20141007
入院2日目、通算33日目
バイタル 36.5° 上120 下66 拍98 66.4㎏
案の定、まったく眠れず朝を迎え……。
昨日目覚めた時とは違う天井。
なんか、ナースステーションが騒がしい。
聞き耳をたてる事もなく、聞こえてくるのは、何を言っているのかわからないじいと、それをあしらう看護師さん。
このじいも、昨日緊急入院し、しかも自らの状況がわからない様だ。
ミスをしてはいけない仕事をしながら、こんな相手もしなければならない看護師さん、ほんと大変です。
ともあれ
朝から様子を見に来てくれた町川先生。
「ロンさ~ん、今日ね、髄液の検査してみるからね」
「……えっ? 髄液って背骨に針刺すヤツ?」
「そ~よ、よく知ってるわね~」
「あれって、ものすごく痛いらしいですけど……」
「そ~みたいね、私はやられたことないからわからないけど、麻酔するから大丈夫よ~」
相変わらずな町川先生の説明を受け、15時に「腰椎穿刺」を開始する事に。
子供の頃、風邪をこじらせて入院した先で、隣のベッドのおにーさんが受けていた光景がはっきりと思い出される。
ベッドに座り、おもいっきり背中を丸めたおにーさんに刺さるモザイク……。
なんで思い出に、自主規制の編集してんねん!
と、自らの脳につっこみを入れる。
もとい、
おにーさんの表情は背中越しには見えなかったが、そうとう辛い事は背中が物語っていた。
あれかぁ……。
会社で、年一に行われる健康診断の採血ですら嫌だったのに、今年はどれだけ針を刺されるのか……。
しかも今度は背骨……。
しかし、やるしかない。
自分は治すためにここにいる。
でも……。
今年はどれだけ針を刺されるのか……。
午前中の思考は、完全にループに陥っていた。
その最中、転室が決まる。
同じフロアで近くだが、自分の洗面台があるタイプの部屋。
これはありがたかった。
だが、立地条件がわるく、ナースステーションの目の前。
そう、事もあろうに壁の一枚向こうに騒音じい。
もう、気にしてもしょうがない。
さて。
予定の時間になり、看護師さんが準備を始める。
腰回りにタオルを敷き、横向きに寝る。
体操座りのゴロン状態。
割りと仲の良い看護師さんが付いてくれた。
すべてが整い、町川先生の登場。
「はい、じゃ始めるわね~」
ズボンと下着を少しずらされ、腰から背骨を指で確認していく。
一つ二つ……と指がずれていき、ヒタヒタと止まる。
狙いを定めた様だ。
丁寧に消毒をされ、
「ロンさ~ん、麻酔するわね~」
チクッ、ビクッ!
「ごめんね~痛いわよね~」
「そーですね、こんなところに針を刺される事ないですから」
「そ~よね、すぐ麻酔聴くから~」
しかし、効いてないから麻酔をするわけで……。
どこに刺しても麻酔の針は痛い訳で。
狭い範囲でだんだん深く、10数回麻酔をされる。
深ければ深いほど痛い。
麻酔後、少し待ってからいよいよ腰椎に。
「じゃ、いくわね」
スッ……。
「!!」
「痛い?」
「だ……大丈夫……です……」
全然大丈夫じゃない。
麻酔が効いているので痛みではないが、なんとも言えない不快な感じ。
「う~ん、入らないわね~、場所変えるか……」
うっそ?
「ロンさ~ん、ごめんね~、また麻酔からね」
もぅこうなったら「まな板の上の鯉」である。
10分後。
「ロンさん、入ったわよ~」
散々格闘し、とうとうポイントに入った様だ。
「髄液採取するのに、5分くらいこのままね」
どうやら、刺した針から自然に流れ出る髄液を受けとる様だ。
針が動かなければそんなに苦ではない。
「このくらいかな?」
採取が終わったようだ。
「ロンさん、刺したついでにお薬を入れるからね」
針に注射器を繋げて、薬剤を入れるのか?
「!!」
入ったとたん、下半身の痺れと筋肉痛が一気に襲ってきた。
注入は直ぐに終わったが、足を抱えていられない位の激痛。
気がついたら針が抜かれていた。
「ロンさ~ん、終わったからね~、お疲れ様~」
あっという間に居なくなる町川先生。
「よく頑張ったね」
と、後片付けをしてくれる看護師さん。
「仰向けで1時間、自分の体重で患部を圧迫するように寝ていてね」
「大丈夫、呆然として動けないから……」
すべてが終わり、ベッド上で方針状態の自分。
ヘトヘトで疲れはてた。
17時ごろ、子供たちを連れて、仕事終わりのカミさんが来てくれた。
「よくがんばったね~」
きっとそばにいたら、こんな言葉をかけられもしなかったくらいショックな出来事かも知れない。
知らないでいられる事は幸せなのかも。
そして、幸せを分けられるのかも。
なんて哲学的な事を考えながら、来てくれたカミさんに感謝をする。
第2ラウンドは始まったばかりだ。
なにしろ、この戦は負けることは許されない。
子供たちにも、弱い父親の背中は見せられない。
そう、子供たちが帰ったあとの、腰を労りながら、ゆっくりゆっくりトイレに行くへっぴり腰の父親の姿など……。
入院2日目、通算33日目
バイタル 36.5° 上120 下66 拍98 66.4㎏
案の定、まったく眠れず朝を迎え……。
昨日目覚めた時とは違う天井。
なんか、ナースステーションが騒がしい。
聞き耳をたてる事もなく、聞こえてくるのは、何を言っているのかわからないじいと、それをあしらう看護師さん。
このじいも、昨日緊急入院し、しかも自らの状況がわからない様だ。
ミスをしてはいけない仕事をしながら、こんな相手もしなければならない看護師さん、ほんと大変です。
ともあれ
朝から様子を見に来てくれた町川先生。
「ロンさ~ん、今日ね、髄液の検査してみるからね」
「……えっ? 髄液って背骨に針刺すヤツ?」
「そ~よ、よく知ってるわね~」
「あれって、ものすごく痛いらしいですけど……」
「そ~みたいね、私はやられたことないからわからないけど、麻酔するから大丈夫よ~」
相変わらずな町川先生の説明を受け、15時に「腰椎穿刺」を開始する事に。
子供の頃、風邪をこじらせて入院した先で、隣のベッドのおにーさんが受けていた光景がはっきりと思い出される。
ベッドに座り、おもいっきり背中を丸めたおにーさんに刺さるモザイク……。
なんで思い出に、自主規制の編集してんねん!
と、自らの脳につっこみを入れる。
もとい、
おにーさんの表情は背中越しには見えなかったが、そうとう辛い事は背中が物語っていた。
あれかぁ……。
会社で、年一に行われる健康診断の採血ですら嫌だったのに、今年はどれだけ針を刺されるのか……。
しかも今度は背骨……。
しかし、やるしかない。
自分は治すためにここにいる。
でも……。
今年はどれだけ針を刺されるのか……。
午前中の思考は、完全にループに陥っていた。
その最中、転室が決まる。
同じフロアで近くだが、自分の洗面台があるタイプの部屋。
これはありがたかった。
だが、立地条件がわるく、ナースステーションの目の前。
そう、事もあろうに壁の一枚向こうに騒音じい。
もう、気にしてもしょうがない。
さて。
予定の時間になり、看護師さんが準備を始める。
腰回りにタオルを敷き、横向きに寝る。
体操座りのゴロン状態。
割りと仲の良い看護師さんが付いてくれた。
すべてが整い、町川先生の登場。
「はい、じゃ始めるわね~」
ズボンと下着を少しずらされ、腰から背骨を指で確認していく。
一つ二つ……と指がずれていき、ヒタヒタと止まる。
狙いを定めた様だ。
丁寧に消毒をされ、
「ロンさ~ん、麻酔するわね~」
チクッ、ビクッ!
「ごめんね~痛いわよね~」
「そーですね、こんなところに針を刺される事ないですから」
「そ~よね、すぐ麻酔聴くから~」
しかし、効いてないから麻酔をするわけで……。
どこに刺しても麻酔の針は痛い訳で。
狭い範囲でだんだん深く、10数回麻酔をされる。
深ければ深いほど痛い。
麻酔後、少し待ってからいよいよ腰椎に。
「じゃ、いくわね」
スッ……。
「!!」
「痛い?」
「だ……大丈夫……です……」
全然大丈夫じゃない。
麻酔が効いているので痛みではないが、なんとも言えない不快な感じ。
「う~ん、入らないわね~、場所変えるか……」
うっそ?
「ロンさ~ん、ごめんね~、また麻酔からね」
もぅこうなったら「まな板の上の鯉」である。
10分後。
「ロンさん、入ったわよ~」
散々格闘し、とうとうポイントに入った様だ。
「髄液採取するのに、5分くらいこのままね」
どうやら、刺した針から自然に流れ出る髄液を受けとる様だ。
針が動かなければそんなに苦ではない。
「このくらいかな?」
採取が終わったようだ。
「ロンさん、刺したついでにお薬を入れるからね」
針に注射器を繋げて、薬剤を入れるのか?
「!!」
入ったとたん、下半身の痺れと筋肉痛が一気に襲ってきた。
注入は直ぐに終わったが、足を抱えていられない位の激痛。
気がついたら針が抜かれていた。
「ロンさ~ん、終わったからね~、お疲れ様~」
あっという間に居なくなる町川先生。
「よく頑張ったね」
と、後片付けをしてくれる看護師さん。
「仰向けで1時間、自分の体重で患部を圧迫するように寝ていてね」
「大丈夫、呆然として動けないから……」
すべてが終わり、ベッド上で方針状態の自分。
ヘトヘトで疲れはてた。
17時ごろ、子供たちを連れて、仕事終わりのカミさんが来てくれた。
「よくがんばったね~」
きっとそばにいたら、こんな言葉をかけられもしなかったくらいショックな出来事かも知れない。
知らないでいられる事は幸せなのかも。
そして、幸せを分けられるのかも。
なんて哲学的な事を考えながら、来てくれたカミさんに感謝をする。
第2ラウンドは始まったばかりだ。
なにしろ、この戦は負けることは許されない。
子供たちにも、弱い父親の背中は見せられない。
そう、子供たちが帰ったあとの、腰を労りながら、ゆっくりゆっくりトイレに行くへっぴり腰の父親の姿など……。