的に圧され、文化や宗教まで変えられてしまうという危機感である。

 大事なものは、経済的な豊かさか、それとも民族の尊厳か。二者択一の問題ではない。自立と共存、バランスの問題である。

 ただ、根源的には、以前にも述べたが、中国が現在の経済優先路線をとっている限り、中国共産党政権には正当性が無い。平等や公平を棄てた共産党にアイデンティティは無い。

 ダライ・ラマ14世は、純粋な宗教家というより、なかなかの策士に見える。