SGさんは70歳。

この方は2年前の夏に初めてきた紳士である。去年の秋に一度来ている。

なにか心境の変化があったようで、整体治療を続けてみようと今年の6月に治療を再開した。

おしりの下の方、大殿筋が垂れるように膨らんでいるところが赤くなった、どうしたんだろう、との思いで再開の必要性を感じたそうである。

このときは最後の方で左股関節が緩んできたというのが大きなポイントであった。そして、からだが ポーッと暖かくなった。皮膚が和らぎ体表の血流が良くなったのである。これを積み重ねていけば代謝不良で黒ずんだ皮膚は生気を取り戻すはずである。

おしりが赤くなったというこ問題はたった一度の治療でだいぶ良くなった、ということで希望が湧いて、次の週に再度来院した。

治療の成功は去年あたりからやっている「最初から脊柱ほぐし」の方針がうまく行っていることを示してもいる。

前回も、今回も、たった一週間の間隔であるが射精に成功している。

二度目には射精の前に骨盤が動く、自律的に動くという現象が起きたので固まっていた腰の内部の筋も回復し始めたということである。

射精は男性にとってはある種のステータスであり、精神の支えである。

バツイチという。よくあることだが、奥さんとセックスが上手く行かなくなったのですかと聞いてみると、そうではなくて、という。さらに聞いてみると、ある種人生の苦労の時期があったけど、奥さんには一緒に苦労する気がなくて別れてしまったという。

会話と治療の経過でみると、全般的には問題は少なくて、年齢相応に皮膚に老化が現れている、胸部、アゴ先の皮膚が赤いという程度。胸部皮膚が赤いのは皮膚の問題が大きい。少しEDという。70歳では標準的なものである。

こうした状態の人に定期治療をするとして、目標はどんなものになるであろうか。

老化からの回復であるが、こういう場合こそ皮膚の老化、黒化部位の意味する問題が入口として重要である。一般的な腰痛の有無、内科的不調の有無、姿勢テストによる体の可動性の確認がスタートであり、こうした指標の改善が経過観察のポイントでもある。

高齢に達しても自力で生活ができ、人生を楽しめる体を作るのが目標である。しばらく通うつもりとおっしゃった。

 

 

TKさんは50歳、骨格の太いしっかりした体の紳士である。

右の前腕に大きな火傷の跡がケロイドとして残っていて、これが子供の時から体に影響を与えている。主に皮膚の収縮を引き起こす要素である、ということである。

10年近く前から時々治療しているが、今回、3年ぶりにやってきた。

 

外見からすると特に悪化するとか、老化しているとかという印象はない。

しかし、最近はペニスに元気がない、それから排尿の後でよく尿もれがおこるという。これは以前にはなかったことである。

推定するに、尿道に関する括約筋の働きが十分でないということであろう。それは骨盤周りの筋群の緊張があって、括約筋あるいは同様の働きをするメカニズムがうまく働かないということである。

体の動きはしっかりした感じで、毎週やっているテニスのおかげもあって骨格筋的バランスには問題なさそうである。問題は深部筋膜なのか体表の皮膚なのかという疑問が出る。

以前、座っていると肛門が痛くなるという剣道の達人の治療をしたことがあるが、想像される通り、腰、臀部に激しい力の加わる運動であって、その緊張が残って蓄積され肛門周囲の筋膜に対して強い対抗力として働いていることがトラブルの原因であるとみた。肛門周囲の緊張と見たのである。

今回の尿もれも類似した問題であるが、大元は緊張した全身の皮膚である。皮膚に向かって筋群が引っ張られて中心部分の管が広がってしまう、と見ることもできる。

ここで括約筋に該当するのは尿管口閉鎖ワナと膀胱括約筋、深会陰横筋であり、広げる役割の直腸膀胱筋、膀胱垂の一部など(解剖学アトラス2 p269)である。いずれも骨盤の底域の緊張の影響を大いに受けるところである。ここは運動できたえることは難しい。

皮膚の観察は整体においてとても大事で、問題の由来を想像するための大きな判断要素である。

右前腕のケロイドの先、右手、その指の皮膚はひどく黒ずんでいる。対抗力を生み出すための皮膚組成の変化である。

標準的な手順として下腹部、腹直筋、恥骨周り、骨盤周り、大腿、腰部の開放を行い、立位の動作テストをした。なんと、かえって上半身が固くなった感じがするという。

大抵の場合、腰が動き良くなった、前屈が行くようになったという感想をいただくのであるが、それが違うのである。上半身の皮膚筋膜が縮んだと考えられる。

いくつかのステップを経て、お尻あたりの解放操作がとても気持ちいいというので改めてそこに注力した。部位を移動していくにつれ、立ったほうがいいでしょう、ということになった。

こうしたクライアントの提案がとも良い展開になっていくことがある。

はじめは後から臀部の膨らみ、その周り、坐骨から肛門域、その左右をほぐした。とてもいいという。動作テストをすると、今度は前側、そけいなどをやってもらいたいという。こんどはまえから。

動作テストに大いなる改善が確かめられた。

ここで皮膚と皮下脂肪の関係について確認したい。

皮下脂肪と呼ばれるが、これは皮下組織であって、脂肪や老廃物のたまり場所でもあるが、じつはこれはコラーゲンの集積構造の変化、バンドル化の程度などによって張力特性を変化させ、からだ全体の張力の調節に参加する組織である。深部にある筋(たとえばハムストリングス)の内部筋膜の硬化度合いを反映する組織でもある。

おしりの膨らみは立位では垂下っている部分はこの皮下組織が分厚くなったものであって、調節機構としても大規模に働いている部分である。

そこに大きな緊張の蓄積があって、それが解放されていったということで快感と柔軟性回復につながったのである。

そして、深部の尿管周りのやわらぎにつながっているはずである、と期待できる。

このことはペニスのしっかりしたエレクトにつながる。今回は不十分であったが。

一度の治療には限界があると思われるが、結果がたのしみである。

しばらく通ってみようと思ってます、ということであった。

 

TMさんはもうすぐ40歳である。

始めて来たのは30歳のときで、10年前からEDで悩んでいたという。とても太っていて、110キロ、おすもうさんの小錦みたいな体型である。体型は家系の特徴だという。そうではあってもペニスが小さい、若くてEDというのは治すべき、治せる問題があるということである。

2015年に3回、2016年、2017年にそれぞれ一回来ている。

2018年は治療実績なし。

2019年に4回来ている。

2020年は実績なく、2021年に3年ぶりに治療した。

また次の年には実績なくて、今年の2024年に3年ぶりの治療になった。

ふと思いついた、という。実に幸運である。

ここ最近はEDと皮膚の問題の深い関係がわかってきていて、多くのクライエントの治療でも成果が出ている。

今回、二つの超音波ツールを両手に持って皮膚の解放を全身にわたって行うことにした。豆粒のようなミニヘルニアが皮膚上に出ており(肩ラインと鎖骨の上ののど筋膜)、腰背部には皮膚の相対的な弱さと皮下組織の中のコラーゲンのバンドル化を示す肌の凸凹があり、二重あごの示すたるんだ皮膚問題、などの兆候をあちこちに見ての判断である。

結果、ペニスワークにおいて初めてしっかりしたエレクトが起こり、そのうえペニスが小さいスーッと伸び、10センチを大きく超えるようになったのである。ふやけたそけい、恥骨領域の皮下組織に埋もれていたペニスの根の部分への拘束要因が振動刺激中に外れていったのである。

これまでもなんとか射精していたが、本の5センチ程度、柔らかなママという状態であった。

やはり陰嚢の皮膚、恥骨周囲の皮膚を含む皮膚問題、皮下組織問題だったのである。

楚々て追加的にわかったことは二重あごは皮膚問題、恥骨坐骨問題、赤くなった皮膚問題出るということである。皮膚の脱力が起こっているのである。

10年近く前の初期の治療において、肝臓薬、花粉症薬のにおいが治療時に発散されていた、というのも皮膚問題を示唆するものであった。最近わかったことであるが、二重あごの人は頸背部の皮膚が縮んでいて、これが陰部の収縮に大きく関係するのである。皮膚の解放に伴う匂いの発散が上背部だったのは当然であった。

触診の観察ではあちこちに冷たい部位、塊があり、血流の滞りが見られた。太ったことによる血管の圧迫であろう。運動不足は本人も自覚していた。

面白いことに、頸背部とペニスの関係が9年前の記録にも残っていたのである。ペニスワークのときに頸背部がほぐれていったとの図解記録である。

それと同様のことが今回も起こったのである。それに加えペニス、陰嚢と頸部筋膜のほぐしをペニスワーク前に行っていたので、ペニスが大きくなるという結果を生んだのであった。

今回、見事によみがえったのである。この半年前から車はやめて歩くことにしているそうである。歩きの効果は実に大きい。

初期には下腿の下部は赤茶けた皮膚であり、まだら模様が出ていたが、今回はほんのすこしだけである。当時、股間は真っ黒であった。

ED解消に希望が出てきたらしく、毎月来ることにするそうである。