前回の記事「いつだって猫展・前編」の続き。備忘録としていくつかの作品と展覧会の写真を載せておく。

『流行猫の曲鞠』 1841年
(はやりねこのきょくまり)
歌川国芳作
天保12年(1841年)から翌年にかけ、江戸では歌川国芳を中心に猫を題材にした戯画(役者の顔を猫に見立てたり、猫が擬人化されたりした絵)が多く描かれ大流行した。この作品は当時浅草で一世を風靡した上方の曲鞠の名人・菊川国丸の姿を猫に置き換えて描いている。曲鞠とは鞠を用いた曲芸で、今で言うとサッカーのリフティングのようなもの。また、着物の図柄は小判や鈴、イカ、肉球など、猫に因んだものがデザインされていて遊び心がある。
描かれている曲鞠の技にはそれぞれ名前がついている。たびぬぎ、ひざまり、高まり、たばこのみ、瀧ながし(立てた膝の上で鞠を転がす)、平た蝶(うつ伏せになった背中の上で鞠を転がす)、たすきがけ(腕から首の後ろに鞠を転がす)、下りふぢ(木にぶら下がりながら蹴鞠)、負まり(背負うように肩に鞠を乗せる)、花生(花をいけながら鞠を操る)の10ポーズである。

『絵鏡台合かゝ身 猫』 1842年頃
(えきょうだいあわせかがみ ねこ)
歌川国芳作
団扇絵二枚組のうちの一枚。団扇絵シリーズの中で最も有名な「猫、しゝ・みゝづく・はんにやあめん」という作品。本来は表と裏の2枚セットで販売されており、裏の図柄は表に描かれた図柄を影絵にしたものである。題名にある「絵鏡台(えきょうだい)」という言葉は、表と裏にある図柄の関係がまるで「兄弟(きょうだい)」であることを暗に意味している。
計6匹の猫たちが作り出す影絵は「獅子、みみずく、般若面」を表している。「はんにゃ」と言うべき所を「はんにやあ」と、猫の鳴き声のようにアレンジしていてウイットに富んでいる。当時「みみずく」は「疱瘡(ほうそう=天然痘)」除けのまじないとして流行っていた。

『五拾三次之内猫之怪』 1847年
(ごじゅうさんつぎのうちねこのかい)
歌川芳藤作
歌舞伎『尾上梅寿一代噺(おのえきくごろういちだいばなし)』の中に登場する化け猫をモチーフとした大判錦絵。このように小さな絵を組み合わせて全く違う絵を組み上げたものを「はめ絵」と呼ぶ。タイトルにある「五拾三次」とは『独道中五十三駅(ひとりたびごじゅうさんつぎ)』の事。『尾上梅寿一代噺』はこの作品のスピンオフである。
1847年7月より市村座で上演されたこの歌舞伎舞台では、簾を破って巨大な顔の猫が登場する場面が大評判となり、そこから着想を得て『五拾三次之内猫之怪』が描かれた。大小の猫、計9匹が化け猫の顔を作っており、目は鈴、口の中から見える赤い舌は猫の首紐で表されている。

『大なまづねこのたハむれ』 明治 未詳
明治期に描かれた「おもちゃ絵」の作品。ここで言う「おもちゃ絵」とは子供が玩具として遊んだり、絵本として観賞したりするために描かれた浮世絵版画(錦絵)の事を指し、江戸時代から明治時代にかけて制作された。他には絵本や図鑑、切り抜いて遊ぶメンコなどの玩具、ゲームといったものがあげられる。
絵の中には猫たちの台詞が細かく書かれており、絵本のように読んで楽しむ事が出来る。制作年・作者共に不明のため、この絵についての詳細はわからない。展覧会ではこういった絵の他に切り抜いて遊べる着せ替え猫や、猫と鼠の駒で遊ぶボードゲームも展示されていた。

最後に展覧会の様子を少し。出口付近のスペースにあった猫たちの写真。今も昔も猫がたくさんの人に愛されている事がよくわかる。ここには展示作品の中で気に入った猫に投票する人気投票イベントもあって楽しかった。


博物館の庭園にも浮世絵から飛び出した猫がディスプレイされていた。猫グッズもたくさん販売されていたし、遊び心があって猫好きには堪らない展覧会だった。夏には「魔女の秘密展」という展覧会が開催される。こちらも面白そうなのでぜひ訪れたいと思う。