Wさんは40代 既婚者である。

前回の治療は3年前で、その後調子は良かったのだが、このごろ3回に一回は中折れするようになったという。当時も今もであるが、切れ痔があるという。肛門周囲の緊張が肛門を引っ張るように作用するということで、簡単に言うと皮膚の収縮力が強く働いていると想像される。

 

体型としてはよくバランスが取れているが、顔の中心が深く黒ずんでいる。脊柱の緊張を予想させる。

まず全体の皮膚の様子の観察をした。

滑らかな皮膚であるが、写真で見る通り、晴れた日に薄曇のかかったように2,3、4センチ経の変色皮膚の雲が浮いている。

起立筋エリアなどを指先で押してみると、3ないし5ミリ経の縦長の粒立ちが密集している。

もう一つの特徴は肌がピカピカしている、テカテカしているという珍しい特徴である。これまで何度もスネがテカテカしている、ピカピカしている例をユーチューブで発表してきた。背中一帯というのは初めてであるが、スネの場合と同じく皮膚全体の緊張を引き起こす現象がは背景にあることを示している。

これは下層組織の固化、張力の亢進に対抗して表層の張力を高めようとする組織学的な変性現象である。皮膚の薄黒いエリアは周りより緻密な皮膚組織に変わったのであり、つぶつぶはコラーゲンの密集形態の変化によって弾性力の高い皮下組織になったといことである。コラーゲンの密集形態についてはいろいろな論文がある。

椅子のママ振動ブラシで背中全体をほぐしていると、左腹直筋が痛くなってきた。これを術者が感受したのである。ここでは本人はわからなかった。

左腹部をほぐしていると右足首がざわついてきた。そこを振動ブラシでほぐすとペニスと陰嚢が痒くなってきた。これは本人もわかった。

再度背中を観察すると、なんと、左腰部、起立筋が熱くなっている。筋圧迫が弱まり激しい血流が起こったのである。

ここで確認することであるが、皮下組織というのは単に皮膚と筋膜の間に浮いているということではなくて、多様な繊維形態、連絡形態をともなった表層と深層の張力情報を伝達する機能も持っているということである。

この伝達機能は筋膜研究の最前線でもあって、ロボティクスに大いに参考になる事象である。

ここで深層と読んでいるのは骨膜、靭帯、骨の近接筋膜のことである。脊柱の椎骨は相互に拘束するというのが解剖学の見解であるが、このレベルにおいては椎骨の複雑なな形状、きわめて多重に張り巡らされた靭帯を思い出す必要がある。それらが引っ張り、引っ張り返しねじれたり逆にねじれたりという変形と運動が行われていて、長期的には歪みの蓄積になる、筋膜は固くなるということである。

別項で述べたごとく、腰部の回復が頚椎周囲の筋膜の緩みを呼ぶということもおこってくる。

逆方向に見ると、頚椎レベルの筋膜緩和が株脊柱およびペニス組織の緩和を引き起こすというのも理解される。実際伏臥においてMebakと振動ブラシを用いて頚椎に振動を加えているとペニスがじわじわとしてきてほぐれていった。このことはWさんも認めたことである。術者はこの現象を感受できるのである。

治療全体としてはいつも通り徹底した脊柱ほぐしと臀部筋、脚部のほぐし、腹部、胸郭サイドほぐしとをおこなった。

そして坐骨周、会陰部そしてペニスワークである。

肛門に近いペニスの根、さおの下部から中部、陰嚢横に時間をかけ、次第にペニス振動中心の操作に移った。足首や頸部が一緒に動いてくる。さいごはダブルバイブレータハサミ打ちになり、そのうち骨盤をしゃくり上げるような急激な運動とともに射精した。

頚椎から腰椎までほぐれ、大腰筋、腸骨筋の運動能力も相当回復したハヅなので、3階に一回の中折もなくなったと推定できる。