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選挙を前に

明日は投票日ですね。
以下、共同通信で書かせて頂いた「解散・総選挙」についての記事です。
読んで頂けると嬉しいです。



 安倍晋三首相が、「女性の活躍」という看板政策を投げ打ってまで解散した。
 解散については批判の声が多く上がっているが、「国民の信」が問われるということは、私たちがこの2年間の安倍政権への審判を下す時が来たということだ。
 現在、増税や景気の問題ばかりが注目されているが、ここで安倍政権がこの2年間にしてきたことを振り返りたい。

 まず思い出すのは、廃案を求める人々の声をまったく無視する形で特定秘密保護法を可決、成立させたこと。そして同じように反対世論が渦巻く中、集団的自衛権の行使容認を閣議決定。一方で武器輸出も可能にし、川内原発への再稼働へ動いた。これらのうちひとつでも、私たちの「信」など問われたことがあるだろうか?

 実現してはいないが、やろうとしていたことは、残業代をゼロにし、カジノを作り、また「生涯不安定雇用」が増えると懸念される派遣法の「改正」である。
 これらから見えるのは、「命よりお金」という徹底したスタンスだ。

 解散にあたって、「アベノミクスの失敗」なども指摘されているが、そもそも庶民のほとんどはアベノミクスの恩恵など一滴たりとも受けてはいない。何しろ実質賃金は下がり続け、貯蓄ゼロ世帯は3割超と過去最悪。有効求人倍率が22年ぶりの水準と言っても、内実を見ると求人の中心は非正規だ。安倍政権発足当時から、正社員は31万人減り、非正社員は129万人増えている(労働力調査 2014年7~9月期平均)。

 また、安倍政権が最初にしたこととして忘れたくないのは生活保護費の引き下げだ。「自分には関係ない」と思っている人たちにも、この「最後のセーフティネットの引き下げ」は大きな影響を与えた。例えば、就学援助。経済的に厳しく、学用品代や給食費を工面できない家庭に支給されるものだが、自治体によって「生活保護基準の1・2倍未満の所得」などと生活保護が基準とされているため、引き下げによって就学援助を受けられなくなった子どもたちが続出している。昨年、「子どもの貧困対策法」が成立したものの、もっとも貧しい子どもたちの未来が閉ざされるような事態が進行しているのだ。

 弱者を切り捨てるような政策を打ち出してきた安倍政権だが、一番問題だと思うのは、「当事者の意見を一切聞かない」という点だ。生活保護引き下げも、派遣法も、原発の再稼働にしても、政権は一度でも真摯に当事者の声に耳を澄ましたことがあるだろうか?

 第一次安倍政権の発足から、8年。当時「若者の再チャレンジ」と強調してきた安倍首相は自らだけが再チャレンジに成功した。その8年の間に当時の若者は既に中年となり、その間ずっと年収200万以下の生活に喘いでいる。この8年で流行った言葉はワーキングプア、ネットカフェ難民、無縁社会、老後破産といったものだ。自己責任論が徹底された結果、この国はあまりにも生きづらくなった。

 最後に、思い出してほしいことがある。2年前の選挙で、自民党は秘密保護法について何ひとつ言及せず、集団的自衛権の行使容認についてもマトモに問わず、TPPに至っては「断固反対」だったということだ。
 そんな人たちが「信を問う」という。実に面白い話だ。