その週の土曜日、まず、彼らは市内の「張氏帥府」を訪れた。奉天軍閥、張作霖親子の私邸兼官邸跡で、広大な博物館だ。邸内には、いくつもの豪華な洋風邸宅や軍閥銀行の建物があり、往時の権勢を物語っている。
「中山先生、張学良、ご存知ですか」
「張作霖の長男ですよね。西安事件で〝国共合作〟をやった人でしょ」
「そうです、そうです」
「2年前に、ハワイで亡くなりましたね」
「江沢民総書記、〝偉大な愛国者〟と称賛しました」
「台湾では、長い間、軟禁されてましたね」
「そうです。西安事件で、蒋介石、監禁したからです」
ひと通り邸内を見物した後、彼らは付近の食堂で昼食を取り、タクシーで「9・18歴史博物館」へ向かった。
(『国よ何処へ‐平成の日本語学校物語‐』第8章‐8)