読み終えて、まず思ったのは、朝井リョウという作家は、時代の空気をつかまえるのが異様にうまいということである。『桐島、部活やめるってよ』は、作品名そのものが、いつの間にか一つの現象を説明する言葉のようになった。ある状況を説明するときに、「桐島」的だ、と言えるくらい、作品が社会を見るための補助線になっていた。これは本当にすごいことである。そして『イン・ザ・メガチャーチ』もまた、同じように、これから何かを説明するときの代名詞になっていく作品なのではないかと思った。本作で描かれているのは、アイドル、推し活、ファンダム、物語、熱狂、そしてそこに救われたり、利用されたり、加担したりする人たちである。けれど、これは単なる「推し活小説」ではない。むしろ、現代の人間がなぜ何かにのめり込まずにはいられないのか、なぜ誰かの物語を信じたくなるのか、そしてその熱狂がどこまで人を救い、どこから人を壊していくのかを描いた小説だ。怖かったのは、登場人物たちの行動を完全には笑えないところ。読んでいて何度か嫌な汗をかいた。特に印象に残ったのは、47歳の中年男性の描かれ方である。正直、47歳の男って、こんなに枯れていて、こんなに病んでもいるものなのか、と驚いた。何かをやり直すには遅いようで、でもまだ完全に終わったとも言い切れない。その中途半端な年齢のしんどさが、妙に生々しく描かれていて、なんだか読んでるだけのこっちまでしんどくなった。やっぱり朝井リョウはすごい。
