またウイグル自治区で市民による官公庁襲撃が起こったらしい。
何十年も前から大規模な蜂起は起こっているけど、大きく報道されるようになってからまだ10年も経ってないだろう。
ただ、現在の報道も、「暴徒がテロ」などと、中国政府に配慮した報道が多い。
ウイグルの立場の人を取材せず、中国政府の発表を元に報じるだけではジャーナリストとは言えない。
ウイグルの抑圧された実態を他人事のように思っているのかもしれないけど、
日ごろ「植民地支配」や「民族差別」などに反対しているリベラルな人たちはどう考えているのだろう。
日本支配下の朝鮮半島において、テロではなく「抵抗のための蜂起」が頻発した、と認識している人々は、
ウイグルやチベットなどで起きていることを「暴徒によるテロ」だと言い切ることに後ろめたさを感じないのだろうか。
もう10年以上前になるが、ウイグル自治区を回った折、南部のホータンからヤルカンド、カシュガルも巡った。
オアシス都市とオアシス都市の間にあるヤルカンドのことは秘境だと思っていたが、ホテルではNHKの日本語放送も見られ、街中には浜崎あゆみの広告看板もあった。
私が見た限りでは、ホテルの従業員やタクシーの運転手、商店の経営者などは中国人ばかり。
ヤルカンドの歴史を感じる古い町並みは壊され、広い通りの新しい町がどんどん作られていた。
人々を支配しやすい町にしていることが伺われた。
そんな中で、少し残った古い路地に足を踏み入れてみた。
小さな子どもたちが近寄ってきたのでカメラを向けると、満面の笑みを見せてくれた。
トルコっぽい顔立ちや少しヨーロッパ的な顔立ち。
ウルムチなどの北部のウイグル自治区はやや薄い顔立ちのウイグル人が多かったけど、
南部のほうがやや濃い顔の人が多い印象。
小さな子はまだイスラムの風習になじんでいないのか、男の子と女の子がとても楽しそうにじゃれあっていた。
ただ、一人の少年が、必死にぼくを路地から出そうとした。
中国人に入り込まれては困ると思ったのかもしれない。
実際、ウイグル自治区においては、中国人とウイグル人の対立は根深い。
知り合った中国人は、ウイグル人は粗野で暴力的で盗みをする人々だから注意しろよ、と心配してくれた。
ウイグル人は寡黙だけど、まれに街中で激高して何やら言い合っている姿も目にした。
中国人はウイグル人の反発を力で抑え込もうとしている。
蹂躙された人々は、やるせなさや悲しさ、怒りなどを暴発させる。
そんな情景を見て見ぬふりして、「暴力テロが発生していますね。中国も何か考えないといけませんね」ということぐらいしか言えない日本のマスコミ。
きっと、日本が他国に支配されてしまって、抑圧された生活をせざるを得なくなっても、ぼくは仕方ないと感じるだろう。
「日本人は、他国の人が抑圧されていたときに、その悲しみや残酷さに無関心だったのだから、自分たちが同じ状況になったときに同情を得ようとするのは都合が良すぎる。こんな目に遭ってしまうのも自業自得だ」と、状況を受け入れるべきだろう。
<参考>
■朝日新聞のキムスンヒ上海支局長は、中国政府の見解をそのまま横流ししただけ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140730-00000001-asahi-int&pos=3
中国新疆で政府施設襲撃 数十人死傷、容疑者数十人射殺
朝日新聞デジタル 7月29日(火)23時57分配信
中国の国営新華社通信によると、新疆ウイグル自治区カシュガル地区ヤルカンド県で28日朝、刃物を持った一団が地元の政府施設や派出所を襲撃する事件が起きた。容疑者らはさらに通行車両を壊したり焼き払ったりしたほか、市民に切りつけ、ウイグル族と漢族数十人が死傷した。警察当局は容疑者数十人を射殺したという。
新華社通信は「組織的で計画的な暴力テロ事件」と伝えている。(上海=金順姫)
■日テレは中国政府の見解に加え、背景を少し説明して報道。
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20140730-00000013-nnn-int
“ウイグル”で大規模襲撃 市民数十人死傷
日本テレビ系(NNN) 7月30日(水)9時11分配信
中国・新疆ウイグル自治区で28日、暴徒による大規模な襲撃事件が発生し、市民数十人が死傷した。警察が暴徒数十人を射殺したという。
国営・新華社通信によると、新疆ウイグル自治区・カシュガル地区のヤルカンド県で28日、大規模な襲撃事件が起きた。暴徒らが警察施設を襲撃した上、車を燃やしたり、群衆を切りつけたりし、市民数十人が死傷した。そして、暴徒数十人が警察により射殺されたという。地元警察当局は、「組織的・計画的で重大な暴力テロ襲撃事件」として捜査を進めている。
新疆ウイグル自治区では、爆弾テロ事件や警察襲撃事件が相次いで起き、多くの死傷者が出ていて、支配する側の漢民族とウイグル族との間で民族対立が深刻になっている。
■読売新聞は、踏み込んだ内容も掲載。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140730-00050002-yom-int
新疆ウイグル自治区で暴徒が襲撃、数十人死傷
読売新聞 7月30日(水)0時27分配信
【上海=鈴木隆弘】中国国営新華社通信によると、新疆ウイグル自治区南西部のヤルカンド県で28日未明、暴徒の集団が刀やおのを持って、地元政府庁舎や警察署などを襲撃した。
暴徒の一部は別の場所に移動して、漢族や少数民族ウイグル族の住民にも襲いかかり、死傷者は数十人に達した。これに対し、警察当局は暴徒数十人を射殺したという。
同通信によると、暴徒は車両31台を破壊し、うち6台を燃やした。警察当局は、組織的で計画的な「暴力テロ」事件と断定し、捜査している。現地の状況は安定を取り戻しているという。
同自治区では、抑圧を受けたウイグル族が反発を強め、政府機関や警察署を襲撃する事件が相次いでいる。4月と5月には区都ウルムチで爆発事件が相次ぎ、当局が1年間の徹底したテロ摘発作戦を進めているところだった。警戒を強めるなか再び事件が起きたことで、習近平(シージンピン)政権はさらに締め付けを強めるとみられる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140730-00050147-yom-int
新疆襲撃、千人規模の騒乱か…警察はテロと断定
読売新聞 7月30日(水)21時9分配信
【ヤルカンド(中国新疆ウイグル自治区)=鈴木隆弘】新疆ウイグル自治区南西部のカシュガル地区ヤルカンド県で28日未明に起きた衝突は、数百人から1000人規模のウイグル族住民を巻き込んだ大規模な騒乱だった模様だ。
「外部の車は一切入れない」――。ヤルカンド中心部に入る幹線道路に設けられた検問所では、警察官が語気を強め、車を追い返していた。街の中の様子は全くうかがえなかった。
衝突現場から約150キロ・メートル離れたカシュガル地区中心部でも、武装警察の装甲車など多数の警察車両が巡回し、厳戒態勢が敷かれた。インターネットは遮断され、ほとんどの商店は当局から営業停止を求められた。ある商店の男性は「まるで戒厳令のようだ」と困惑していた。
新華社通信によると、事件の概要は、暴徒が地元警察署などを襲撃後、漢族の住民なども襲って数十人の死傷者を出し、暴徒数十人が射殺されたというもの。警察は事件を「テロ」と断定している。
最終更新:7月30日(水)23時40分読売新聞
■NHKは差別的な印象もある「新疆」を見出しに使用。中国政府による抑圧には触れず。抑圧の解消ではなく治安の安定を重視。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140801/k10013457541000.html
新疆 “当局寄り”モスクの指導者殺害
8月1日 9時43分 NHK NEWS WEB
武装グループによる襲撃事件が相次ぐ中国西部の新疆ウイグル自治区で、市民から「姿勢が当局寄り」だと指摘されていた中国最大級のモスクの指導者が殺害されました。
中国国営の新華社通信によりますと、新疆ウイグル自治区、カシュガルにある中国最大級のモスク、エイティガール寺院の指導者、ジュメ・タヒール氏が、7月30日に殺害され、治安当局は容疑者3人のうち2人を射殺、1人を拘束して、「過激な宗教思想の影響を受けた3人が影響力を高めようと企てた犯行だ」としています。
ジュメ・タヒール氏は、中国共産党を支持する中国イスラム教協会の副会長を務めていて、事件のあと、新疆ウイグル自治区トップの張春賢書記も「彼は国を愛し、党を愛し、国家政策の宣伝に力を尽くし、過激な宗教勢力と戦っていた」と功績をたたえました。
しかし、ジュメ・タヒール氏を巡っては、カシュガル市民からは「当局寄りの姿勢で、彼に反発している人も多い」という声も出ていました。
カシュガルでは、この2日前にも地元政府の施設などが襲われ数十人が死傷する事件が起きており、今回、中国当局寄りとされるイスラム教の指導者が殺害されたことで、治安の安定が緊急の課題になっています。
同じニュースを扱っても、メディアによってずいぶん視点や量が異なる。
各メディアの発信するニュースを分析し、各メディアの立ち位置や方向性を分析するとおもしろいかもしれない。