リュック・ベッソンの最新作だ。

予告編を観た段階では、犬を操る闇の仕事人的なイメージだったが、そうではなく「JOKER」に近い作品だった。

 

ある晩、警官がトラックを止めた。

運転席には女装した男が座っていて、荷台いっぱいに犬が載せられていた。

男が負傷していた事もあり、警官は男を拘留した。

事情聴取を担当したのは精神科医のエヴリンだった。

男は下半身不随で車いすを使っており、ダグラスと名乗った。

 

ダグラスは少年時代、両親、兄と暮らしていた。

父は多数の犬を飼っていたが餌を与えず、かわいそうに思ったダグラスがこっそり餌を与える。

それを見ていた兄が父に告げ口すると、父は激怒しダグラスを犬のゲージに放りこんだ。

その後ダグラスは、何年もゲージの中で暮らすようになる。

やがて母は横暴な父に愛想を尽かし、ダグラスに詫びを入れて家を出て行った。

 

しばらくすると子犬が産まれる。

それを知った父と兄は子犬を散弾銃で射殺しようとするが、ダグラスは身を盾にして庇う。

しかし父は発砲、ダグラスの右手の小指が弾け飛び、さらに跳弾が腰に当たって倒れこんでしまった。

父を制して兄が家の中に入れると、ダグラスは小指を犬に託し、警官のところに持って行かせた。

駆けつけた警官に父と兄は逮捕され、ダグラスは施設に入る事になる。

 

跳弾で腰を撃たれたダグラスは車いすの生活となり、施設でも友達ができなかった。

そんなダグラスの心の拠り所となったのは、演劇の先生だった。

少し年上の先生にダグラスは恋心を抱くが、やがて先生は女優になるために施設をやめてしまう。

 

ダグラスも施設を出て、市の補助金を受けながら保護犬を引き取る施設を運営していた。

ある日ダグラスは、演劇の先生が出演する舞台を観に行く。

そこで先生がすでに結婚していることを知るのだった。

失恋を悲しむダグラスを犬たちが慰めてくれるが、その後市の担当者がやってきて、補助金が打ち切られ施設も閉鎖すると告げる。

ダグラスは犬たちと廃屋に移り住む事にした。

 

ダグラスは新しく仕事を探すがなかなか見つからない。

途方に暮れていると、ドラァグクィーンが歌う店の前を通りかかった。

ダグラスはそこで、自分も歌わせてほしいと交渉する。

店のマネージャーは断ったが、他のドラァグクィーンたちがダグラスに歌わせあげてほしいと言い出したため、ダグラスは週に一度ドラァグクィーンとして歌う事になった。

だがそれだけでは、犬たちを養う事はできない。

そこでダグラスは、犬を使って金持ちから窃盗することを考えた。

さらに、知り合いからギャングに脅されていると相談されると、犬にギャングを襲わせて知り合いを護ったりもした。

しかしその事が原因で、警察とギャングに狙われる事になってしまう。

 

面白くなりそうな設定ではあるが、ストーリー展開がかなり強引だ。

過酷な少年時代から、唯一の希望であった演劇の先生に失恋をするなど、追い込まれるダグラスの描き方は「JOKER」よりもいいと思う。

しかし少年時代、家を出た母親がなぜ父親を通報しなかったのかわからないし、そもそもどれだけ犬が人間に従順で賢かったとしても、あまりに人間に都合よく動きすぎである。

 

「JOKER」を意識しすぎているようにも見え、作品の出来のブレが大きい監督であるが、今回はダメな方に振れてしまったかなと思った。

 

 

43.DOGMAN ドッグマン



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