実在の家族がYouTubeにアップした動画が話題となり、小説、そして映画化された作品だ。

ダウン症の弟を恥ずかしいと思った思春期の兄の話である。

 

ジャックの家族は両親に連れられて、大型スーパーの駐車場に来ていた。

両親はいつも家族間の重要な話をするときは、この駐車場で行う。

そこで両親が子ども3人に伝えたは、新しい家族ができる事である。

二人の姉を持つジャックは、新しい家族が弟と聞き男が増えると大喜びする。

やがて弟のジョーが生まれた。

両親は子ども3人に、ジョーは染色体を少し多く持って生まれた特別な子供だと告げる。

弟に期待していたジャックは、ジョーが特別なスーパーヒーローではないかと思った。

しかし弟はちょっと変わった行動を取るが、ジャックが思っていたようなスーパーヒーローではなかった。

ジョーは染色体を持つダウン症で、社会的には身体障がい者となるが、ジャックにとってジョーはステキな弟だった。

 

やがてジャックは成長し、実家を離れた学校に進学することになる。

そこで憧れの女の子と仲良くなるチャンスを得るが、ついついジョーの存在を隠してしまい、「弟は死んだ」と嘘をついてしまう。

そしてこの最初の嘘が、次々と新しい嘘を生み出していくことになってしまう。

 

図式としては、ジャックがダウン症の弟を恥ずかしく思い、それをみんなに隠すために嘘を付く、というストーリーだ。

だが、実際には誰一人ダウン症の障がい者を馬鹿にする者はおらず、単純にジャックの思い込みだけ、と言う展開になっている。

思春期に恋する人にカッコよく見られたい、と言う心情もたしかにわかる。

ただ現代においては、「大変じゃない?」と心配はされる事はあっても、障がい者を馬鹿にする者などいないと思う。

昨年、やはりダウン症の弟のエッセイを元にした「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」がドラマ化されたが、そこでも主人公は周囲から心配されることに違和感を感じ、弟は特別じゃない、と思う事がテーマだった。

「家族だから愛した~」は、ダウン症の弟についてはすぐに違和感を感じなくなるが、父が亡くなり母が車いす生活になる、など次々と家族に関する問題が発生するのだが、主人公が行動力で一つずつ乗り越えていくと言う作品だった。

 

整理して考えると、この作品も主題は「ダウン症の弟」ではなく、ジャックが「友達に知られたくない事を隠して嘘を付いた」という事になる。

「知られたくない事」が、「自宅がいまだに汲み取り式便所」でもよかったのだ。

そのため私は、「弟がダウン症である事を隠さなくてもいいのに」と思いながら観てしまったので、主人公のジャックにあまり感情移入できなかった。

 

実話をベースにしているために、感動を引き出すための演出を「盛る」事もしていないのだとも思う。

ラストはホッとしたものの、ちょっとストレートに展開し過ぎて、期待したほどの感動はできなかった。

 

 

35.弟は僕のヒーロー



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