流浪の民~石倉小三郎訳詞~めぐしおとめ | 愛唱会ジャーナル

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今夏の発表会に向けて練習を開始したシューマン「流浪の民」は、石倉小三郎の訳詞による。石倉訳は何年に発表されたのか検索しても判らないが、手持ち楽譜によれば、大正14年11月19日発行が初版であり、既に九十年余り経っている。名訳として定着しているようだ。
 
その名訳にケチを付けようとの意図は毛頭持っていないが、一つの疑問を引き摺っている:
 
≪「流浪の民」の日本語歌詞は、名訳の誉れ高い石倉小三郎氏の訳が定着しているが、‘めぐしおとめ’なる表現が以前から気になって、どうも落ち着かない。“めぐきおとめ”とはならないのかなあ。≫
 

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宮原禎次氏の解説によれば、この歌は大体五部に分けられる:
 
一 山毛欅の森の~~~かゞやけり
二 焚火かこみつ~~~さしめぐる
三 歌ひさわぐ~~~嫗あり
四 可愛し少女~~~楽土求めたり
五 東空のしらみては~~~流浪の民
 
(上掲歌詞中、第八行目(~かゞやけり)の後に“焚火かこみつ 赤き焔めぐりめぐり 焚火を囲みて男息らふ”と挿入すれば全歌詞を表示したことになる。)
 
当方が気にするのは、≪四 可愛し少女~≫の部分、すなわち≪めぐしおとめ≫である。≪可愛い娘≫の意味であるとすれば、「めぐし」は「おとめ」を修飾する形容詞として連体形「めぐき」とするのが正統な文語表現なのではないか。
 
九十年余り歌い継がれて、誰からも指摘されていないとすれば、当方の勘違い、無知なのかな。“めぐし。 おとめ まひいでつ。”と読むとか、“終止形+名詞”の用法もあったとか。