今回はBリーグからシーズン総評第2弾の秋田ノーザンハピネッツ編。

 

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チーム評

 

まず、秋田の編成やロスターについて見てみると、複数年契約でディフェンスの要であったデイビスを契約解除する驚きの選択が開幕前にあり、ブライマーの契約解除があるなどシーズンを迎えるに当たって方針転換と想定外の出来事があった。

デイビスの代わりにはカンターを獲得し、ブライマーの代わりには緊急でザックを獲得することになった。

編成における秋田の失敗はアジア枠を戦力としても機能しておらず、バックアップや繋ぎとしても活用しにくいワンを残したことだと個人的に思う。

資金力のない秋田にとって格安で日本人以上の選手を充てることの出来るアジア枠は貴重なはずであるが、秋田は以前からPTのほとんどないワンにアジア枠を充てている。

複数年契約という事情あるとはいえ、同じく複数年契約で核戦力でもあったデイビスは切ったのにPTのほとんどないワンを抱えるのは貴重なアジア枠を無駄にしていると思わざるを得なかった。

そんな秋田であるが、外国人選手が全て変わってタイプも違う選手になったので昨季サプライズを起こした前田HCが今季の外国人選手でどのようなバスケをするか楽しみにしていた。

しかし、事情が事情だけに前田HCが指揮を取ることはほとんどなかった。

シーズンを終えて結果的にブライマーがザックに代わったのはプラスになったと思うが、やはりデイビスは残した方が良かったのではないかと思った。

というのも秋田の持ち味の1つはディフェンスだと思うので、今季の秋田の外国人選手はディフェンスタイプがいなかったのはコンセプトとズレが生じる結果になったのではないかと感じるからである。

ブライマーがその役目と考えていたのかもしれないが、ブライマーがデイビスほどのペリメーターディフェンスを備えているとは思えなかったので尚更そう思ってしまう。

ただ、オフェンス面でカンターは終盤から、ザックは中盤まで良い活躍をしており、カンターは最初から終盤のような活躍を、ザックは最後まで中盤以前までの活躍が出来ていればという惜しい面もあった。

そういうチグハグさがあったからなのか、リーグ全体のレベルが上がったからなのか、または前田HCの不在があったからなのか秋田は今季29勝31敗で勝率5割を切ってプレイオフ進出も逃した。

しかし、主力も田口を途中から欠いて東地区4位であり、秋田は資金力では下位クラスのチームということから考えると今季の成績も悪いものではないというか戦力以上の戦果だと個人的に思う。
 

 

個人評

 

主力選手や気になる選手について見ていくと、

・キッド

グリンに代わってチームのトップスコアラーとなったが、セレクションが悪かったり乱発気味になるなどグリンよりは3P%が10%も下がってしまった。

ドライブが得意な選手ではないが、マッチアップがビッグマンになることが多い関係でドライブも思っていたより効果的に決まっていた。

ポストディフェンスではやはり苦戦が見られた。


・ザック

オフェンス面で予想外というかブライマーが入るよりも良かったのではないかというプレイぶりだった。

まず、パスが非常に上手く、シーズン序盤には2桁前後のアシストを連発するなどローポスト近辺からカッターやシューターへの抜群のパスを供給し、ファシリテーターとして機能していた。

得点面ではダイブやカットがメインであるが、ポストプレイでも得点するなどポストゲーマーのいない秋田において本来の持ち味でなくてもその役割を担っていた。

FTが苦手で5割台と得点チャンスを多く逃していはいるが、緊急で獲得した選手ということを考えると申し分ない活躍だったと感じる。


・カンター

かつて日本に来ると予想していた選手の1人だったのでもう少しオフェンス面で活躍することを期待していた。

2P5割以上で3Pも34%でFT7割と悪くない数字だが、得点力という面で平均10点は物足りなく、終盤のような活躍をシーズン通して出来たはずとも思える選手なので怪我があったことも影響しているのか、本領は発揮出来なかったのかもしれない。

ザックが緊急で獲得したから仕方ないとはいえ、ディフェンス面の噛み合わせでカンターとザックは合わなかったようにも感じる。

他のチームでもう1年見たい選手。


・中山

秋田の攻守の大歯車と言ってもいい存在で3Pはほぼ4割でアシスト4のTOは1.3と素晴らしい数字が並んでいる。

最も注目すべきはリバウンドで、サイズがあるわけでもない日本人ガードの選手でありながらOR1.6でトータルでも4.4と信じられない本数取っている。

ディフェンスでも秋田の激しいディフェンスを象徴するようにプレッシャーをかけては平均1.7本も記録するスティールに繋げてプッシュするなどコートを縦横無尽に走る献身性も持ち合わせている。


・田口

3Pが43%でチーム最高確率であり、平均得点でも日本人選手で暫定1位の得点力だったので負傷離脱によりシーズンの1/3しか出場出来なかったのは秋田に大きな痛手を与えた。

田口が怪我なく過ごせていたら秋田の成績ももっと良かったかもしれないし勝率5割を超えられたかもしれない。

それくらい守り勝つスタイルの秋田にとって得点力ある田口の存在は大きかったように思える。


・古川

3Pは34.3%でシューターとしては確率が良くない上に昨季よりも確率が下がってしまった。

田口がいなくなってからの秋田では日本人トップのスコアラーになったが、FT確率も下がった上に勿体ないようなミスもよく見られ、昨季ほど怖い存在ではなかった。

 

主要チームスタッツ比較

 

主要チームスタッツを昨季の数字と順位で比較してみると、


・平均得点

平均得点は昨季78.7点でリーグ16位、今季は78.6点で数字は下がってたが順位はリーグ14位に上昇。

中位帯の得点力が昨季より下がったのが順位上昇の理由かもしれない。


・平均失点

平均失点は昨季75.7点でリーグ4位、今季は77.7点で少ない順でリーグ8位と数値と順位の両方が下落。

デイビスの移籍はやはり失点が増える要因になったかもしれない。


・平均3P

平均3PAは昨季25.2本でリーグ10位、今季は26.8本でリーグ6位で本数と順位が上昇。

平均3PMは昨季9.5本でリーグ5位、今季は9.2本でリーグ6位と本数と順位が僅かに下落。

平均3P%は昨季37.8%でリーグ1位、今季は34.2%で確率と順位がリーグ7位に下降。

リーグの傾向に合わせてアテンプトが増えたが、成功数や確率が下がっているというのは効率的ではないかもしれない。

ただ、田口がいなくなったという事情もある中で確率と成功数で上位をキープしているのは素晴らしい。


・平均2P

平均2PAは昨季が38.9本でリーグ19位、今季は40.8本でリーグ7位にまで本数と順位が急上昇。

平均2PMは昨季19.1本で21位、今季は19.7本でリーグ18位に本数と順位が上昇。

平均2P%は昨季49.1%でリーグ21位、今季は48.4%でリーグ24位に確率と順位が下落。

こちらもアテンプトが増えて確率は下がっており、ゴール下でのフィニッシュ力が昨季と比べて弱かったのかもしれない。


・平均FG

平均FGAは昨季が64.2本でリーグ15位、今季は67.6本でリーグ4位にまでアテンプトと順位を大幅に上昇させた。

平均FGMは昨季が28.6本でリーグ17位、今季は28.9本でリーグ16位で成功数と順位を上昇させた。

平均FG%は昨季が44.6%でリーグ19位、今季は42.7%でリーグ23位と確率と順位が大幅にダウン。

確率が大きく下がって順位も最下位手前の危うい位置であるが、アテンプトが多い関係で成功数は増えているという形に。


・平均FT

平均FTAは昨季が15.8本でリーグ16位、今季は15.9本でリーグ16位とアテンプトが僅かに増えて順位は同じだった。

平均FTMは昨季が11.9本でリーグ15位、今季は11.6本でリーグ16位と成功数と順位が下落。

平均FT%は昨季が75.1%でリーグ7位、今季は72.9%でリーグ13位に確率と順位が下落。

アテンプトが増えて成功数と確率が落ちるのは効率的ではなく、特に確率は2%以上落ちているのは痛かった。


・平均リバウンド

平均オフェンスリバウンドは昨季が11.1本でリーグ9位、今季は11.7本でリーグ7位と本数と順位が上昇。

平均ディフェンスリバウンドは昨季が25本でリーグ18位、今季は27.3本でリーグ5位と本数と順位が大幅に上昇。

平均トータルリバウンドは昨季が36.1本でリーグ16位、今季は39本でリーグ4位とこちらも本数と順位が大きく上昇した。


・平均アシスト

平均アシストは昨季20.8本でリーグ12位、今季は22.1本でリーグ6位と本数と順位が大きく上昇。

持ち味であった3Pの成功数と確率が下がったのでアシストも落ちるかと思いきやザックがオフボールから高確率でフィニッシュしてくれたことなどもありアシスト数は増えた。


・平均スティール

平均スティールは昨季が8.8個でリーグ2位、今季は7.3個で4位と個数と順位が後退。

リーグ全体でスティールが減少傾向になったのと上位であることには変わらないのでマイナス要素とは思わない。


平均ブロック

平均ブロックは昨季が2.6本でリーグ9位、今季は2本でリーグ21位と本数と順位が大きく下落。

これは言うまでもなく、デイビスとアイバーソンが抜けたことによるものだろう。


平均ターンオーバー

平均TOは昨季が13.8個で少ない順でリーグ19位、今季は12.5個でリーグ12位と個数を減らして順位も上げた。

チームでTOが平均2個以上あるのがザックのみで、1.5個以上で見てもキッドが加わるだけなのでデイビスとグリンが2個以上記録していた昨季から減ったのが分かる。


平均ファウル

平均ファウル数は昨季18.2個で少ない順でリーグ10位、今季は17.6個で11位と個数を減らしたが、順位は僅かに下降。

激しいディフェンスの割にはファウルが多いというわけでもなく、チーム数が増えたこととファウル数自体は減っていることを考えれば順位が下がっていることはマイナス要素ではないだろう。


オフェンシブレーティング

オフェンシブレーティングは昨季107.7でリーグ16位、今季は105.6でリーグ19位に数値と順位が下がった。

外国人選手が2人だった期間や田口の離脱などが影響した部分もあるかもしれない。


ディフェンシブレーティング

ディフェンシブレーティングは昨季103.6で良い順からリーグ5位、今季は104.8でリーグ6位に数値と順位が下落。

今季はリーグ全体で数値が下がっているのでネガティブな部分とは思わない。

 

以上24項目中、昨季との比較で順位が下がった項目が12項目あった。

 

スタッツ順位の分布として下位項目が5個、中位が7個、上位が12個と上位が最も多く、やはり資金力を考えれば優秀な数字が並んでいると感じる。

 

特に改善が必要なのは2P%とFG%とファウルの多さなのではと思う。

 

ファウル以外は外国人選手のプレイぶりが大きく関わってくる部分なので恐らく1人は入るであろう新外国人選手でどこまで変わるか楽しみにしたい。

 

​来季編成

 

秋田は現在自由交渉リストにカンターと伊藤と多田が公示されている。

リーグ全体でPGの確保に苦労しているということを考えれば伊藤と再契約するのも十分有りだと思うが、ワンの代わりにアジア枠でPGを獲得するのも考えられる。

ワンがどうなるかが秋田の編成で最も重要なことだと思うとともに、ワンを別のアジア人選手に変えるのが妥当と思えても秋田がワンを切らない可能性がありそうなので読めない。

日本人選手では田口と中山は絶対キープするべきであり、資金力的に確実に上位互換選手を引っ張れる保証もないだろうと考えると古川や大浦、今季は数字が悪かった川嶋あたりもキープした方がいいのではと感じる。

外国人選手では恐らくカンターはもう1年見たかったが退団であり、それも妥当と思うが、キッドとザックがどうなるか読めない。

個人的に2人とも変えてもいいとも変えなくていいとも思えるので難しい。

外国人選手全入れ替えがリスクと感じるならどちらか一方のみが入れ替えとなるはずだが、ザックはFTが不安であり、キッドはインサイドのディフェンスとシュートセレクションが心配でフォワードの選手はキッドと同ランク程度で良い選手がいくらでもいるという点でも変えが効きやすいので予想出来ない。

デイビスとブライマーの契約解除とカンターの不振に緊急代役のザックの大活躍とプラス面とマイナス面で予想外や想定外のあった秋田が今オフはどのような動きをするのか注目したい。