5月末日、名古屋市博物館で開催されていた「いつだって猫展」に行ってきました。この展覧会は6月7日で終了しているので、今回は備忘録として記事にまとめておこうと思います。

江戸時代後期に巻き起こった「猫ブーム」を浮世絵などを通して紹介する展覧会。展示作品は204点。浮世絵の他にも「丸〆猫」(今戸焼の人形で最古の招き猫と言われている)、招き猫の土人形、江戸から明治時代にかけて流行した「おもちゃ絵」などが展示された。
以下は作品リスト順に代表的な浮世絵をいくつか挙げておく。

『名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣』 1857年
(めいしょえどひゃっけい あさくさたんぼとりのまちもうで)
歌川広重作
歌川広重の「名所江戸百景」シリーズの一枚。浅草田甫は吉原で働く女性の控室があった場所で、外の景色からこの部屋は遊郭の二階であったと考えられる。この画像では不鮮明だが、鷲大明神社(おおとりだいみょうじんじゃ)へお参りする人の行列が描かれており、それを猫が格子窓から眺めているという情景である。
近景には「浅草吉原田圃」と呼ばれる水田地帯が、遠景には黄昏時の富士山が描かれている。記憶している限りでは、メインとなるような人物の姿がなく、日常的な風景の中に猫が一匹だけ描かれているという絵はこれだけだった。そのせいか一番印象に残っている作品。

『荷宝蔵壁のむだ書』 1848年
(にたからぐらかべのむだがき)
歌川国芳作
「荷宝蔵」と呼ばれる土蔵の外壁に、誰かが釘で引っかいて描いたような歌舞伎役者の落書きをモチーフとした異色作。「腰壁」と呼ばれる壁の下半分の板張り部分が黄色い「黄腰壁」版が3枚、黒い「黒腰壁」版が2枚確認されている。この作品は「黄腰壁」版の中央にあるもので、手ぬぐいをかぶって踊る猫の姿が描かれている。
真ん中で体をくねらせている猫は尻尾が二股に分かれている事から化け猫だと考えられている。これは化け猫が登場する歌舞伎の一場面を模したものだという説があり、例えば「梅初春五十三駅」(うめのはるごじゅうさんつぎ)や「尾上梅寿一代噺」(おのえきくごろういちだいばなし)などでは尻尾が二股に分かれた猫の踊る姿を確認できる。猫を取り囲むように描かれた似顔絵は歌舞伎役者の松本幸四郎、市村羽左衛門、中村歌右衛門など。

『曲亭翁精著八犬士随一 犬村大角』 1838年
(きょくていおうせいちょはっけんしずいいち いぬむらだいかく)
歌川国芳作
南総里見八犬伝の八犬士の一人・犬村大角が父親になりすましていた化け猫を退治している場面描いた作品。この化け猫を倒した後、犬村大角は八犬士の群れに加わる。大角は八犬士中、最後に登場する犬士で、古今の書物に精通している。相手の上を取って刀を突き付ける姿は他の浮世絵にもしばしば見られる構図。

『愛妾胡蝶 侍女於古テ 成嶋大領』 1853年
(あいしょうこちょう じじょおこて なるしまだいりょう)
歌川国貞作
『花埜嵯峨猫魔稿(はなのさがねこまたぞうし)』という歌舞伎狂言の演目を題材とした役者絵。『花埜嵯峨猫魔稿』とは「鍋島の化け猫騒動」を元にした芝居で、いくつかある猫騒動(有馬の猫騒動、岡崎の猫騒動など)の中で最も有名な怪談の一つとして知られている。鍋島の化け猫騒動は佐賀藩の2代藩主・鍋島光茂の時代、飼い主を殺された黒猫の「こま」が化け猫となって敵を討とうとする物語。
この作品は三枚に分かれており、右から『愛妾胡蝶』、『侍女於古テ』、『成嶋大領』と題名が付けられている。題名の読み方を一通り調べてみたが、正式な読み方がわからなかった。なので上記の読み仮名はあくまで個人的な推測。
後編へつづく