吉田修一原作、監督が大森立嗣の「さよなら渓谷」と同じコンビなので期待したのだが、公開からわずか2週間でほとんどの映画館が上映終了してしまった。
配信の契約のために短期間で上映終了と言う可能性もあるのだが、ひょっとすると大空振りの可能性もある。
優先順位を下げていたが、なんとか上映期間中に時間が合ったので観に行く事にした。
だが予想通りの大空振り作品だった。
刑事の濱中(福士蒼汰)は早朝の琵琶湖で釣りをしている時に、介護士の豊田佳代(松本まりか)が湖畔に止めた車の中でマスターベーションをしているのを目撃する。
後日、佳代の勤める介護施設で老人が死亡した。
死に方を不審に感じた遺族から連絡を受け、濱中と先輩の伊佐美(浅野忠信)が現場に駆け付ける。
死因は人工呼吸器が止まった事だが、この呼吸器は故意、故障のどちらでも、動作が停止するとアラームが鳴る。
メーカーの担当者は、アラームが鳴らなかったという事は、誰かが故意に停止したと同時にアラームを消したとしか考えられないと言い、その夜の当番だった介護士の松本(財前直見)に疑いが掛かる。
松本は終始無実を訴え続けるが、伊佐美と上司である竹脇(近藤芳正)は濱中に、早く松本に自白させろと指示する。
濱中は言われるがままに強引な取り調べをするのだが、一方で湖で見かけた佳代の行動にも引っ掛かりを感じていた。
やがて強引な取り調べで消耗した松本が、警察署からの帰宅途中に交通事故で重傷を負ってしまう。
さらに、別の介護施設で同様の事件が発生した。
雑誌記者の池田由季(福地桃子)は、かつて社会問題となった薬害訴訟の事件を追っていた。
事件を記事にしようとしたときに圧力が掛かってもみ消されてしまったのだが、その時の訴訟の対象が、今回の被害者の市島民男だった。
市島が殺人事件の被害者になったニュースを聞き、由季は現地を訪れて調査を始める。
由季が市島の妻に聞き込みをすると、市島は第二次世界大戦中に満州の石井細菌部隊と呼ばれた731部隊に所属して言ことが判明する。
そして、当時薬害訴訟で市島を調べていたのが伊佐美たちだった。
もうすぐ子供が生まれる濱中と佳代の男女の関係と、介護施設の殺人事件、そして薬害事件につながる731部隊の実験の3つが、この映画の軸となる。
しかしネタバレになるが、この3つはどれも関連性がない。
どこかですべてがつながるのかと思いきや、どれもバラバラのままでリンクしない。
しかも介護施設の殺人事件の犯人は、序盤での伏線もないまま、ラスト近くで突然犯人としての行動が明かされる。
原作は未読なのでわからないが、映画は濱中と佳代の関係をメインに描かれているものの、この二人の関係はストーリーの中でも完全に独立しており、ハッキリ言ってなくても作品として成立してしまう。
こうなってくると、制作者が何を描きたかったのか、サッパリわからない。
かなり無理をして観に行ったのだが、正直その努力の甲斐はまったくなかった。
83.湖の女たち
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