原作のコミックは未読、猟奇殺人がテーマだが、予告編を観た段階でそれほど期待できないかな、と言う印象だった。

しかし実際には、やや粗削りな部分はあるものの、予想よりもかなりいい出来の作品だった。

 

自宅で被害者をバラバラに解体した「品川ピエロ」こと品川真珠(黒島結菜)の猟奇殺人ニュースで、世間は大騒ぎになっていた。

児童相談所に勤務する夏目アラタ(柳楽優弥)は、3番目の被害者の小学生の息子を担当していたが、彼と母親から相談を受ける。

3番目の被害者は頭部が見つかっていなかったが、息子は父の頭部を見つけるために、拘置所の犯人と文通をしていた。

その時犯人に怪しまれないように、アラタの名前を使っていたのだ。

しかも犯人の真珠は、アラタに面会を申し出たと言う。

アラタは仕方なく、真珠に会うことにした。

 

面会室で真珠はアラタを見た瞬間、「思っていたのと違う」と言って部屋を出て行こうとした。

アラタはここで逃げられたらすべてが終わりと考え、真珠に対して結婚を申し込んだ。

すると真珠はアラタに興味を持ち、いろいろと質問を始める。

アラタは気を付けながら真珠の質問に答えるが、真珠は巧妙にアラタの真意を探ろうとしていた。

 

その後アラタは、真珠の弁護士の宮前(中川大志)と会う。

そこで真珠が子どもの頃に親から虐待を受け、学校にもほとんど通わず知能指数も低かったのだが、大人になってから飛躍的に知能指数がアップしていることを教えられる。

アラタも面会室でのやり取りから、真珠はかなり頭がいいと言う印象を受けていた。

その後も、アラタは真珠と面会し、3番目の被害者の頭部がどこにあるかを聞き出そうとする。

しかし真珠は巧妙に、アラタたちを翻弄する。

 

ストーリー構成は、やや粗が目立つ。

子どもの頃に太っていた真珠が、看護学生時代になぜ痩せられたのかの説明がないし、真珠が最初にアラタに興味を持った理由と、後半の真珠がアラタとの結婚に執着する理由にややズレが生じている。

真珠の母親が、なぜ真珠の出産を急いだかの理由も不明だ。

 

しかし、真珠役の黒島結菜とアラタ役の柳楽優弥の演技力が素晴らしく、ストーリーにどんどん引き込まれてしまう。

前半で、真珠が精神異常を来たして妄言を吐いてアラタを振り回しているのか、あるいは本当のシリアルキラーなのか、殺人を犯しているのかいないのかも含めて、黒島結菜と柳楽優弥の演技が巧妙に謎を深めている。

二人の演技力に加え、堤幸彦の演出も素晴らしい。

面会室の対面シーンでは、二人の間の透明ボードの反射を効果的に使ったり、瞳の中に相手を映すなど、二人の心理駆け引きが秀逸に描写されている。

 

作品および黒島結菜と柳楽優弥は、何かの映画賞で賞を受賞してもまったく不思議ではない。

人によって評価は分かれるかもしれないが、個人的には今年の邦画の中でもかなり上位に入ってくる作品だ。

 

 

120.夏目アラタの結婚



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