前編中編と続いてきた「パリジェンヌ展」最後の記事です。
 
 
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『器の中の白い花』 1885年

ベルト・モリゾ(Berthe Morisot)作
 
 
 ベルト・モリゾは印象派を代表する女性画家で、マネの絵のモデルになった女性としても有名です。マネとは家族同士で交流があり、モリゾはマネの弟と結婚しました。男性社会でまだ女性芸術家がそれほど認められていなかった時代に活躍し、パリジェンヌでもあったモリゾが描いた静物画がこの作品です。
 
 当時は女性が一人で自由に出かける事もままならなかったので、女性画家が描くテーマは静物画や母子像などがふさわしいと考えられていました。モリゾの代表作にも『ゆりかご』というタイトルの母子像があります。夫婦仲が良く、夫や娘を描いた作品を多く残していますが、静物画の方はあまり描いていないようです。
 
 
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『街の歌い手』 1862年頃

エドゥアール・マネ(Edouard Manet)作
 
 
 70年ぶりの大規模修復後の初めて公開で注目されているこの作品。居酒屋からギターを持った女性が出てきたところが描かれています。修復前、女性は薄汚れた灰色の服を着ていると思われていましたが、実際は上着の色はブルーグレーで、スカートは薄っすらストライプ柄だったという事がわかりました。
 
 モデルを務めたヴィクトリーヌ・ムーランはマネの他の作品でも描かれていて、他の画家たちの作品でもその姿を見る事が出来ます。マネと言えばスキャンダラスな作品(『草上の昼食』、『オランピア』)で有名ですが、印象派の草分けにして、西洋近代絵画の冒頭を飾った偉大な画家です。当時の輝きを取り戻した『街の歌い手』は一見の価値ありです。
 
 
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「スコットランドシルクのベスト、ねずみ色の綿の厚手クレープのスカート」 1914年
『ジュルナル・デ・ダム・エ・デ・モード』より、プレート170

ゲアダ・ヴィーイナ(Gerda Wegener)作
 
 
 このイラストは「ファッション・プレート(流行のドレスや髪形が描かれた版画)」と呼ばれるもので、パリで創刊されたモード誌『ジュルナル・デ・ダム・エ・デ・モード』の中の一枚です。19世紀のパリでは印刷技術の発展に伴い、ファッション雑誌等が次々と刊行され、流行がヨーロッパ各地に広まるようになりました。
 
 作者のゲアダ・ヴィーイナはデンマーク出身の女性画家で、世界初の性別適合手術を受けたとされるリリー・エルベ(アイナ・ヴィーイナ)の妻だったことでも知られています。少し前に話題になった『リリーのすべて』という映画のモデルとなった人物です。リリーはゲアダにとってお気に入りのモデルでもありました。
 
※「Gerda Wegener」の読み方が色々あってどれが正解かわからなかったのですが、ここでは展覧会の作品リストにあったものを表記しました。
 
 
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『バルテ、パリ』 1955年

レギーナ・レラング(Regina Relang)作
 
 
 最後は20世紀半ばにレギーナ・レラングが写したパリジェンヌの一枚です。レギーナはドイツ出身の女性ファッションフォトグラファーで、元々はシュトゥットガルトやベルリンで絵画を学んでいたそうです。後に写真家だった妹から影響を受けて独学で写真を学び、ファッション雑誌や広告などの写真を撮って活躍しました。
 
 帽子に手袋、両手で日傘を持ってこちらを見つめる女性は何ともキュートでファッショナブルです。目尻を跳ね上げたアイラインの入れ方は、現代の「ネコ目メイク」に通じるものがありますね。今回の展覧会ではパリジェンヌを写した写真がとても素敵でした。モデルや女優だけでなく、女性達の日常風景を写したものも興味深かったです。
 
 
 この記事では取り上げませんでしたが、他にもピカソの油絵やピエール・カルダンのドレスなど、興味深いものがいくつかありました。私自身はパリジェンヌへの憧れはそれほどなかったのですが、昔からファッショナブルで素敵だったんだなぁと思いました。
 
 そして、名古屋ボストン美術館はアメリカのボストン美術館との契約が切れるため、2018年度末までに閉鎖される事が決定しています。今まで何度か企画展を見に訪れたので少し寂しい気がします。ゴーギャンの『われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか』を見た時の事は今でもよく覚えています。
 
 何はともあれ、「パリジェンヌ展 時代を映す女性たち」は名古屋ボストン美術館で2017年10月15日まで開催されています。興味を持たれた方はぜひ足を運んでみてください^^