☆第35話 追い詰められて《3.みんなのお陰》 | あまめま*じゅんのスパンキング・ブログ                        

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第1弾 『海の中のアタシ・空の中のアイツ』
双子の海と空のハラハラ・ドキドキの物語♪
第2弾 『星と月美のいい関係』
星と家庭教師の月美&トレーニングの日々!

    愛情たっぷりのおしおき満載(*'▽')

3.みんなのお陰

 

星のおしおきを終えると、まだ星がこの場にいるというのに、

「次、月美さんの番ですね。」

眞木野はニコリともせずに真剣な表情で、月美の方に顔を向けた。

「えっ・・・」

「さあ、こっちに来てください。」

「でも・・・」

 

眞木野は月美と星の顔をわざとらしく交互に見て、まるで2人の動揺する様子を楽しんでいるかのように少し間をとってから、

「星、あっち行って南にケツ冷やしてもらえ。」

星はコクンとうなずくと、慌てて部屋から出て行った。

 

月美もホッとして、

「眞木野さんの意地悪・・・。」

とつぶやくと、

「月美さん、すみませんでしたね。星にちょっとお灸をすえてやりたかったので。あいつ、こうでもしないとスイッチ入らないですからね。まあ、スイッチがあればの話ですが。」

 

おしおき中の怖いオーラ全開の眞木野ではなく、穏やかな人格に変わっていて、月美は眞木野がいい人か悪い人か分からなくなった。人の心を読み解く能力に優れているのは確かだと思う。そして星の扱い方は、この数回で月美の何十倍も上回っていることも明らかだった。

 

「月美さん、今日の反省点は何ですか?」

私生活において、いろいろとおしおき対象となることもあったが、

「星くんを甘やかしてしまうことと、眞木野さんをひどい人だと思ってしまったことです。」

ありのままの今の思いを伝えると、

「アッハッハッ」

と大声で笑われた。

 

「星のことはこのままで大丈夫です。以前、甘やかすなと忠告しましたが、あれは撤回します。今は私が充分すぎるほど厳しくしてますから、月美さんはたっぷりと甘えさせてやってください。そうしないと、きっと星のことだから、固い殻に閉じこもったまま出て来なそうですからね。それからもう1つの、私をひどい人だと思ったことに関しては見すごす訳にはいきません。」

 

嬉しそうに言われ、手をスッと引かれてひざに乗せられた。いつものようにスカートをめくられ、パンツを普通に下ろされてお尻を叩かれた。50発、星のおしおきのたった1/4。厳しいおしおきを見てしまったせいなのか、痛みをあまり感じなかったし、星があれほど我慢していたのだからと思うと、これくらいで「痛い」と言ってはいけない気がした。

 

ひざから下ろされ、

「星の目の前でおしおきされなくてよかったですね。」

「えっ?」

「月美さん、最近しっかりやってますから。」

「そうじゃなかったら・・・?」

 

「私はいつでもその人にとって最適な手段を考えていますから、月美さんの言動が目に余るようなものであれば、それなりに厳しい対応をするでしょう。痛みであれ精神的ダメージであれ、本人が嫌だと感じて、もう2度と繰り返さないと心を入れ替えることができるようなおしおきを提供しているつもりです。」

 

「やっぱり眞木野さんは厳しいです・・・。」

「そうですか?そう言われるのは、最高のほめ言葉です。教え子だった星に見られておしおきされるのは、相当こたえるでしょうね?」

「それだけは絶対に無理です。」

 

「でも私はひどい人のようですから、そのくらいのことは平気でするかもしれませんよ。」

「さっきの・・・。ひどい人って言ったのは訂正します。眞木野さんはみんなのことをちゃんと考えてくれて、その人に合った一番いい方法で反省させてくれる人です。」

 

「ハハハ。そう思っていただけると光栄です。誤解されないように言っておきますが、もし星が見ている前で月美さんのお尻を叩いたら、星にとってそれは絶大なご褒美になってしまうので実際にはない話です。昔から青少年の健全な育成には力を注いでいますので。」

 

 

一方、星はヒーリングルームを出ると、待合室に向かった。芳崎は他のお客さんのトレーニング中だったので、トレーニングルームから見えない一番奥のイスにこっそりと座った。

 

星は目をつぶって、今起こった出来事を思い返した。眞木野にお尻を叩かれている自分の姿と、それを眺めている月美の様子が脳裏に浮かび上がり、やるせない気持ちで胸の中がいっぱいになった。100歩譲って、男だしお尻を見られるぐらい何でもない。それよりも中学生にもなってひざに乗せられお尻を叩かれるなんて・・・。いや、月美にもひざの上でお尻は叩かれていたのだから、やっぱりお尻を見られたことが問題なのか・・・。

 

考えているうちに訳が分からなくなり、頭を抱え込んだ。どっちみち絶大な羞恥心を味わったことに変わりはない。月美と会ってどんな顔をすればいいのか?月美はきっと何でもないことのように、普通に接してくれるのだろうが、自分の気持ちが治まらなかった。

 

一番気になっていたはずの月美のおしおきが、あの部屋で進行中だというのに、今の星にはそれを認識する余裕もなかった。

 

そこに芳崎が出て来て、

「星、大丈夫か?」

心配そうに聞いてきた。

「顔色悪いぞ。だいぶしぼられたみたいだな。」

「うん・・・。」

「何発叩かれた?」

「200。」

「それはまたずいぶんだな。」

「うん・・・。」

 

「ケツ冷やしてやるから、そこに寝てろ。」

ソファを指さし、タオルを取りに行こうとすると、

「ここで?」

「ああ。」

「やだ。」

「何で?」

「誰か来るし、中の人に見られるから。」

「恥ずかしいのか?」

「うん。」

「ったく、ガキだな。」

「・・・」

「じゃあこっち来い。」

 

星をトレーニングルームに連れて行くと、

「小沢さん、すみません。ちょっとここ仕切らせてもらいますね。」

トレーニング中の初老の男性にことわると、壁際にパーテーションを置いて、星が寝っ転がれるスペースを作った。

 

「ここならいいだろ?」

「うん。」

「ケツ出してうつぶせになってろ。」

芳崎はそう言うと、タオルを取りに出て行った。ここでは冷蔵庫や冷凍庫に冷やしたタオルが常備されている。普通のお客さんには必要ないが、前にいた魁はよくそれを使っていた。

 

芳崎が戻ると、星はまだモジモジして突っ立っていた。

「寝ろ。」

と言われ床にうつぶせになると、短パンとパンツを下ろされた。

「真っ赤だぞ。これは痛いよな。」

同情するように言われ、星は自分のお尻がそんなにも悲惨な状態なのかと切なくなった。

 

芳崎は凍らせてあったタオルをバンバンと手で叩いて伸ばし、星の痛々しいお尻に乗せた。

「キャッ!」

かわいい悲鳴に、芳崎まで「キャッ」と言ってしまいそうで苦笑いすると、

「ありがとう。」

とお礼を言われた。

 

「かわいいヤツだな。」

星の頭をなでながら、

「ここなら月美さんが来ても見られないだろ?オレまだトレーニング中だから。」

芳崎はパーテーションの外へ出て行った。

 

 

「小沢さん、すみません。お待たせしました。」

「眞木野さん、相変わらず厳しいな。」

「信念、曲げないですからね。」

「眞木野さんはそうじゃなきゃ。」

「でもまじであれは逃げ出したくなりますからね。」

「経験者は語るだな。」

 

「ハイ。オレもさんざん痛い目に遭わされましたから。」

「そのお陰で今、こんなに立派な青年に成長して、おじさんも嬉しいよ。」

「小沢さん、ここ長いですもんね。全部知られてるからやりにくいんですけどね。」

「成長段階をたくさんの人から見守られてるっていうのは、幸せなことだぞ。」

「はい。感謝してます。」

 

星は仕切りの向こう側で交わされている会話に耳を傾け、眞木野と芳崎の関係を不思議に思った。

“芳崎さんって、眞木野さんからそんなに厳しくされてたんだ。それなのに何で一緒に働いてるんだろう?よく文句は言ってるけど、でも本当は仲がいいのかな?仲がいいっていうより、尊敬してる感じかな?”

 

星はますます眞木野のことが分からなくなった。というよりも、自分の眞木野に対する感情が定まらず、頭を捻った。

“今は大嫌いで顔も見たくないし、ものすごく口うるさくてうんざりすることも多い。でも、昨日は勉強してて楽しかったし、トレーニングでもいろんなことを教えてくれて為になる。それでもやっぱり、厳しいこととか支離滅裂なことを言うから頭にくることもある。”

 

星にとって眞木野はつかみどころのない、言い換えれば得体に知れない人物なのだろう。自分にとって利があるのか害があるのかも、今のところ未知数のようだ。

 

 

30分ほどして芳崎のトレーニングが終わり、星もお尻を充分に冷やしてもらい待合室に戻ると、もう月美は帰ったあとだった。星はどんな顔をして会えばいいのか思いあぐねていたのでホッとした。今日ここへ来たときには、月美と会えることを楽しみにしていたのに・・・。

 

眞木野が待合室にやって来たが、星は顔を見ることができずに目をそらした。

「そんな態度とってたら、後悔するぞ。」

あくまでも冷たくあしらわれ、仕方なく頭を下げた。

「奥行くぞ。」

と言われ、眞木野について再びヒーリングルームに入った。

 

「よく聞けよ。今からもう一度だけこの157問を説明するから、しっかり理解しろ。オレの言いたいことは分かるよな?次はないからな。」

「はい。」

星も次がないことはよく分かっている。もし同じようなことがあったら・・・想像するだけで身の毛がよだつ思いがした。

 

それから数時間、眞木野が解説することを、星は質問したりメモをとったりと明らかに昨日とは違う態度で勉強に臨んだ。受け身の状態では、いくら分かったつもりでいても、確実に頭にインプットできていないことを身をもって実感したのだろう。

 

以前は気持ちを切り替えることが苦手だった星が、こうして素直に言うことに従っているのは、眞木野が怖すぎるせいなのか、それとも星の成長の証と言えるのか?

 

眞木野は

“もうこれで大丈夫だろう。”

と確信し、翌日もう一度同じ問題集をやらせることはなかった。

 

お尻はまだ熱をもっていて当分痛みは消えそうにないが、集中して勉強できたことですっきりした気分で家に帰った。気になっていた月美からは、夜『おやすみなさい』のラインが送られてきた。おしおきのことには一切触れてないシンプルなメッセージに助けられ、すぐに『おやすみなさい』と返信した。

 

心のモヤモヤがいくらか取り除かれ、

“明日も頑張ろう!”

と前向きな気持ちになれたのは、ラインを送ってくれた月美のお陰か、お尻を冷やしてくれた芳崎のお陰か・・・。星はそんなことあり得ないと断固否定するだろうが、ひょっとしたら超絶厳しい眞木野のお陰なのかもしれない。

 

 

おわり

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