垂直抗力の生ずる原因を追究し始めてからこの数年間に色々な大学の「物理学者」達に議論を持ちかけてきました。
多くの人たちは机や物体の弾性力という説明に賛同してくれました。
ただ、工学部系の人や理論物理の人の中には力ではなく境界条件と解釈すべきだとか剛体の議論だからそもそも原因を考えてはいけないという人もいました。

その中で九州大学の山岡先生のご意見は非常に一般性を持ち優れた解釈だと思いますのでご紹介したいと思います。
そもそも私の解釈では垂直抗力を起こすのは作用によって目に見えない変形が物体に生じるからで、その変形は物体を構成する原子同士の結合距離を縮めるのでそれを戻すように働く力が垂直抗力となって反作用となるというものです。張力もまた引っ張りによる原子間距離が延びることを元に戻すように働くという解釈です。どちらも弾性力と同じようだから弾性力の一種だという解釈です。

そこで、山中先生の解釈ですが
物体の構成を考えるのではなくいっきに電磁気力まで下ろしてしまうというのです。
それは別の先生が「極限的に軽い物体の場合には変形しないので、そうなれば垂直抗力は働かないことになってしまうではないか」という反論をされた時に山岡先生がなさった解釈です。
つまり、究極的に軽い物質の場合でも接触すれば電気的な反発力が必ず働くからそれによって垂直抗力が生じるはずであると。
そういう解釈であればこれまでの弾性力原因説も元々物体を構成させているのは電気力だからということでまとめても良いかもしれません。

実は私は究極の軽い物質に対しては別の意見を持っていました。それを説明します。
非常に軽い物質を机に載せた場合も作用反作用の法則は成り立つはずです。ですから垂直抗力は存在するはずです。しかし、非常に軽いので机などを変形させることは不可能です。変形しなくても机の上には載っているはずです。重力があるから必ずその軽い物体は机に載っているはずだと。だから不思議な力「垂直抗力」が働いて物体を上向きに押しているはずだという反論がでました。
それで、非常に小さい物体は実は机の上には静止できないのではないかと考えました。載っているように見えて実はその場で微小振動していると考えるわけです。つまり、物体に働く重力と完全に釣り合う力「垂直抗力」は働かなくなっていると思うのです。
すなわち不確定性原理に行きつくわけです。
不確定性原理というのは量子力学で根本原理と考えられている原理です。
つまり、位置を正確にきめると運動量が決められなくなり、運動量を正確に決めると位置が決められない、位置の不確定さと運動量の不確定さは同時にゼロにはできないがある程度は小さくできるというものです。
今の場合、位置は机の表面を指し、運動量は微小振動の速度だと思っていいです。
これは勿論原子レベルの話です。ですからここで話すのは違和感がありますが垂直抗力が弾性力でもなく、また、電気力でもなく「作用反作用の法則から解釈される不思議な力」であるという立場を変えない物理学者達の反論に応えるための議論です。

私は現実主義の物理屋なので、究極の剛体の話だから垂直抗力を弾性力とは考えてはいけないとか、非常に小さい物体についても作用反作用は成り立ちはずだから弾性力と考えてはいけないとか言う立場はおかしいと思うのです。実際には変形があったり電気的な反発力があったりするわけです。それによって垂直抗力があると生徒たちに説明するのがなぜいけないことなのでしょうか。

現実的な説明で生徒たちの理解が深まり、色々な問題を回答する上で役に立つならそう説明してあげた方が良いと思うのです。