当校には台湾人学生が多い。彼らの名前は漢字だが、大半が別名を持っている。陳雅婷はベテイ、黄冠宇はマイケル、簫詩君はジュリアで、あの蔡天昭はハンスだった。

 公太郎は、陳雅婷も黄冠宇も何年か米国にいたので、米台〝二重国籍〟なのだろうと思っていた。ところが、他の台湾人学生も別名を使うので、簫詩君に訊いてみた。

「簫さん、ジュリアはニックネームですか」

「ハハハ、ジュリア・ロバーツが好きですから」

「???」

 

       

 他の学生に訊いても、「開運名です」とか、「英語名です」の返答だった。名前の呼び方については、通常、日本人は、「山田さん」、「高橋さん」など、姓で呼ぶ。が、タイ人は、ニックネームで呼び合う。そして、インドネシア人、ミャンマー人、モンゴル人には姓が無いらしく、呼び方は様々だ。

 

           (『国よ何処へ‐平成の日本語学校物語‐』第13章‐11)             

 

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