原作の作者は現役の弁護士で、本作はデビュー作らしい。

前半の展開と登場人物の偶然の出会いにはやや無理があったが、作品としてはコンパクトにまとまっていた。

 

舞台は司法試験を目指すロースクール、生徒の結城馨(北村匠海)は在学中に司法試験に合格しており、同期のリーダー的存在であった。

クラスでは、しばしば馨が主宰の「無辜(むこ)ゲーム」が開催される。

生徒が原告となり、同じ生徒を訴えると言う模擬裁判である。

ただ裁判の内容は、実際のもめ事をテーマとしており生徒間の争いの元にもなっている。

 

ある日、学生である久我清義(永瀬廉)の過去を暴露したビラが学内にバラ撒かれる。

かつて傷害事件を起こした清義に司法試験を受ける資格があるのか、と言う内容だった。

清義は無辜ゲームの開催を主張し、犯人を捜そうとする。

同じクラスで幼馴染の織本美鈴(杉咲花)の証言で、犯人は藤方(戸塚純貴)と判明、藤方は学校を辞めると言い出した。

清義は藤方に、自分の過去をどうやって知ったか問い詰めるが、ロッカーの中に新聞記事が入っていたとだけ言う。

その後、美鈴の住む部屋にアイスピックが付きたてられるなど、不審な事件が続いた。

清義が美鈴の部屋の真上の部屋に忍び込んでいた沼田(大森南朋)を発見し、なぜこんな事をしたのか追及するが、沼田はメールで依頼が来た、依頼主とは会った事がないと言い、隙を見て逃げ出した。

その後は不審な事件は起こらなかった。

 

数年後、清義と美鈴は司法試験に合格した。

清義は弁護士事務所に所属していたが、馨からの連絡を受けて学校を訪れる。

かつて無辜ゲームが行われていた場所に向かうと、そこには血だらけで倒れていた馨と、ナイフを持って血まみれで立ち尽くす美鈴がいた。

 

清義と美鈴は同じ児童養護施設で育っていた。

美鈴は施設の所長からわいせつ行為を強要されており、その事を知った清義が所長を刺していたのだ。

それ以降、美鈴は清義を護ると言い続けていた。

 

清義は弁護士事務所を辞め、独立して美鈴の弁護をすることにした。

しかし状況証拠は完全に美鈴が馨を刺したことを示しており、検察からはどうやって美鈴の無罪を実証するのかと笑われた。

美鈴は事件直後に清義にSDカードを渡すが、それ以降は接見でも何もしゃべらない。

仕方なく、清義は馨の残された家族に話を聞きに行く。

そこで馨の父(筒井道隆)がかつて警察官で、自分と美鈴にも関係する人物である事が判明する。

 

弁護士が作者らしく、「法と裁判では裁けない犯罪」に焦点を当てた、面白い作品である。

ただ、前半のロースクールのシーンがかなり無理がある。

ラノベ読者の向けの設定だとは思うが、無辜ゲームが行われる場所が洞窟で、参加者は全員ローソクを持ち、判決に賛成した場合はローソクを消していた。

後半の裁判と法の矛盾についてが、大人も楽しめるきちんとした構成だっただけに、前半のリアリティのなさはやや残念だった。

また、登場人物の出会い方も偶然の要素が強すぎるので、こちらも二人を追いかけるうちにこの構想を思いついた、的な設定にした方がよかったと思う。

役者陣の演技、特に美鈴役の杉咲花の演技は素晴らしく、彼女の実力を再認識させられた。

それだけに、もう少し脚本をきっちり練り込んで細かく演出を行っていれば、かなり評価の高い作品になっていたのではないかと思う。

 

タイトルから重厚な法廷劇を期待して観に行き、その期待は裏切られたものの、全体としてはまずまずまとまった作品だと思った。

 

 

118.法廷遊戯



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