東南アジアのお米はとても美味しいなあ。日本米よりも粒が長くてパサパサとしていて香りが強いのが特徴ですね。
 香港へ旅すると、朝はお粥です。僕は豚肉とピータン入りのお粥を頼むことが多い。とても人気のある具なので、何処の麺粥屋のメニューにも載っています。日本でいえば鮭茶漬けみたいなものでしょうか。
 お粥がラーメンどんぶりに入って、運ばれてまいります。僕はテーブル脇の葱と冬菜の漬物を少しとり、ラーメンどんぶりの中をぐるぐるとかき回します。頃合のよくなったところをレンゲですくって一口含むと、ぷわあんと米の香りがいたします。ゴクリと呑み込むと、胸にじんわりと温かみが広がってゆきます。僕は目を瞑って上を向き、口を阿呆のように空けたまま「うまあい」と、ため息ともつかないセリフを洩らしているでしょう。
 冷えては損じるとばかりに我に返り、レンゲを下に向けてラーメンどんぶりの中を探ります。豚肉とピータンを選ったら葱と冬菜のところも一緒にすくって、こぼさないよう慎重にレンゲを運びます。今度は豚肉とピータンを前歯で丁寧に噛みくずしてゆきます。肉と卵は千切られながら塩気と旨みをお粥に放ちはじめるのです。うす出汁で煮込まれた米と、豚肉、ピータン、葱と冬菜が、渾然一体となると……ググッ、ズビっ、あ、鼻水出ちゃった。少し涙目にもなっています。そして胸のうちを満たしているものは……郷愁感です。
「本当は、オイラは香港生まれなんじゃなかろうか」
毎朝こんな調子で朝を迎えるわけですから、香港の旅は幸せです。東南アジアのお米のおかげですね。