中3の第10話 友情とは《3.海と花憐》 | あまめま*じゅんのスパンキング・ブログ                        

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第1弾 『海の中のアタシ・空の中のアイツ』
双子の海と空のハラハラ・ドキドキの物語♪
第2弾 『星と月美のいい関係』
星と家庭教師の月美&トレーニングの日々!

    愛情たっぷりのおしおき満載(*'▽')

3.海と花憐

 
海がベッドに寝転んで携帯を操作していると、花憐から電話がかかってきた。
「海、親とケンカして飛び出して来ちゃった。今から出て来れないよね?」
「えっ?花憐、大丈夫なの?今どこ?」
「学校の噴水のとこ。」
「すぐ行く!少し待ってて。」
「うん。ごめんね、海。」
 
花憐が親とケンカするなんて、めったにないことだ。もうすぐpm11:00。こんな夜遅い時間に、家を飛び出すほどのことがあったのか?これは親友の一大事!と思ったら、駆けつけない訳にはいかない。
 
悠一は今お風呂に入っているから、玄関を普通に出ることもできたのだが、少しでも物音を聞かれれば直ちに見つかってしまうだろう。そうすれば海も、そして花憐も大目玉を食うのは間違いない。
 
しかし我が家には、玄関以外に秘密の出入口が存在する。それは2階のベランダ。いたずら仲間の航希と空と海、昔よく遊んだ3人組は、探検ごっこを繰り返すうちにスリル満点の侵入経路を発見していた。
 
海は部屋の窓からベランダに出るとサンダルを履いて、まずベランダの手すりを乗り越えて屋根に下り、足を滑らせないように気をつけながら物置きの屋根に移動して、塀を伝わって地面に飛び降りた。何度もサンダルが脱げそうになりハラハラしたが、このルートを上り下りすることはお手の物だったので、無事に脱出することができた。
 
ひんやりとした空気が初冬を感じさせる11月の末、お風呂上がりの濡れた髪、スウェット上下、素足にサンダル、携帯片手に夜道を歩いている女の子の姿は、かなり異様なものだった。運良く誰にも会わず学校の正門にたどり着くと、花憐も同じようなジャージ上下という格好で、噴水のまわりのベンチに座って携帯を眺めていた。
 
「花憐!」
「海、ごめんね。こんな時間に・・・。」
「ううん。どうした?何があった?」
「うーん・・・。パパとね・・・。」
 
彼から「次の週末、両親が旅行で留守なので泊まりに来ないか?」と誘われ、花憐は親に隠し事はせず何でも話すオープンな家庭なので、ありのままを伝えたところ、父親に猛反対されたらしい。いくら寛容で娘のことを信頼している父とはいえ、やはり彼氏と2人きりで泊まるということに関しては承諾できないということらしい。
 
母親は、
「節度を守り自分で責任を持てる行動ができるのなら行ってもいい。」
と言ってくれたという。つまり、体の関係は持つなということだ。さすがに男親は、高校生男子の歯止めがきかない欲望というものを自ら経験済みだからか、断固反対したようだ。挙句の果て彼を中傷するようなことを言われ、花憐はカーッとなって、親に対して使ったことのないような暴言を吐き捨て家を飛び出したといういきさつだ。
 
母親が慌てて後を追いかけようとすると、父親は「放っとけ!」と言って玄関の鍵を閉めてしまった。普段冷静な父親がそんな行動をとるなんて、余程怒っていたのだろう。母親は仕方なくこっそりと彼に連絡をとって、花憐を探してもらうように頼んだ。
 

「花憐は偉いよ。ちゃんと本当のことを親に話すんだもん。私だったら、友達も一緒とかうそついて泊まりに行っちゃうよー。」

海が言うと、

「だから海はお兄さんにおしおきされちゃうんだよね。うちの家族は隠し事はしないんだ。お互いの信頼関係をすごく大事にしてるから。今日も本当ならじっくりと話をしなきゃいけなかったのに、私が感情的になっちゃって・・・。」

 

「お父さんとしては、彼氏と2人きりでお泊りは許せないんじゃない?大事な一人娘を奪われそうで。」

「そうなのかな?セックスするからとか思ってるのかな?私、絶対そんなことしないのに。そういうところは信頼してくれてないんだよね・・・。」

「花憐のことは信じてても、彼の理性を心配してるんじゃないの?男はオオカミに変身するからねー。」

「海までそんなこと言わないで。周ちゃん、そんな人じゃないのに・・・。」

「ごめんごめん。そうだよね、周先輩、花憐のことすごく大事に思ってくれてるもんね。」

 

「海、私から呼び出しておいて、こんなこと言うのも変だけど、お兄さんには言ってないよね?ここに来てくれたこと。」

「もちろん。」

「海、ごめん。またお尻叩かれちゃうね・・・。」

「花憐のためなら、お尻なんていくら叩かれてもへっちゃらだよ。」

「海、本当にごめん・・・。私から、ちゃんとお兄さんに謝るからね。」

「そんなことしたら、花憐までおしおきされちゃうよー。」

 

 

そんな2人の前に、酔っ払った50代ぐらいのおじさんがフラフラと現われた。

「お姉ちゃんたち、こんな所で何やってるのかなー?もうこんな真夜中だから、おうちの人、心配してるよー。おじさん、酔っ払っちゃって家に帰れなくなっちゃったよー。」

 

変な感じの人ではなかったので様子を見ていると、海たちの前にあぐらをかいて座り込みペチャクチャと1人で勝手にしゃべり始めた。会社の上司の悪口とか、家で待っている奥さんが怖くて帰りたくないとか、学生時代はバカやって楽しかったとか。海も花憐も警戒心は消え、ケラケラと笑いながらおじさんの話を聞いていた。静まりかえった夜の澄んだ空気に、女子中学生2人の高い笑い声は遠くまで響き渡った。

 

しばらくすると、3人の元に花憐の彼が息を切らして走って来た。

「花憐っ!」

尖った声で呼びかけられ、花憐の動揺する様子が海には可愛らしく見えた。

「えっ?えっ?周ちゃん・・・。」

「おまえ、何してんの?こんな所で。」

「えっと・・・あの・・・。」

いつもハキハキと受け答えをする花憐からは想像もつかないくらい、平静さを失っていた。

 

「海ちゃん?」

「あっ、はい。」

「花憐からよく話は聞いてるよ。」

周は海に話しかけながら酔っ払いのおじさんを地面から立たせて、

「家に帰れますか?」

と聞くと、大丈夫だと言うので、千鳥足で危なっかしく帰って行くおじさんを見送った。

 

それから周は2人の方に向き直り、

「もうすぐ12:00だよ。君たち中学生がこんな遅い時間に出歩いてちゃいけないよね?しかも酔っ払ったおじさんと一緒にいるなんて・・・。」

いくらか2人をにらみつけながら真剣な表情で問いかけられ、海も花憐も言葉を返すことができずただ「はい。」とうなずいた。それ以上、周は何も言わなかった。

 

“周先輩と話すのは初めて。1才しか違わないのにすごく貫禄があって、怒ったら怖そうな気がする。もし私がここにいなかったら、花憐もっと怒られてたのかもしれない。彼女が危ないことをしたら、彼氏さんとしたら心配だもんね。”

 

海が勝手に妄想していると、

「海ちゃん送って行って、それから花憐送って行くから。」

「あっ、私1人で帰れるから大丈夫です。」

海が慌てて答えて歩き出そうとすると、グイッと腕をつかまれて、

「危ないから送って行くよ。」

と引き止められた。

 

周は花憐のお母さんにメールを送り、それから3人は海の家へと向かった。少し歩いて久藤整形外科の前を通り過ぎると、突然病院の電気がついて入口のドアが開いた。海が「キャッ!」と声を上げると同時に恒が顔を出した。海の口から思わず「最悪・・・。」というため息まじりの声が飛び出した。

 

すかさず恒に取り押さえられ、

「海ちゃん、今何て言った?」

「な、なんでもないです・・・。」

「周だよな?」

「はい。こんばんは。」

「さっきからチャオがソワソワしてずっと外を気にしているから様子を見に来たら、いったい何をやってるんだ?こんな時間に。3人とも中に入れ。」

 

静かだが有無を言わせない口ぶり。全員が病院の中に入ると、即座に「どういうことだ?」と聞かれた。

「先生、何でもないの。家に帰るところだから。」

海の言葉は完全に無視され、恒は周に向かって、

「説明しろ。」

険しい顔をして言った。周は高校でもテニスを続けていて、小さい頃からここに通院しているため、恒とはもう長い付き合いになる。

 

「すみません。僕もよく事情は分からないんですが、花憐のお母さんから連絡があって、花憐がお父さんとケンカして家を飛び出して行ったから探してほしいと言われて。それで探し回っていたら、そこの噴水の所で酔っ払った男の人と楽しそうに話していたので、これから2人を家まで送って行こうと思って。」

「花憐ちゃんは周の彼女なのか?」

恒が周に尋ねると、

「はい。」

と返事をした。

 

「花憐ちゃん、何で家を飛び出して来たのかな?」

恒は花憐の方に目線を移して尋ねた。

「父と言い合いになって。・・・えっと、今度周ちゃんの家に泊まりに行ってもいい?って聞いたら、ダメだって言われて・・・。」

周は親子ゲンカの原因を知って驚いた。

 

「よし。だいたいの事情は分かった。」

恒は軽くうなずいて、それからもう1人・・・海の顔を見て首をかしげた。

「それで何で部外者の海ちゃんが、そんな格好で一緒にいるんだ?」

「私が海にお願いして、出て来てもらったんです。」

花憐が海をかばうように、慌てて間に入った。

 

「悠一には言って来たのか?」

「言って来るはずないよな。」

自問自答すると、海のお尻をパシッとはたいた。

 

「まったく困ったガキどもだ・・・。たっぷりおしおきしないとな・・・。」

恒は小声でブツブツと文句を言いながら、次にするべきことを頭の中で整理した。

「周、花憐ちゃんの家に連絡はしたのか?」

「はい、しました。」

「もう一度電話をかけて、オレの所にいるから、少し話をして終わったらおまえが責任持って送り届けると伝えてくれ。」

「はい。」

 

「海ちゃんは、悠一に電話。」

海は首を横に振った。

「早くしろっ!」

普段声を荒げない恒に怒鳴られて、ブルっと体が震え、抵抗してみたことを後悔した。

 

悠一の携帯に電話をかけると、

「何だ?」

ものすごく機嫌が悪そうな声が返ってきた。

「今、恒先生の所で・・・。」

「はあー?何してんだおまえは!?」

悠一にも怒鳴られて、何も答えることができずに固まっていると、

「恒に代わってくれ。」

海は恒に携帯を差し出して、

「お兄ちゃんが代わってって。」

「もしもし。」

「ああ、そうか。了解。」

 

恒は電話を切ると、

「悠一、もう帰って来なくていいって言ってたぞ。とうとう海ちゃん、うちの子になるのが決定したな。」

「えっ・・・?」

 

花憐が見兼ねて、

「先生、海、悪くないんです。私が呼び出しちゃったから・・・。海、面倒見がいいから断れなくて・・・。」

「花憐ちゃん、でもね、もう中学3年生なんだから、いいことと悪いことの区別ぐらいはつく年齢だよね?行くって判断したのは海ちゃんなんだから、悪くないっていうことはないよね?」

 

海はただ下を向いて、少しだけほっぺたを膨らませて話を聞いていた。

「さて、2人には少しお説教をしないといけないな。」

待合室のソファに2人を座らせて、恒は診察室から自分のイスを持って来て座った。そして、3人の様子を伺える少し離れた位置に周は腰を下ろした。

 

これは少しではなく、長い長いお説教が始まるということを海は充分理解していたし、それがお説教だけでは済まされないということもよ~く分かっていた。

 

 

つづく

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