バスは長春に着いた。この街はかつて«新京≫と呼ばれ、「満洲帝国」の首都だった。今日、中国政府は、その国を「偽満(偽満洲国)」と呼んでいる。

                                     (『国よ何処へ‐平成の日本語学校物語‐』第9章‐7)

 

      

   かつての«新京駅≫は、現代的な「長春站(長春駅)」に変わっていた。そして、駅の正面には、昔の«ヤマトホテル≫が「春誼賓館」として残っている。受付でパスポートを見せて料金を訊くと、1泊400元、2泊600元だと言う。彼は3泊することにした。

 ロビーや階段は豪華な西洋式で、当時の造りだ。ドアには、今も、「東京庁」、「名古屋庁」、「富士庁」などの表札がある。満洲帝国」時代、このホテルには、かの甘粕正彦が起居していた。 

 

           

 翌朝、売店で市内地図を買い、街を散策した。長春駅を起点に人民大街、かつての«大同大街≫が南に伸びている。暫く歩くと、城郭風の«関東軍司令部≫が、「吉林省共産党委員会」の名で残っている。

 

       

 更に歩くと、円形の「人民広場」があり、塔の上にソ連製戦闘機が載っている。かつての«大同広場≫で、周囲には、昔の中央銀行、電信電話会社、首都警察庁などが、「偽」を冠して、案内板に記されている。

                           (同書 第9章‐8)

 

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