カギカギカギカギ

 

・「悪の教典」はまあさておいて、グロも無しに読めるこちらの貴志作品。この防犯探偵シリーズは面白いな。榎本径クンの胡散臭さがよい味付けになっていると思う。よくもまあこんなトリックが思いつくものだと驚嘆するシリーズ3作目です。気づいたら文庫になってたので買いました。

 

 

 

・やっぱり表題の「鍵のかかった部屋」が白眉でしょうか。ボクは化学教師の息子なんですが、理科系のことに全く弱くて(何せ高校時代に親の作ったテストで赤点を取ったぐらいだ)もう筋金入りの文系人間なので、こういう話やガリレオシリーズなんて読むと、感心して目からウロコが音を立てて落ちるってぐらいです(笑)。

 

 

 

 

・そしてドラマなんですが見逃したと思ったら今週から再放送してます。見てます。笑わない大野クンは相変わらず良い。佐藤浩市の絶妙な間合いは素晴らしい。戸田恵梨香は髪を後ろでまとめると戸田恵梨香?って感じだ。原作を再現して丁寧に作られてますね。堪能してまっす。

 

 

 

 
鍵のかかった部屋 (角川文庫)/角川書店(角川グループパブリッシング)
¥700
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合格合格合格合格

 

・冲方丁氏の「光圀伝」を読みながらつと「そういえば山本周五郎も光圀の話を書いていたな」と思い出し、書棚から引っ張り出してきた本作。光圀に仕官を断られた浪人が庭先で腹を切るところから物語は始まります。別に声高に言うつもりはないんですけど、泣けたぜ・・。

 

 

 

・ボクは山本周五郎が大好きで、大学では氏を題材に卒論も書いたし、書棚に全巻並べているし、あげくにウチの息子の名前の由来にもしている。アラフォーの方は知ってるかな、中学時代の国語の教科書に「鼓くらべ」という話があったのが氏の作品との出会い。ちなみに家庭教師をしていた頃の教科書は「内蔵允留守」でした。アラサーさんはこっちを知ってるかも。

 

 

 

 

・表題作は黒澤明氏の名高き映画「椿三十郎」の原作ですね。織田裕二もリメイクしてコケたあの作品です。また「橋の下」という、果たし合いの前に橋の下の乞食夫婦と話をする若侍の話は傑作と思います。山本周五郎を語らせると歯止めが効きませんので、この辺で失礼します(笑)。

 

 

 

 
 
日日平安 (新潮文庫)/新潮社
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馬馬馬馬馬

 

・やっと読み終えました750ページ。結論から言って2000円は安いです。彼の人の一生を一冊に綴じた本作は、僕的には「日本人必携の書」と呼んでも差し支えないのではないかという存念でござる。一週間この本に付き合ってきましたので口調まで武家風だ。で、僕がこの本を買ったのかって?図書館で借りました(笑)。

 

 

 

・僕の予備知識は「日本全国を漫遊はしてない」「意外とデカかったらしい」「しかも怪力」「綱吉に犬の毛皮を贈った」「ラーメンを食べた」アタリなんですが、眉目秀麗、知勇兼備の副将軍だったんだ。徳川の世も生き生きと描かれており、これは早晩大河ドラマにもなるんじゃないかと思いました。いいと思いますよ、保科正之の親父の鬼嫁を描くよりはよっぽど(笑)。

 

 

 

 

・保科正之でピンときたと思いますが「天地明察」ともきちんとLinkしています。安井春哲がそうであるように、光圀の人生に華を添える脇役が瑞々しく魅力的に描かれているのも好意的な点であり、その邂逅ってやつが本作の軸になっています。冲方丁サンはいい仕事してますね~。

 

 

 

 

 
 
光圀伝/角川書店(角川グループパブリッシング)
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温泉温泉温泉温泉

 

・直木賞受賞作・隠蔽捜査シリーズの番外編。「3.5」なんつう命名をしてるアタリが遊び心だと思いますが、主人公・竜崎チャマの造形は期待を裏切ることなく安定して読ませてくれます。駆け出しの頃の竜崎と伊丹か。なかなかうまい所に目をつけたスピンオフだ。

 

 

 

「基本問題は解く、応用問題は解かない」というのがボクの社会人としての心構えでもあるんですが、そこが竜崎チャマの唱える「合理性」と通じるトコロがあって嬉しいと思う。そううまくはいかないことも多いんですけど、本作はある意味ファンタジーとして楽しめました。

 

 

 

 

・ボクのもう一つの心構えは「知っていても知らないふりをする」なんですが、これは主にPC関係。下手に首を突っ込むと質問攻めに遭うからです。で、どこの職場の先輩方も必ず「何もやってないのに変なことになった」とヘルプしてきますが、「何かやったに決まってるだろバカ」とその都度心で叫んでます(笑)。

 

 

 

 
 
初陣 隠蔽捜査〈3.5〉/新潮社
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クマクマクマクマ

・先日ですね、仕事帰りの夜の山道でクマの飛び出し遭いました。クマですよクマ。プーさんじゃなくて本物のツキノワグマ。思いっきり目が合って「わ~月の輪ってホントに月の形だあ」と感動してしまいました。コレで今シーズンは熊と狐と狸と栗鼠と蛇の飛び出しに遭いました。僻地教育に携わるってスリル満点だぜ・・。



・何でそんな前フリをするのかというと、それよりあり得ない「タイヤが飛び出すってどうよ」というこじつけなワケですね。やっと読みました。ありし日のあの事件を想起させてほとんどノンフィクション状態でお話は進みます。「隠蔽」という言葉を知ったのは実際あの事件じゃなかったかな。



・池井戸氏の作品は「経済小説」と称されることがあるのですけれど、何か敷居が高い感じですよね。でも氏の作るお話は基本的に人間賛歌(どっかで聞いたフレーズだな)ですんで、とっても読みやすくて心地良い読後感を得られるモノが多いです。頑張れマイノリティー。



空飛ぶタイヤ/実業之日本社
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メラメラメラメラメラメラメラメラ

・刑務所に火の手が迫り、収監の義務を果たせなくなってしまった土壇場に一時的に受刑者を解放してしまうという設定。本作の語り部となる重罪人三人の運命は、三人共に戻れば無罪で一人でも欠ければ皆死罪。さて・・あまり聞かない状況だけにオチも読めませんでしたが・・。



・これ江戸から明治の幕が開く時代の話ですので、「刑務所」は「小伝馬町牢屋敷」ですね。この牢屋敷ったら今の東京から考えたら信じ難いほど「中心部」にあるんっすね~。古地図を見ながら本を読む。本を読んで街を歩く。仮想「ブラタモリ」気分を味わいました。



・浅田氏の慧眼だと思うし「壬生義士伝」なんかもそうだったけど、この江戸から明治への転換期に光を当てて市井の息遣いを匂わせる作品に仕上げるというアタリは見事という他はないですね。生き残った人間の後日譚という切り口も「壬生」と同じです。


赤猫異聞/新潮社
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ネコネコネコ

・伊坂氏の話も色々あって、ボクは陽気なギャングのようなチルドレンのような、会話の洒脱さだけで進行しちゃうような軽めな話が好きなんだけど、この作品はどちらかというと重めでユーモアには乏しい。方向としては「オーデュボ゚ン」かな。氏のファンタジーは咀嚼するのに時間がかかって・・。



・それでもなお伊坂ワールドを堪能するには十分です。目の前の事象は実は鳥瞰するとまったく違ったものになるという・・うまく言えないけど表裏一体とか二面性をうまく描いている作品だと思います。伊坂氏ももう少し執筆のペースが上がってくれるとうれしいな。贅沢な悩みかな。



・立派に寓話でありきちんと現代社会へのアンチテーゼが盛り込まれている感じですね。それはあの国の人達があの島を自分達の物だと主張するカラクリに似てるけど、そうは言ってもボク達がまやかしを見ていないという保証もないんだよな。そんな大事なことを教えてくれる作品でもあったと思う。



夜の国のクーパー/東京創元社
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電車電車電車

 

「鉄子」の話です。もう少し字数を使うと、ある人物の行方を捜すために「鉄道旅同好会」に身を投じた女子大生のミステリー風紀行小説です。全国津々浦々を鉄道旅しながら次第に「テツ」の魅力に目覚めていく女の子の成長譚で、そのうち人捜しがどうでもよくなってしまったという身も蓋もないお話です(苦笑)。

 

 

 

・ボクはテツにはかなり好意的で、鉄道車体の美しさも、駅の喧噪や侘びしさも、レールの継ぎ目を拾う情緒も、時刻表の奥深さも、そして一期一会の旅情も、おそらく深く斟酌できる人間だと思うので、この主人公・香澄チャンはいっそのこと大学も留年して末永く鉄旅を続けて欲しいと思う。そしてウチの近所にもおいでと言いたい。

 

 

 

 

・しかしそもそもこれはミステリーではなかったのか?彼は一体どこに行ってしまったのだ?何の解答も無いまま、著者のよく分からんあとがきでこの作品は強制終了となります。続編があるそうなのでおそらく回収はされるのでしょうが、そんな不可解な発刊のあり方が角川書店のミステリーだぜ・・。

 

 

 

 

 
夢より短い旅の果て/角川書店(角川グループパブリッシング)
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足あと足あと足あと足あと

 

・「さよならドビュッシー」の見事な収束から鑑みて「手に取っていい作家さん」という評価をしているボクですが、さっきwikiってみたら中山七里サンって男性だったんですね。知らなかった。てっきり女性の筆によるものと勘違いして読んだ本作が3作目。なかなかのミステリーでしたよ。

 

 

 

・いやいやいやいやホラーだなこれは。怖ろしさに背筋が凍りましたぜ。さながらヒッチコックの世界ですが、この世界に足を突っ込んで生きて帰る自信は俺様には無いと断じて言える(笑)。猟奇殺人の犯人がアレなら、もうそれは「ターミネーター」と呼んで差し支えないでしょう。

 

 

 

 

・「製薬会社跡地」ってアタリからもう相当怪しいのに、のこのこ出かけていくあの男女に「頼むから引き返せ!」と叫んだ読者も多かったことでしょう。出かけていくならトニー・スタークに頼んでアイアンマンのスーツを着るしかないのではないか(笑)。ついでに言うとエピローグもヘッタクレも無い救いのない読後感も何とかしたいものですが。

 

 

 

 
 
魔女は甦る/幻冬舎
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晴れ晴れ晴れ晴れ

 

・題名である8個の漢字の羅列に感動的なほど内容が容易に予想できる作品です。そして予想通りに話は進んでハッピーエンドに終わる痛快な物語。何のヒネリもなく「村おこし」の奇跡を描いたところがかえって文芸としてウケたんじゃないかなあ。でもそれで良かったと思う。

 

 

 

・そもそも「限界集落」という用語のおぞましさは何なんだろうって思うんですが、その延長としてある「廃村」というのは本当に悲しい出来事だと思う。そしてそれを回避する術は無きに等しいということも現実としてある。本作はファンタジーとして読むしかないけど、でもどっかこういうことやらないかな?

 

 

 

 

・「集落そのものを会社にして富を分配し合う」という考え方は面白かったです。現実はうまくいかないでしょう。それは外的な要因というより、「一枚岩」にはなり切れない足の引っ張り合いという内的要因が不可避だからです。だから「ムラ社会」という造語ができるワケで・・。

 

 

 

 

 
 
限界集落株式会社/小学館
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