「中国語!ナビ」で紹介され、面白そうなので観に行くことにした。

ハッキリ言ってありがちな題材ではあるが、手堅くまとめられた作品であった。

 

1989年の台北は、バブル景気で株価が乱高下する状態だった。

地価も値上がり、大儲けする者がいる反面、大損をする者もいた。

少年のリャオジエは、高級中華料理店で働く父のタイライと二人暮らしだった。

理容師だった母はリャオジエが小さいころになくなり、親子はお金を貯めて一軒家を買い、理容店を開くことを夢見ていた。

リャオジエが父に夢はいつ叶うかを聞いたところ、父は3年後かな、と答えた。

リャオジエは1日ずつカウントダウンをして3年後を楽しみにしていた。

 

ある日、親子が住む部屋の1階で飲食店を営んでいたタイライの伯父が、株で大儲けをする。

伯父夫妻は店をたたんで隠居することを考え、タイライにも一軒家の頭金を貸してくれると申し出てくれた。

タイライはリャオジエに、夢はすぐかなうかもしれないと話す。

大喜びしたリャオジエだが、台北の地価は倍以上に高騰しており、すぐに一軒家を買う事が難しい事がわかった。

タイライがリャオジエにそのことを告げると、リャオジエは激しく落ちこんだ。

そんな時リャオジエは、付近一帯の土地を所有する大金持ちの老人シャと出会う。

リャオジエを気に入ったシャはリャオジエを車に乗せて話を聞き、いろいろな事を教えてくれた。

 

シャはコツコツと真面目に働くタイライを自分の母に似ていると言った。

しかし同時に、タイライも母も「負け組」だと言う。

シャは母を反面教師にして一代で財を築き、リャオジエにもそうなる事を勧めてきた。

 

タイトルの「11歳の選択」は、社会が決して公平ではないことを思い知らされたリャオジエが、どういう選択をするか、という意味である。

前半の親子のつつましくも仲の良い生活は、古き良き日本の昭和時代を見ているようで、心地よい懐かしさを感じた。

とにかく真面目に生きるタイライと、無邪気なリャオジエの演技が素晴らしい。

だが、初めて現実の厳しさに直面したリャオジエは落胆し、そこにシャが現れてさらに混乱をする。

この描き方が外連味がなくわかりやすいため、感動が強くなってくる。

雨の路地の描写も情緒的で、個人的には好きな作品だ。

 

タイライと微妙な関係の人妻役の門脇麦や、シャの愛人などは、作品全体の中ではあまり重要なシーンではなく、正直なくてもよかったかなという気もした。

ただ、ラストも説教臭い描き方にはしておらず、好感度の持てる作品だった。

 

 

85.オールド・フォックス 11歳の選択



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