W君は10年以上来院している。幼児の右中指のケガで爪が異常に曲がり、指先が爪の作る半球になっていて、全身の皮膚、筋膜の収縮を引き起こしている。

先月にも来ているので、なにかうまくいってないところがあるのであろう。

ヒップや脚の後側が張る。時にしびれるような感じがあるという。

右手の中指の爪が無い、あるいは変形巻き込み状態であるというのが彼の病因である。

一時はやせ細って、2年がかりで治したことがあったが、その後は太ってきて、最近は腹が出ている。

前屈で床に手が届くように治療できたのだが、最近は届かない状態で治療を終えるようになってきた。

このことは脊柱の芯にまで硬結が広がったことを意味しているであろう。

特に今日は後頭のすぐ下の皮膚が赤くて、そこまでは最近の様子と言えるのだが、さらに赤い皮膚の上に赤いあるいは茶色い粒立ちが密集しているようになっている。皮膚の硬化メカニズムに、黒く硬い皮膚になる、スジ張った繊維が表層に現れる、粒立ちが生じるという風に悪化、硬化は進行するのであるが、後頭の下のキワは細かいお出来になっている。正常な皮膚の段階は超えてしまった、張力コントロールの限界を超えてしまったという風に見える。そこで”しびれ”が発生しているということであろう。本人はダルいと言っているが。

対処法として、脊柱の芯を含め強力にテンションを下げなければならない。

VegaとS-Sのダブルで頭皮をほぐした。特に後頭の下の際にS-Sで、頭あちこちにVegaでいろいろな共振が現れ、からだのあちこちにも反応が現れていた。とてもよい兆候であり、ひょっとしたら頭蓋底の筋膜、C1、2に向かう筋も動いているかもしれないと思われた。

共振でありながら頭蓋が揺れているのである。

頭をほぐしながら、下腿、足は3回ほぐすことになった。腰も二度出てきた。

首を扱っているうちに、首の左が動いてきた。振動S-Sを押し付けて後、パチグーひねりでほぐした。

このVegaとS-Sによる頭への二重法がとてもいい。振動や遠方への響き、などなど、広がりがとても大きい。逆に、頭への蓄積は巨大だったということでもある。

姫路のYさんのような特異な皮膚筋膜収縮病の人もこれが必須である。実際、そのように治療したのであった。

またテストすると、右側の首、横、前が動いてきた。同様に振動S-S押し付けの後パチグーひねりで解放した。

また腰ひねりテストをすると、腰椎両側にピリピリとしたひびきが現れた。

ベッドに両手を着いてもらって、振動S-SとAlc打ちでほぐしていった。強く押し込むのである。

両側をほぐした。効果は大きい。前屈はかえって行かなくなったのだが、これは背筋群の収縮力の回復である。

お腹の出ているのは背筋の収縮力の喪失であった、ということが分かったとともに、治療方法も分かったことになる。

すなわち、頭皮、脊柱、腰部、下腿である。

今回は一般的な仰臥、側臥治療の時間は少しであった。

しかし、このやりかたで頑固なW君の問題の解決が見えてきた。