ハッキリと明言されているわけではないが、おそらくは山梨県のキャンプ場で行方不明になった小学生とその母親をモチーフにした作品だ。
母親役の石原さとみの演技が際立つ作品だった。
沙織里(石原さとみ)と豊(青木崇高)の夫婦は、3カ月前に行方不明になった娘美羽を捜すため、今日も街角でビラを 配っていた。
ボランティアにも手伝ってもらいビラ配りをするが、有力な情報は得られない。
そんな二人を、地元テレビ局のニュース番組が取り上げる。
番組の記者砂田(中村倫也)は沙緒理に寄り添っているように見えるが、実際には自分の記者としての実績が上がる事を考えている。
美羽が行方不明になったのは、自宅からわずか数百メートルしか離れていない公園からの、帰宅時だった。
公園では、沙緒理の弟の圭吾が美羽と遊んでいた。
夕方になったため美羽は帰宅するのだが、圭吾は数百メートルという事もあり送らずに公園で別れた。
しかしその結果美羽は行方不明になってしまった。
圭吾は中学時代にいじめにあったため、引きこもりをしており、対人関係が苦手だった。
そのため、砂田に取材を受ける時もぶっきらぼうで、ネットでは弟が犯人ではないか、と言う噂になっていた。
また、なりふり構わず娘の捜索をする沙緒理に対しても、ネット上では自作自演で犯人は母親だと言う書き込みが増えていた。
常軌を逸した沙緒理に対し、豊は冷静だった。
ある日沙緒理のSNSに、美羽の目撃情報が寄せられる。
かなり遠方だったが沙緒理は豊に頼み込み、休みの日に情報提供者に会いに行く。
しかし現地で連絡を取ろうとすると、情報提供者はアカウントを削除していた。
沙緒理はショックで取り乱し、豊とケンカになる。
もう何度も同じ事がくり返されていた。
砂田は上司から、再度圭吾の取材を行うように言われる。
圭吾は、美羽と別れた後ずっと自室にいたと証言していたが、まったく別の場所の防犯カメラに映っていたことが判明したからだ。
どんどん追い詰められていく沙緒理を見て、砂田は少しずつ腰が引けてきており、嫌がる圭吾に再度取材することは、あまり気が進まなかった。
しかし手掛かりがほとんどない沙緒理にとっては、砂田は一番頼りになる協力者だ。
嫌がる圭吾に罵声を浴びせ、力づくで取材に応じさせる。
砂田は圭吾に別の場所にいたことを問いただすと、自室ではなく圭吾は違法カジノに言っていたと話し出した。
砂田は、圭吾が証言を変えたことを沙緒理には告げないまま放送してしまう。
ニュースで真実を知った沙緒理は、圭吾に対しての怒りを強めていく。
ある意味「後悔だらけ」の映画である。
登場人物全員が、自戒の念に苛まされている。
沙緒理は美羽が行方不明になったとき、弟に世話を任せて推しのバンドのライブに行っていた。
圭吾は職場の先輩に誘われ、美羽を家まで送り届けずに違法カジノに行っている。
砂田は自分の取材方法に問題があるのではないかと思いつつも、議員の隠し子の事件をスクープし、キー局に引き抜かれた後輩に嫉妬し、上司に言われるがまま強引に取材を進める。
全員、自分の行為に公開し、後戻りできない状況に苦しんでいる。
豊は後悔はしていないかもしれないが、苦しんで暴走する沙緒理に何もしてやれない、と言う部分で苦しんでいる。
そして彼らを苦しめる原因の一端は、SNSである。
沙緒理が活動すればするほど、アンチがSNSで大騒ぎをする。
それを見て沙緒理は、さらに暴走する。
このあたりの描き方は、巧い、と言うより生々しい。
石原さとみの演技も迫真のため、観ていてちょっと苦しくなってくる。
ラストの落し所をどう置くかと思ったが、これはだいたい想像通りだった。
良くも悪くもこの展開ならこの結末しかあり得ない。
ただ、映画全体を観た時に、結局何が言いたかったのかがわかりづらい。
すでに書いたが、いろいろな葛藤を生々しく描いているものの、あまりにも生々しすぎて共感を拒否したくなる。
あるいは、砂田のエピソードをもう少し軽くしておけば、もっと軽い気持ちで観られる映画になったのかもしれない。
73.ミッシング
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