第一部

一、卯春歌舞伎草紙

歌舞伎の始祖•出雲の阿国一座が故郷で踊りを披露するという。本舞台は、出雲のある村で村人たちが一座の到着を待ちわびている所から始まった。背景の書割は一面が桜で絵巻物のような美しさ。

かぶき者が踊り、次に舞台中央に阿国と名古屋山三がせり上がって登場、阿国は七之助•山三は猿之助が踊り、更に総踊りもあって歌舞伎発祥を偲ばせる華やか舞踊劇になっていた。村長(むらおさ)は92歳の市川寿猿で、村人を追っかけて揚幕に向かう姿に盛んな拍手がおくられた。

 

二、弁天娘女男白浪

歌舞伎をさほど観ない方でも「知らざあ言って聞かせやしょう…」で始まる弁天小僧菊之助のこのセリフはご存知のことでしょう。

 

昭和30年代の半ば頃であろうか。娯楽といえば映画かラジオの時代、一廻り上の兄が映画や芝居、浪曲が好きだった。が、今思えば当時の定番で特別好きというほどでもなかったろう。家に、歌舞伎の「名せりふ集」みたいな本があって、白浪五人男のうちで日本駄右衛門と弁天小僧の名乗りのセリフ(つらね)を憶えたのだった。

この歌舞伎のセリフと落語で志ん生•金馬•売出し頃の三平さんの声が最も古い芸能がらみの記憶として脳のどこかに残っている。…これが今に続いて、私•高齢者の楽しみとなっている。

 

さて、今月の白浪五人男…昔を思いつつ観たのですが、齢のせいか? 最近余り感激しなくなってきている。片岡愛之助の弁天小僧に何となく物足りなさを感じた。勘九郎演じる南郷力丸にも悪いヤツなりの腕白さや痛快さが欠けている。…但し、ここは全く私の主観です。

 

20年も前、一階の前の方の席で見た時の勘九郎•三津五郎コンビと比べてしまった。あの時は、本当に軽〜く酔いました。そうだ、いつも三階から見ているので顔や目線や細かい動きが目に映っていないからかもしれない。大向こうも限定されていし。…舞台はパッと綺麗だし、役者は皆んな熱演しているのに…素人でもあり、つまらないなどと悲観するのは止めにしよう。

 

家に帰って、

wikipanionで「白浪五人男」で検索すると本名題の「青砥稿花紅彩画」(あおとぞうしはなのにしきえ)と出てきて、

初演がいつでその時の配役も容易に知ることができる。名乗りのセリフ(つらね)はもちろんのこと、役名の謂れや着物柄の説明までされていて至れり尽くせりである。

嬉しいことに三代豊国の初演の時の錦絵も載っているのでファイルすることにした。

 

以上です。