監督は「ケイコ 目を澄ませて」の三宅唱。

未見だが、国内の各映画賞を総ナメにした作品だったので、この作品も期待をして観に行った。

だが、期待とは少し異なる作品だった。

 

藤沢美紗(上白石萌音)はPMS(月経前症候群)が激しく、症状が出ると自分を抑制することができなくなってしまう。

それが原因で仕事も辞めなければならなかった。

5年後、彼女は小さな街のメーカーで働いていた。

彼女が勤める栗田科学は、子供向けの教材のプラネタリムを作るメーカーだった。

社員は全員美紗のPMSに理解があり、彼女の症状が出ると住川(久保田磨希)が面倒を見てくれていた。

 

その栗田科学に山添孝俊(松村北斗)が転籍してくる。

山添はパニック障害をわずらっていたため、前職の上司の辻本(渋川清彦)の紹介で栗田科学に移籍していたのだが、小さな会社の仕事に不満を抱え、他の社員ともあまり交流をせず辻本に復帰させて欲しいと話していた。

ある日、山添はパニック障害の症状が出たため美紗に送られて帰宅する。

乗り物に乗れないと言う山添のために自転車を用意するなど気遣い、自分もPMSで苦労しているので一緒に頑張ろうと言うが、山添は美紗の気遣いを受け入れようとしなかった。

だが山添は、自分の診察のために訪れたメンタルクリニックで、主治医の本棚にPMSの本を発見してそれを借りる。

そして美紗のPMSを理解しようとし始める。

 

ネット上の映画の評価はおおむね好評だが、個人的には期待したほどではなかった。

病気、しかもメンタルの病気をテーマにしているためか、描き方が非常に柔らかい。

ちょっと表現が難しいが、腫れ物に触るかのように、山添と美紗を描いている。

 

二人とも症状のために職を変えているのだが、それはかなり悩んだ末の選択だったと思う。

だがそのあたりの苦悩が描かれていない。

冒頭で美紗はPMSの症状が出たことが原因で会社を辞めているが、「辞表を出した」の一言だけで、勢いで職場から逃げ出している。

しかし会社を辞めた後、「これから自分はどうしたらいいのだろう」とかなり悩んでいるはずである。

山添も、栗田科学の仕事が物足りずに前職への復帰を希望しているという事は、前職を辞める時にかなり悩んだと思うが、その部分は描かれていない。

 

「現状の症状に苦しむ」と言う部分は描かれているが、メンタル系の病気の場合、先を見通せない不安が一番の苦しみではないだろうか。

本当はその苦しみを描くべきだったのではないかと思うが、その部分はスキップされていた。

同じ病気を抱えている人たちが「いい映画」と評価しているのは、不安で苦しむ生々しいシーンが描かれていなかったからかもしれない。

 

それはそれで評価されるべきなのかもしれないが、個人的には大きな違和感を感じた。

 

 

27.夜明けのすべて



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