原作は本屋大賞を受賞しており、監督は「八日目の蝉」の成島出だ。
作品のブレが大きい監督だが、主演が杉咲花という事で期待して観に行った。
三島貴瑚(杉咲花)は、空き家となっていた大分の祖母の家をリフォームして生活を始めていた。
祖母が派手な人だったこともあり、住民は貴瑚の事をあれこれ噂していた。
そんなある日、貴瑚は海岸で髪の長い少年と出会う。
少年はまったく口を聞かなかったが、雨に降られたため貴瑚は少年と自宅に戻り、自分と彼の服を乾かそうとした。
貴瑚が少年の服を脱がすと、少年の体は痣だらけだった。
その理由を尋ねようとすると、少年は上半身裸のまま雨の降る外に飛び出して行ってしまった。
家のリフォームを担当してくれた村中(金子大地)によると、少年はおそらく琴美(西野七瀬)の子供だろうという。
琴美は中学のときは学校でも人気者だったが、アイドルを目指して福岡に行った後、子供を妊娠して大分に戻ってきていた。
その後は食堂で働いてはいるが、子供をほとんど外出させず、学校にも通わせていないという。
貴瑚は琴美に会って話を聞こうとするが、琴美はそれを拒否、貴瑚が無理に話そうとすると、あの子はムシだ、あの子が生まれたために自分の人生はメチャクチャになったと吐き捨てて立ち去ってしまった。
貴瑚は大分に来る前、3年前のを思い出していた。
その頃貴瑚は、母(真飛聖)の夫である義父が寝たきりのため、高校卒業後ずっと介護をしていた。
自ら動くことはほとんどできない義父のために早朝から深夜まで、ほぼ24時間介護を行い、社会から断絶される生活が続いていた。
ある日、義父が危篤状態になると母から、「あんたが死ねば良かったのよ」と罵倒され殴られる。
貴瑚の少女時代から母はネグレクトだったため、貴瑚は絶望してトラックの前にふらふらと歩みだしてしまう。
そんな貴瑚を救ったのは、高校時代の親友の美晴(小野花梨)と美晴の同僚岡田安吾(志尊淳)だった。
岡田安吾は母親に縛られている貴瑚を心配し、実家から自立するために手伝いをしてくれた。
貴瑚は安吾を安さんと呼んで慕うようになり、安さんは貴瑚をキナコと呼んでいた。
ある晩、貴瑚は安さんに思いを告げるが、安さんはそれを断る。
その後貴瑚は、勤め先の御曹司新名(宮沢氷魚)と知り合って付き合うようになる。
新名からタワーマンションを与えられて幸せそうな貴瑚だったが、安さんは新名はきなこを幸せにできないから別れる事を勧めてきた。
ネグレクトによる児童虐待、ヤングケアラー、性同一性障害など、現代社会の問題点をテーマにした作品だが、途中までは正直ちょっと盛り込みすぎではないかと思った。
主役は貴瑚であるが、中盤は安さんの性同一性障害の方がクローズアップされる。
この貴瑚と安さんの関係もかなりうまく描けているので、こちらを主題にした方がよかったんじゃないか、とも思ったのだが、ラストで貴瑚が大分で知り合った少年を抱きしめるシーンで、貴瑚のそれまでの思いがすべて解放される。
貴瑚と美晴の偶然の出会いがご都合主義的であったり、貴瑚が独り立ちをした後実家がどうなったのかが描かれていないなど少々強引な部分もあるが、映像、音楽とも美しく、素直に感動した作品だった。
38.52ヘルツのクジラたち
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