「国境の長いトンネルを越えると雪国であった。」
という名文から始まる名作文学。
言わずと知れた、川端康成の雪国です。
あらすじ
東京で無為な生活を送る妻子持ちの男・島村は、雪国の温泉町を訪れる。そこで彼は、芸者の駒子と出会う。駒子は、自分の芸に真剣に向き合い、日記をつけるほど努力家で、一途な女性だった。島村に対しても強い思いを抱くようになる。
しかし島村は、駒子に惹かれながらも、彼女の人生を背負う覚悟はない。東京に戻る場所を持ち、どこか他人事のように彼女を眺めている。二人の間には情熱がありながら、決して完全には結ばれない距離がある。
また、汽車の中で島村が見かけた美しい女性葉子も物語に関わってくる。葉子は病人の行男に献身的に尽くす女性で、駒子とも複雑な関係にある。島村は駒子だけでなく、葉子の透明な美しさにも惹かれていく。
率直にいうと、私には物足りなさを感じました。
というのは、私の好きな川端康成は、魔界という人間の深淵の美を追求した、それこそ、「眠れる美女」などのような毒のある作品が好みで、本作は、この島村と駒子の絶妙な距離感がテーマとなっている故に私には上手く刺さりませんでした。そして葉子の存在もです。葉子と駒子と島村という三角関係で描かれるのですが、駒子は非常に女を写実できているものの、この葉子は象徴的な女になっており、それはおそらく意図的であるとは思いますが、しかし人物の造形面では葉子の存在感はご都合主義と言えなくもないです。
しかし日本古来の伝統美を意識した風景描写は流石なもの。雪、氷柱、三味線、火事、そして天の河。その全てが非現実的な幻想を意識して象られており、三人の悲劇性を神話に昇華しています。
最後は、家事現場の繭倉から葉子が飛び降りて死ぬ、というシーンで終わりますが、これはおそらく象徴的な死です。つまり雪国と火事という対立をさせておきながらも、島村における雪国という世界の終わり、この物語の終止符をされている、と。まあ、私はこのような葉子の死によって物語が終わるという装置的な役割が苦手なのですが。
しかし、とにかく読んでおく価値はあります。それは間違いありません。
雑な締め方で申し訳ないですが。
