ゲームにはあまり興味がありませんでした。
もともと、文学や哲学などには興味があり、アニメや映画なども観てはいましたが、ゲームとなるとそこまで興味が湧かないのです。
ゲームという領域に踏み込んでみたいと思う心意気はありますが、
しかし、損はしたくない。
そういったとき、私はとある人物を知りました。

それが、小島秀夫です。

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小島秀夫は、日本を代表するゲームクリエイターで、今回批評する「DEATHSTRANDING」のほかに、「METALGEAR」シリーズを世に送り出したことで有名な人です。

そんな彼を、たまたま、本屋で見かけました。
そう、何を隠そう、彼のエッセイ集「創作する遺伝子」が発売されていたのです。
そこから私は小島秀夫に興味を持ちました。
彼の創るゲーム、おすすめする映画、本。
そうして、私は、彼の代表作「DEATHSTRANDING」に出会ったのです。

「DEATHSTRANDING」とは?

批評するまえに、「DEATHSTRANDING」の紹介をしておきます。

■ ストーリー

謎の大災害「デス・ストランディング」により、死者の世界と現世がつながり、アメリカは分断状態に。
配達人サムは、孤立した都市を再びネットワークで接続し、人々を“つなぐ”旅に出る。
物語は「生と死」「孤独とつながり」を軸に、世界の真相へと迫っていく。



■ ゲーム内容荷物を背負って危険地帯を移動する“配達”が中心
地形・重量バランスを考えながら進むリアルな移動体験
他プレイヤーが建てた橋や設備が自分の世界にも現れる非同期オンライン要素
戦闘はあるが主軸は「運ぶこと」と「つなぐこと」


👉 一言で言うと
「分断された世界を、配達でつなぎ直すゲーム」

AIに端的に説明させると、こうなります。

けれど、まだ不完全なところもあるので、ストーリーとゲーム性の二つに焦点をあてて、批評してみたいと思います。

ストーリーの魅力1「生と死」について

上記にも記しましたが、突如、謎の大災害「デスストランディング」によってアメリカは極端な分断状態に陥りました。
そんな危機的状況のアメリカを助けるために任されたのが、サムという配達人でした。
このサム。日本語声優は津田健次郎さんで、俳優はノーマンリーダスさんです。サムは接触恐怖症で、いつもしかめっ面の男です。
そんなサムが、危篤状態の大統領ブリジット直々の頼みで、分断されたアメリカを横断しながら、人々をつなげていくというストーリー。
しかしそう簡単にはいきません。
各地にはBTと呼ばれる謎の存在が蔓延っているからです。
BTは死後、あの世へ行くはずだった魂が、ビーチに打ち上げられた、つまり座礁してしまった、いわば地縛霊に近い存在です。
加えて、このBTと生者がなんらかの形で接触すると対消滅・ヴォイドアウトが発生。大爆発が起こります。

サムはこのBTを避けながら、目的地まで配達することになるのです。
BTのほかにも、時雨という浴びると荷物と体の老化を侵食させる雨が降り注いだり、ミュールと呼ばれるテロ集団も横行しています。

サムの周りの危険な環境、BTとミュールは実は生と死の象徴であることは間違いなさそうです。死の側のBTと、配達に依存してしまったミュールと言う生の側のテロ集団。

生と死を象徴的に描き分けたという点で、かなり普遍的ですが、このミュールの配達依存には理由があると思います。

ゲーム性にも繋がりますが、配達を行えば、「いいね」や感謝が施されます。それゆえに、ミュールは他の配達人の荷物を強奪してしまう。
ここでいう、「配達」は現代で言う「承認」なのではないでしょうか。
SNSなどに今でもあり続ける、人間の基本的な感情。承認欲求。
本作は非常に現代的なテーマを扱ってもいるのです。

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ストーリーの魅力2「反戦意識」について

小島秀夫は過去のインタビューで、戦争ゲームについて発言していました。
そこで小島秀夫は、戦争ゲームはあまり作りたくない、といった趣旨のことを発言。これは彼の両親の影響もあるのでしょうが、ロシアとウクライナ、イスラエルとガザ間の戦争が収束されない今。
この今を生きる私たちにゲームという形で「反戦意識」を訴えているのが、本作なのだろうと思います。

ネタバレを含みますが、物語終盤、デスストランディングは止めることのできない宿命的現象であることをサムの思い人で、デスストランディングの黒幕的首謀者・アメリにサムは告げられます。
アメリは銃をサムに渡します。
ここでムービーから切り替わって動かせるようになります。
銃を受け取ったサム。
ビーチ(生と死が溶け合う場所)から海へ歩みだすアメリ。
世界は週末に向かっている。
銃を構え、アメリに向ける。そして撃つ。と思っていました。
けれど違いました。
サムが下した決断は、銃を捨て、アメリを抱きしめることでした。
率直に言って、僕は驚きましたね。まさか、抱きしめることだなんて。
下手に「暴力」による解決を行わないことに、小島秀夫監督の「反戦意識」が現れていると、思います。

ゲーム性の魅力1デリダ的「誤配」

フランスの思想家、ジャックデリダの「誤配」という概念があります。
意味やメッセージは、常に「正しく届く」とは限らず、むしろ“誤って届く可能性”を本質的に含んでいる

このデリダの概念は、まさに「DEATHSTRANDING」と深く響き合うところがあるのではないでしょうか。

デリダにおいて、意味は「本来の受け取り手」によって保障されません。
むしろ、プレイヤーが建築した、橋や、梯子などは誰にその後使われるかわかりません。つまり、意図しない形で、誰かを助けている可能性を含んでいるのです。

そもそも、この「DEATHSTRANDING」の世界では、大陸は分断され、物理配送も通信も不安な状況です。
これは、先のデリダの「誤配」、
「メッセージ(荷物)は常に誤って届く可能性を含んでいる。」という考えにも通じると思います。

このように、小島秀夫監督の「DEATHSTRANDING」はまったく意図しない形で、デリダ的解釈が可能であるということが分かりますね。

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個人的な感想

小島監督のゲームを本作で初めて遊んだのですが、ゲームが苦手な私にも刺さった作品であることは確かだと思います。
これはよく言われていることだと思うのですが、本作はどこか、映画っぽいところがあるんですよね。
もちろん、グラフィックもそうですが、演出やメッセージ性というか。
そして意外と、哲学的な要素もあって、難解な作品であると思います。
これを書いている一か月後に、「DEATHSTRANDING2on the beach」のPC版が発売される予定なので、新作を購入しようか迷っている状態です。
しかし、まだ時間はあると思うので、ゆっくりと、余韻を楽しみ、まだやり切れていない要素(国道整備まだです)をやり込んでいこうかなと思います。

小島監督、小島プロダクションの皆様、俳優・声優陣の皆様。
最高のゲームをありがとうございました!

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