西本昌弘『日本史リブレット011 桓武天皇 造都と征夷を宿命づけられた帝王』 山川出版社
桓武天皇と言えば、
平安京を造り、蝦夷(東北地方)を征伐するなど
強力なリーダーシップを発揮した天皇として記録されている。
歴代の中でも、これほどまでのリーダーシップを発揮したのは、
他に後醍醐天皇くらいではないだろうか。
後白河・後鳥羽は「法皇」だし・・・。
その桓武天皇、母が百済系のため卑しい出自とされ、
皇位継承の順位はそれほど高くなかったそうだ。
藤原氏の有力者と組んで皇位を継承すると、
自らの出自を糊塗し、旧来の勢力と手を切り、強さを演出するために
造都と征夷を実施したのだとか。
コンプレックスの解消のためだったのか!?
出自問題は、皇位継承後も尾を引き、
ライバルを陥れて蹴落とすなど、かなり強引なやり方が目立つ。
聖君というイメージが強かったが、
バリバリの政治家だったんだな。
そしてなんと晩年(死の直前)には、罪を着せて陥れた多くの人を赦しているのも意外だ。
本書を読む限り、無理やり処罰した事に自責の念があったようだ。
こういうところ、随分と人間くさい方だったようだ。
山川出版社のブックレットは、ページ数こそ少ないけれど、
最新の学説をふまえて分かりやすく解説してくれるのでオススメです。