前回の記事に引き続き「パリジェンヌ展」の中編です。
 
 
イメージ 1
 
 
『ヴィンチェスラヴァ・バーチェスカ、ユニヤヴィッチ夫人』 1860年

フランツ・クサーヴァー・ヴィンターハルター(Franz Xaver Winterhalter)作
 
 
 パリを拠点にヨーロッパ中の貴族の肖像画を描いたドイツの画家・ヴィンターハルター。展覧会でこの名前を見た時、何か見覚えがあるなと思ったのですが、後で思い返してみれば「大エルミタージュ美術館展」で見た『女帝マリア・アレクサンドロヴナの肖像』と同じ作者でした。彼女の美しさにはっとした時と同じような印象をこの作品にも感じました。
 
 ユニヤヴィッチ夫人はポーランドの貴婦人らしいのですが、詳しい事はよくわかりません。この肖像画はほぼ等身大で描かれていて、髪を下ろしたくつろいだ様子からプライベートなものである事がわかります。白いたっぷりとしたドレスにクッションの赤とウエストのリボンの青が鮮明でとても華麗な作品です。
 
 
イメージ 2
 
 
『海岸の着飾った人々』 1865年

ウジェーヌ・ルイ・ブーダン(Eugene-Louis Boudin)作
 
 
 ブーダンは「外光派(自然の光を描写するために戸外で絵を制作する事)」の一人として印象派(かの有名なモネもその一人)に影響を与えたフランスの画家です。「空の王者」とも呼ばれており、この一枚も画面の多くを空が占めています。ブーダンは風景の中に人物群像をおいた作品を他にもいくつか描いています。
 
 小さくではありますが、人物の全体像が描かれているので、当時のファッションがどんなものだったのかがよくわかります。この絵では白地に赤や青のアクセントがあるドレスが目立っています。当時は海水浴に来るというより、社交場の一つとして海の風景や夏の雰囲気を楽しんだのかもしれませんね。
 
 
イメージ 3
 
 
『チャールズ・E. インチズ夫人(ルイーズ・ポメロイ)』 1887年

ジョン・シンガー・サージェント(John Singer Sargent)作
 
 
 今回の展覧会で私が一番見たかった作品です。アメリカ人画家のサージェントはフランスで美術教育を受け、主にロンドンとパリで活動していました。社交界の人々を描いた肖像画家として広く知られており、『マダムX』という肖像画をパリのサロンに出品した際、その作品によってスキャンダルに巻き込まれてしまったというエピソードがあります。
 
 この作品のモデルであるインチズ夫人はボストンの女性で、海を越えて伝わったパリの流行のドレス姿で描かれています。保守的な土地柄だったボストンでは、流行のものを身につけるのは品がないという考えがあり、当時の富裕層はわざわざパリの最新の衣装を手に入れながら、二年間ほど寝かせて着る事もあったそうです。
 
 
イメージ 4
 
 
『マルグリット』 1870年

ウィリアム・モリス・ハント(William Morris Hunt)作
 
 
 ハントはサージェントと同じくアメリカの画家です。両親が裕福で、ハントはハーバード大学に通っていましたが、3年生の時に退学しています。父親がコレラで亡くなった後、家族でヨーロッパに移りました。その時に訪れたフランスでトマ・クチュールに学び、バルビゾン派のジャン=フランソワ・ミレーに影響を受けました。
 
 タイトルの『マルグリット』はフランス語で「ヒナギク」という意味で、モデルの少女が手にしている帽子にその花が飾られています。少女の表情はうつむいていてよくわかりませんが、編み込んで二つにしたおさげ髪、ドレスについた大きな赤いリボンが際立っていて、幼いパリジェンヌの可愛らしさがよく表れています。
 
 
後編へつづく