あるガレージで、椅子に縛られた男がいた。

彼を監禁した男たちは、車でガレージに向かっている仲間に連絡をしているが、縛られた男は監禁した男たちを倒し、後から来た仲間たちも「自分はプロだから」と言って皆殺しにしてしまった。

 

フィリピンのアングラボクシング場で、マルコと言う男が戦っていた。

マルコは強いボクサーだったが、その日は負けてしまったためギャラが少なかった。

マルコは韓国人の父とフィリピン人の母の間に生まれたハーフだった。

現地では韓国人(コリア)とフィリピン人のハーフはコピノと呼ばれ、孤児のコピノの施設も作られていた。

マルコも母が病気で寝たきりだったため、その施設に出入りしている。

マルコは母の手術費用が必要なためボクシングをしていたが、負けてギャラが少なかったため盗みの手伝いをすることになった。

しかし言われた建物に侵入すると、そこには強者たちがたむろしており格闘となってしまった。

マルコはなんとか建物から逃げ出すが、その途中で車にはねられそうになる。

運転していた女性は韓国人で、彼女のすすめで病院で検査を受け、マルコは見舞金をもらって施設に戻った。

 

施設には、弁護士が来ていた。

マルコは施設長に頼んで韓国にいる父親を捜していたが、父親も自分を捜しており、弁護士が訪ねてきたのだ。

韓国人の父は韓国で病院と学校を手広く経営しており、大富豪であるとの事だった。

マルコは弁護士に言われるままに、韓国に行くことにした。

 

韓国行きの飛行機に乗ると、見知らぬ男が隣に座った。

冒頭でガレージに監禁されていた男、「貴公子」だった。

貴公子はマルコを「チング(友人)」と呼び、「韓国に行くのは地獄だ」とも言った。

 

韓国ではハンと言う男が、人里離れた原野で仲間たちと人を殺していた。

実はこの男はマルコの腹違いの兄で、マルコが韓国に来るのを待っていた。

だが、マルコがハンの元に来る途中、貴公子が現れマルコの乗った車を襲撃をした。

マルコと一緒に車に乗っていた男たちは全員殺され、マルコは一人で逃げだすのだが、貴公子は執拗に追ってくる。

マルコは逃げながら、韓国でもらった弁護士の名刺に電話を掛けると、女が出て「迎えに行く」と言う。

その間、貴公子はハンに対し、マルコの身代金1000万ドルを要求していた。

マルコは女に助けられるが、その女はフィリピンでマルコに車をぶつけた女だった。

女はマルコに、追ってきているハンはマルコの腹違いの兄である事、マルコの父は心臓病で死にかけている事、マルコの父がもうろうとしている時に後妻が、遺産はすべて後妻と連れ子の女子高生が相続すると言う遺言状を書かせた事、そのためハンはこのままでは相続ができなくなる事、そして父が韓国にマルコを呼び寄せたのは、マルコの心臓を自分に移植するためである事、などを教えてくれる。

さらに女は、自分は後妻側の人間で、マルコには死んでもらった方が都合がいいと銃を突き付けてきた。

 

フィリピンから息子を呼び寄せ、自分のために心臓を差し出させると言うコリアン・ノワール作品だ。

格闘のアクション、カーアクションとも、日本映画には見られないレベルの勢いと迫力である。

貴公子役のキム・ソンホは尾上松也をすっきりさせた感じで、セリフやしぐさなどは一見「さわやか系」なのだが、かなり激しいアクションをこなしており、そのギャップも観ていて楽しい。

後妻の連れ子の女子高生などやや強引に展開する部分もあるが、緊張と緩和のメリハリも巧く、センスを感じる作品だった。

 

監督のパク・フンジョンと言う人は、すでに何作か同じカテゴリーの作品を撮っているらしいので、機会があったらそれらの作品も観てみたいと思う。

 

 

62.貴公子



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