予告編を観たときには、よくある「感動押し付け」系の作品かと思い、あまり観に行く気はなかったのだが、時間が合ったので観に行くことにした。
実際の作品は、想像してたよりもかなりきちんと作られていた作品だった。
1970年代、坪井宣政(大泉洋)は、親から町工場を継いだ2代目社長である。
だが持ち前のコミュニケーション能力で、潰れかけていたの商品をさまざまな所に売り込み、経営を立て直していた。
宣政には妻の陽子(菅野美穂)との間に3人の娘がいた。
しかし次女の佳美は先天的に心臓に欠陥があり、医師から手術でも完治は不可能、余命は10年程度と言われていた。
娘を救うために宣政は日本中の病院をめぐるが、どこからも手術は無理だと断られてしまう。
アメリカにもわたるが、いい返事は得られなかった。
そこで宣政は、娘を救うために自ら人工心臓を作ることを決意する。
いろいろと研究機関を回り、東京都市医科大学の石黒(光石研)の研究室が、一番実現化に近いと判断した。
そこで佐々木(上杉柊平)たち研究生と一緒にテスト製品を製作するのだが、大学の研究室は予算が乏しい。
そのため宣政は、数千万円の人工心臓製造装置を自費で自分の工場に設置する。
そして何年もかけて、実用一歩手前までこぎつけた。
しかしアメリカでの人工心臓の実験で失敗が続き、東京都市医科大学も研究は続けても実用化はしないと決定した。
さらに医師からは、もし今人工心臓があっても、もう佳美の体力は手術に耐えうることはできないと言われてしまう。
陽子や長女、三女は、残された時間をできるだけ佳美と一緒に過ごそうと提案する。
しかし宣政は、今度はIABPバルーンカテーテルの開発に心血を注ぎだす。
それは、落ち込んだ宣政に対して佳美が、自分はもういい、だけどお父さんには他の人を救う事を諦めないで欲しい、と言ったからだった。
財産を投げうってでも娘を救う父の話だが、人工心臓制作が困難であることを素人にもわかりやすく説明しているため、単純に父親が苦労をした、という話で終わっていない。
どれだけの時間とコストが掛かるかを生々しく表現しており、作品にリアリティが生まれている。
この部分は実話とは異なるのかもしれないが、安易に佳美を絶命させていないところも巧いと思う。
佳美の最期のシーンを描けばたやすく感動を得ることができるかもしれないが、それでは作品全体が安っぽくなってしまう。
そうではなく、宣政、妻の陽子、長女、三女を普通に描くことで、家族の愛情と宣政の努力がより強調されている。
宣政の大泉洋、陽子の菅野美穂だけではなく、そのほかのキャスティング実力者をそろえており絶妙だ。
車だけではなく、家の中の調度、洋服、髪形など、1970~80年代をきちんと再現したきめの細かい演出も評価したい。
元々あまり期待していなかった、という事もあるが、まずまずまとまった作品という印象を受けた。
81.ディア・ファミリー
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