シーズン総評第11弾は今季のサプライズチームの1つである島根。


開幕前総評はこちら『Bリーグ21-22シーズン開幕前総評 島根スサノオマジック』Bリーグ開幕前シリーズ第11弾は群馬、名古屋と同様に個人的注目チーム3つ目の島根スサノオマジック。大型資本により着実に力を付けつつある島根は今オフの話題を攫っ…リンクameblo.jp



​チーム評


今季島根は外国人選手ではオールラウンドスコアラーのブルックスの代わりにバランサータイプのケイが加入。


日本人選手は安藤と金丸を手に入れたが、意外にも補強はこの3人のみの量より質の補強だった。


日本人選手で安藤と金丸が下がるとどうしても厳しい選手層だと思っていたが、その問題を安藤と金丸をほとんど下げない強硬的とも言える策で解決。


また金丸が怪我で離脱中にディフェンスでいい仕事を見せた白濱が計算出来る選手になったことで金丸のPTも減らしてもチーム力が落ちない結果に。


シーズン序盤で使われないのが不思議だったニカも外国人選手の怪我でチャンスを得るとPTも伸ばし島根の強力なオン3になくてはならない存在になった。


主力選手に強力な選手を集めてPTも偏らせるリスキーな戦い方をした甲斐もあって昨季より5試合少ないのにも関わらず勝ち星を12個増やし、負け星は17個減らす大幅な躍進を遂げた。


勝率も5割を超えて地区枠からプレイオフに進出するなど人数的には最小限に近い補強ながら成功した。


​個人評


・ケイ


シーズンイン直後はパフォーマンスも低調だったが、時が経つにつれ調子を上げてフル出場を何度もこなしても壊れない頑丈ぶりと長時間出てもプレイの質が落ちない鉄人ぶりで島根を支えた。


開幕前総評で上振れがあればと書いた3Pで39%の高確率を記録し、それは上振れというような一過性のものではないように思え、フリーで打てるのであれば来季も35%以上で決めてくれそうな気さえする。


相手の虚を突くようなFHOやミスマッチがあれば得意ではないポストプレイからでもフックやランニングフックを卒なく決める器用さも魅力。


FTも8割超の高確率で安心して見られ、得点以外でもリバウンドとアシスト能力も高く、TOも1未満の超効率的プレイは圧巻。


ディフェンスもペリメーター、ポストディフェンスともに上手く、特にポストディフェンスではプレシーズンゲームでアジア特有のポストアップの連続に苦戦してファウルも嵩んでいたが、最終的に平均32分のPTでファウルは平均2個のみと見事に対応してみせた。


スクリーンも上手く、献身的なプレイから±はチームトップであり島根の屋台骨だった。



・トラヴィス


昨季よりチームに良い選手が増えたにも関わらず、昨季とほぼ同じPTでスタッツのほとんどが上昇する申し分ない結果に。


昨季よりアテンプトが減ってもFG%、3P%、FTAとFT%が上がったことで平均得点も2点以上増えるなど効率面での伸びも凄まじかった。


リバウンドも平均1本以上増えており、TOは僅か0.1本しか増えていない誤差レベルの微増なので悪化した部分はないと言って差し支えない。


サイズがあるわけではないが、強靭なフィジカルと体幹、重心の低さを活かしたポストプレイやリバウンドは強烈。


ドライブからコンタクトしてスペースを作ることでノーマークに持ち込むプレイも特徴的。


トランジションで自らプッシュしてフィニッシュまで持ち込めるのも持ち味でそれらのプレイから多く貰ったFTもビッグマンとしては高確率の75%で決めてくれる。


開幕前総評に書いた打たされて低確率だった3P%も31.7%まで大きく上昇。


ただ、試投数もかなり増えたのとフリーで打つのがほとんどなので今くらい多く打つなら確率はもう少し上げたいところかもしれない。


ディフェンスでもフィジカルを使って相手のドライブやポストアップを手詰まりに追い込み、スティールも平均1本以上記録。


2季連続で怪我したことだけが明確なマイナスポイントと言えるくらいの成績だった。



・ビュフォード


トラヴィスの怪我もあり終盤はPT30分以上が当たり前でプレイにおける負担も大きかったが、昨季よりほとんどの項目でスタッツが上昇。


安藤とともに島根で長くボールを持つ役割をしており、ドリブルからドライブやシュートに入って島根の大きな得点源になっている。


アシストも上手く、PGの安藤よりも多いチーム最多平均アシストで味方の得点も演出。


ロシア時代に4番起用されていたこともあり、今季は4番起用も多かったが攻守で問題なく4番を全う。


特にフィジカルの強さでポストアタックを簡単に許さないディフェンスは見事であり、逆にオフェンスでは相手4番がビュフォードのスピードについていけずフィニッシュやFTでの加点に繋がり4番起用が完全にアドバンテージになっていた。


もちろん本来のポジションでも日本人とのマッチアップでは滅法強く、どこで起用しても問題ない使い勝手の良さは相手にとって脅威だった。


TOが昨季より増えたがPTとアテンプトの増加、ボールを長く持つプレイスタイルなどから考えたら少ないくらいかもしれない。



・ニカ


個人的にケネディとともに過小評価されていると感じる帰化選手。


前半は10分未満のPTだらけで勿体無いと感じていたが、怪我人が出たことでPTが増え始め、最終的には怪我人が戻ってきても長く使われるようになった。


ファウルの多さ、しょうもないTOやムービングスクリーンなど欠点もあるがフィニッシャーとしては優秀であり、アテンプトは少ないがダイブ中心にFG70%の高確率で効率的にプレイ出来る。


リバウンドもかなり強く、ORからもプットバックなどセカンドチャンスから得点してくる。


ディフェンスは手が出がちだが、ポストディフェンスは悪くないので帰化選手としてチームにいるなら大きな戦力であり、後半戦でそれを証明した。



・安藤


新加入の安藤は島根において日本人PG1人と言っていいようなチーム状況でPTも長い試合が多かったがシーズン通してパフォーマンスは高かった。


2PAは昨季から微増した程度だが、3PAは倍以上増えたことで平均得点を押し上げる結果になった。


3Pはオンスクリーンからも積極的に打つようになり、C&Sと合わせて昨季より確率は落ちても確率自体は高い。


速さとフィジカルを使ったドライブも強力でフィニッシュも上手く、トランジションから不意をついてそのままゴールにアタックしてくるのも脅威。


ただ、ドライブの数自体はあまり増えていないのでFTは意外にもあまり増えていない。


アシストはPT大幅増加に伴い平均2本近い伸びでTOは僅か0.3本しか増えていない。


元々TOの少ない選手であるが、平均30分以上出てボールも長く持つ選手がTO1本台というのは素晴らしく、島根の心臓となっている。



・金丸


安藤と同じく新加入の金丸は三河時代と役割が大幅に変わったのが意外だった。


PTと3PAはほとんど変わらないが、2PAが大きく減少し平均得点はキャリアワーストを記録。


3P%も高確率の4割超であるが、金丸基準では開幕以降ワースト2の確率で昨季から6%も落とした。


それに伴いFG%も下がっており、なによりFTで開幕以降初めてFT%が9割を切ってしまった。


プレイスタイルもほぼシュートのみで三河で見られた金丸のもう1つの持ち味であるカットはほとんど見られなかった。


ディフェンスが苦手な部分は変わらず、やはりドライブで来られると苦戦気味だった。


金丸基準で見ると物足りないかもしれないが、それでも数字としては十分すぎるくらい優秀であり、今まででハードルが上がりすぎてしまったのかもしれない。


個人的には数字以上に使われ方の変わり具合が驚きだった。


​チームスタッツ比較


・平均得点


平均得点は昨季78.2点でリーグ12位。


今季は86.9点でリーグ4位まで得点と順位が大きく伸びた。


ペースが落ちたにも関わらず平均得点の増加具合は凄まじく、特にメインのPGが北川から安藤になったことが平均得点上昇の1番の要因だと見ている。



・平均失点


平均失点は昨季81.8点でリーグ11位。


今季は78.3点でリーグ8位に数字と順位が上昇。


ケイの加入や新HCの効果かもしれない。



・平均得失点差


平均得失点差は昨季マイナス3.6で借金状態。


今季はプラス8.6の貯金状態まで大幅な改善が見られた。



3P


3Pは昨季平均20.9本でリーグ18位のアテンプトから30.5%で確率ワースト1位の非効率的な数字だった。


今季は平均29.2本でリーグ2位のアテンプトから34.5%で確率8位に急上昇。


確率もそうだが、アテンプトの急激な増加がチームスタイルの変化によってもたらされており、シュートの得意な選手が入ったことや既存の選手のシュート率向上によって劇的な改善に成功した。



・ペイント内FG


ペイント内FGは昨季平均34.2本でリーグ3位のアテンプトから56.8%で確率13位。


今季は平均30本でリーグ13位のアテンプトから確率62.1%でリーグ2位に。


3PAが多いためにペイント内でのアテンプトが減ったが、成功率は爆上げしており今季の島根のペイントアタックの威力が分かる。



FG


FGは昨季平均64.8本でリーグ9位のアテンプトから45.5%で確率12位。


今季は平均68.3本でリーグ2位のアテンプトから47.1%で確率8位。


アテンプトが大きく増えて確率もアップした。



FT


FTは昨季平均17.7本でリーグ10位のアテンプトから72.8%で確率14位。


今季は平均15.9本でリーグ15位のアテンプトから78.7%で確率2位。


意外にもFTAがリーグ内でも少なく、昨季からも減らしている。


トラヴィスとビュフォードでチームの約2/3を打っており、他の選手の試投数が伸びなかったのが原因だろう。



・オフェンスリバウンド


ORは昨季平均12.3本でリーグ6位。


今季も平均12.3本ながら順位はリーグ3位に上昇。



・トータルリバウンド


トータルリバウンドは昨季平均37.6本でリーグ5位。


今季は平均37.5本でリーグ7位。


外国人選手的には今季の方がリバウンドが強そうだが、意外にもFGAは増えてORのチャンスはふえてるのだがOR本数自体は昨季と同じでTRに至っては微減した。



・アシスト


アシストは昨季平均19.3本でリーグ14位。


今季は平均21.3本でリーグ6位。


良いシューターやフィニッシャーがいるだけにアシストも増えた。



・ターンオーバー


TOは昨季平均13.5個でリーグワースト3位の多さだった。


今季は平均10個でリーグ2位にまで大きく減少。


チームで平均2個以上TOをしているのがビュフォードのみで平均1個台も3人のみしかいない。


オンボール中心でプレイするのが安藤とビュフォードとトラヴィスしかいない上に安藤とトラヴィスは元々TOが少ないのでPTが長くてもチームとしてTOを抑えられた。


安藤とビュフォードのTOが島根のTOと言っても過言でないくらいであり、平均3個以上削減したのは素晴らしい。



・平均ファウル数


昨季は平均19.4個でリーグ12番目の少なさだった。


今季は平均18個でリーグ9番目に個数と順位が上昇。


PTが長い選手もファウルが多くないのは見事。



・オフェンシブレーティング


昨季は100でリーグ13位のオフェンス効率が良いとは言えなかった。


今季は112.8でリーグ2位にまで上がる凄まじいまでの改善が見られた。


新加入選手効果とPTを偏らせる戦略、PTが増えても質が落ちないプレイを出来る選手が揃ってここまで数値を上げることに成功した。



・ディフェンシブレーティング


昨季は105でリーグ12位。


今季は101.5でリーグ10位にまで上げた。


ここは日本人選手の補強次第でまだ改善の余地がありそうだ。



・課題


ここまで見てきて劇的な改善が見られた項目も多いが、FTAの少なさが1番気になった。


特に安藤はアタックできてFTも上手いので、もう少しドライブしてFTをもらいに行っても良いような気もする。



​編成


島根は現時点で後藤、小阪、金丸の退団、北川と阿部の交渉継続が発表されている。


他は全部予想通りだが、唯一金丸の契約解除のみ全く想像していなかった。


島根側が継続交渉していない状況から考えて金丸側からの複数年契約解除と見て間違いないだろう。


恐らく三河時代と全く違う役割や使われ方に不満があってのことだと思うが、今季日本人の補強は安藤と金丸だけだった島根にとっては徐々に日本人選手にも手を加えて行く算段だったはずであり、そこで数年先まで中心選手として見ていた金丸に抜けられてしまうというのは島根にも想定外であり痛手に違いない。


本来なら金丸の控えを獲得するところが金丸の代わりも必要になってくるので難しい。


金丸の想定外の退団があったので白濱、阿部、北川はなんとしてもキープしたいところだろう。


安藤は金丸以上に島根では大きな役割を担っており、金丸が抜けたなら尚更キープしなければならないだろう。


安藤側も出るようには思えないので心配はしていないが、金丸の例を見てしまうと怖い気もしてしまう。


島根の外国人選手編成に関しては変える必要性をあまり感じない。


まずケイは需要が高いと思われるが、絶対キープするべき選手であり島根も手放さないだろう。


トラヴィスとビュフォードも変える必要性は感じない良い選手だが、トラヴィスは稼働率、ビュフォードはややセルフィッシュな部分が若干のマイナス要素であり、変えるとしたらこの2人のどちらか、あるいは両方になるのではないかと見ている。


帰化選手のニカは前半のようなPTが続いてたら退団もあったかもしれないが、後半でのPTを見ていると来季も同じように使ってオン3で戦っていくのではないか。


少なくとも島根側からニカを切ることはなさそうではあるが果たして。


新興チームで結果も残した島根が想定外に遭いながらどういうチームを作るか期待して待ちたい。