夢を見ました。

 私が居たのは、どっかの被災地の体育館のようなところで、床に敷かれた座布団に座っていました。

 周囲はざわざわしていまして、季節は分からなかったですが、寒いとかひもじいとかの感覚はありませんでした。

 そこへなぜか警視庁の刑事と名乗る、一人の男性が訪ねてきました。なんか、刑事と言うには随分若い印象でした。

 その彼がこういうのです。

 「コンさん、あなた、今回制作されたスピーカーがとても上出来だったと言われているようですが、それが、上出来だった理由というか、それを上出来にさせた要素と言うか、その辺のところ、聞かして頂きたいと思いましてね、こうして伺っております」

 えっ?何でそれを刑事に?って当然、思いましたが、どうせ夢なんだし、(夢の中で、夢なんだしって思う事ないですか?)相手がまじめな顔してるので追及はやめました。

 「上出来だったって事はですね・・・」

 「あ、その前に一つ、刑事さん、あなたに申し上げておきますが、上出来だったという事は、その音が良い音だったという事なんですが、その辺はおわかりですよね?」

 「ええ、ええ、分かってますよ」

 「じゃ、ですね、良い音ってのは、一言で言ってどういう音だと思われますか?刑事さん?」

 「そりゃあ、それがあなたにとって気持ちのいい音だったって事でしょうかね?」

 「すげえな、刑事さん、やっぱ頭がいいんですね。まさに、そういう事なんで、そりゃあ、つまり、その音が機械の測定器にかけて、低音から高音までフラットに出したっとか、ひずみ無く原音を忠実に再現したっとか、そういうんじゃなくて、私固有の脳味噌にかちっと嵌って感情を大いにインスパイアしたって事なんですよ」

 「なるほど、そうでしょうね」

 「ですがね、勘違いしちゃいけませんよ、私は別に感情で音を聴いてるわけじゃありません。感情で聴くのはコンサートで聴く音楽ですよ、その時の音楽です。その時の音楽は💛=感情で聴いてます。だけど、うちでスピーカーで聴くときは💛じゃありませんよ。この時は「マインド」です。そりゃあ、感覚なんですよ、感情じゃない。測定器じゃないけど、感覚で測ってるって事なんですよ。分かります?」

 「うーん、難しい」

 「でしょう?難しいでしょう?これはね、難しいんですよ、音がね、こう、自分の脳味噌にどうあたってくるかって事なんですよ。だから難しい。昔の真空管にねWE(ウエスタンエレクトリック)の300Bというのがあった。これが、音が良いので有名な奴ですが、測定器で測るってえと。意外と歪んでるっていうんですよ。まあ、勿論歪み方ってものがあるんですがね。第何次高調波で歪んでるとかね・・・。でもまあ、そこからも明らかなのは音ってのは脳が聴いてるんだって事です。」

 「なるほどね」

 「ね?だから、ここは猫なでるのと同じなんですよ。猫によって色々こう、ツボがあるんでしょう?それと同じなんで、音がこう、自分の脳を、こちょこちょとやってるわけで、そこがどう、ツボに嵌るかって事なんですよ。だから、ここは感情=💛じゃなくって、感覚による測定なんですよ、はーとじゃなくってマインドだっていうんです。」

 刑事さん、納得いって帰られました。

 多分、彼の聞きたかった内容とはずれちゃってましたけど・・・。

 音が良かった要因はうまい具合に箱をつくったって事が一番かな?いや、音響に一番は考えにくいんです。どれか一つ欠けても成り立たないのが音響の世界なので・・・。そこを承知であえて言うなら、箱が上手くいったって事です。容積の大きさ、箱鳴りの程度(あまりがしっとは造ってない)吸音材の量・・・そんなのがかみ合った。そこへアンプやプレイヤーの性能が良かったって事が重なったわけです。彼がまた来たら、今度はその話をします。