あまめま*じゅんのスパンキング・ブログ                        

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第1弾 『海の中のアタシ・空の中のアイツ』
双子の海と空のハラハラ・ドキドキの物語♪
第2弾 『星と月美のいい関係』
星と家庭教師の月美&トレーニングの日々!

    愛情たっぷりのおしおき満載(*'▽')

2.無視

 

ホームルームで担任の話なんてまったく頭に入ってこなかった。

「海、分かったか?」

名前を呼ばれてハッと我に返った。

「えっ?何?」

「ちゃんと聞いてろよ。朝からボーッとして、顔洗ってくるか?」

「・・・」

うしろの席でクスッと笑う声が聞こえた。

 

「文化祭のバナナの件、変更があった場合は変更届を提出するように。」

「あっ、はい。」

海が返事をすると追い打ちをかけるように、

「先生、それならあとで私が提出します。私の方がよく把握してるので。」

スミレが手を上げて嬉しそうに答えた。

「そうか、よろしくな。スミレはしっかりしてるから大丈夫だよな。」

オリオンは変更届をスミレに渡した。オリオンの嫌味混じりの言葉にも、スミレの得意満面な態度にも、海は無反応だった。頭の中がいっぱいいっぱいで何も感じなかった。

 

そのあとも授業には全然集中できなかったが、各教科の先生たちはそんな海の様子に気づくことなく、いつも通り授業を進めた。次の授業までの短い休み時間、いつもなら席を立って友達のところでおしゃべりしたり、一緒にトイレに行ったりするのだが、今日は席から一歩も離れず携帯を見たり、次の授業のノートをパラパラとめくってみたり、いつもあっという間に終わってしまう10分間が異常に長く感じた。

 

まわりの子たちが背後でヒソヒソと海の悪口を言っているようで、気になって仕方なかったが、うしろを振り向いて確かめる勇気はなかった。このクラスにこういうとき味方になってくれる特別仲がいい友達はいなかった。移動教室の際などは何となく誰かと一緒に行動していたし、体育でペアになるときは近くにいる子と自然とくっついていた。クラス全体を見てもべったりと固着しているような関係の子たちは見当たらず、みんな同じように仲がいい、言い換えればそれほど関わり合いが深くなくサラッとした感じの集団だった。中学のころだったら、綾や花憐が絶対に助けてくれたのに・・・

 

お弁当の時間になると、今のクラス情勢が明らかになった。昨日スミレの家に集まった8人がひとまとまりに机を並べてしまったので、海を含め残った7人が成り行きで一緒に食べることになった。いつもは自分の机の近くの子たちと何となくまとまって食べていたのに、こんなにもはっきりと分裂してしまうと、男子たちも女子たちの異変に気づき不思議そうな目線を送った。

 

海側の7人のうちの1人が、

「何?何?何でこうなってるの?」

とスミレ側の8人に向かって尋ねると、 

「昨日作ったバナナチップスのことで、ちょっと打ち合わせすることがあるから。」

という答えが返ってきた。昨日参加できなかった7人はそれぞれ正当な理由があったとはいえ、手伝えなかったことに多少なりとも引け目を感じていたので、それ以上質問を重ねたり、割り込んでそっち側に行こうとする者はいなかった。

 

海はホッとした。完全に1人取り残され14対1の状況に追い込まれたら、教室で1人ぼっちでお弁当を食べる勇気はなかっただろう。海が様子を見ている限り、海以外の6人はスミレたち8人から無視されているわけではなく、別々の場所でお弁当を食べながらも普通に会話をしていた。

 

“私だけ?”

海は居たたまれない気持ちになった。何が原因なのか気になって仕方なかったが、

“また無視されるかも・・・”

と思うと、自分からそれを追求することはできなかった。まわりを飛び交う会話から情報を得ようとしたけれど、ヒントになるような話は聞けなかった。

 

そんな心境でお弁当を食べても味なんてまったく分からず、いつもはペロッとたいらげてしまう量なのに、半分以上残して蓋を閉じた。

「海、食欲ないの?」

隣で食べていた若菜に心配されたが、

「うん。朝ごはん食べ過ぎちゃって。」

と言ってごまかした。

 

翌日海は学校を休んだ。こんなことで休むなんて自分が情けなかったが、精神的なつらさだけでなく本当に体調が悪かった。熱はなかったけれど頭がクラクラするし、食欲もなく胃がキリキリと痛んだ。顔色も悪くボーッとしている海を見て、悠一は

「大丈夫か?」

と声をかけた。昨日のお弁当も残してあったし、連日の文化際の準備、責任者の重圧で疲れが溜まっているのだろうと心配した。いつもならすぐに「病院行くぞ」と強引に連れて行くのに、今日は優しく

「1日ゆっくり寝てれば、明日は大丈夫だろう。」

と言って、お昼に食べるようにお粥を作ってから仕事に出かけた。

 

起きているといろいろと考えてしまうので、海は極力頭の中を空っぽにして寝ようとしたが、

“あれもやらなきゃ、これもまだできてない”

文化際当日までのスケジュールを考えると、休んでる場合ではないのにと焦りを感じた。それと同時に、昨日あからさまに無視されたやるせなさが込み上げてきて、不安でたまらなくなった。

 

それでも1日休養をとると、翌日はいくらか気持ちが落ち着いて登校することができた。昨日「食欲ないの?」と心配してくれた若菜と玄関で会った。

「海、大丈夫だった?体調悪かったの?」

「うん。もう大丈夫。」

「文化祭の準備で疲れちゃったんじゃないの?」

若菜はサッカー部のマネージャーをしていて、クラスでも面倒見のいい頼れる存在だったので、海は思い切って無視されていることを打ち明けた。

 

「そうだったの?全然気づかなかったよ。おとといお弁当のとき、あっちだけで集まって嫌な感じだったから、おかしいなとは思ったけどね。」

「昨日はどうだった?」

「昨日はいつも通りだったよ。」

「やっぱり私がいなかったから・・・」

「海、心配しなくて大丈夫だよ。私ちょっと探りを入れてみるね。」

「ありがとう。どうしてこうなっちゃったのか分からなくて・・・」

海は若菜の言葉に救われた。あと数日で文化際当日を迎えるというのに、こんな状態では精神的にキツすぎる。とにかく自分1人が無視されている原因を知りたかった。

 

スミレたちが作ったバナナチップスがどうなったか確認しなければならないし、当日の役割分担もまだ決めていない。他にも細かい作業や打ち合わせすることがたくさんある。今仲違いしている場合ではなかった。スミレだってそんなことぐらい分かっているはずなのに・・・。

 

その日の昼休み若菜が取りもってくれて、スミレとはギクシャクしながらも何とか会話ができるようになり、放課後から再び準備を進めることができた。

「原因は何だか分かった?」

と若菜に聞くと、

「それは教えてくれなかったけど、スミレも文化祭前にケンカしてる場合じゃないっていうのは分かってるみたいだから、もう大丈夫だよ。」

「若菜、本当にありがとう。」

海は感謝の気持ちで胸が熱くなった。

 

「これ、スミレから。」

かわいらしくラッピングされたバナナチップスを渡された。直接渡してこないのを不満に思ったが、ここでまた波風を立て再び険悪な関係になってしまったら、間の入ってくれた若菜に申し訳ないと思い、気持ちを落ち着かせた。

「直接渡さないのも、どうかと思うけどね。」

若菜がそう言うのを聞いて、

“そうだよね。私の思ってること間違ってないよね”

 

バナナチップスはおいしかったし、これならきっと売れるだろうと思った。

 

今日もスミレの家に集まって残りの分を作っていたが、先日参加しなかったメンバーは声をかけられなかった。家の広さや仕事の効率などの事情はもちろんあるだろうし、「ごめんね今日も行けないの」と断られる可能性もあるだろうが、それでもクラスのイベントなのだから女子全員に声をかけるべきだと思うのだが・・・

 

値段も勝手に決められてしまったし、発注ミス以外にも追加でバナナを購入してさらに多くのバナナチップスを作っていたことも、海は聞かされていなかった。

“私がリーダーなんだから、全部話を通してくれないと把握できなくなる”

それは躊躇せずに意見していい事案だったのに、また無視されるのが怖くて言い出すことができなかった。バナナに関しては海は一切関与せず、全部スミレに任せることにした。

“その代わり、何かトラブルが発生したときの責任も当然とってもらおう”

と思ったが、本人には伝えることができなかった。

 

準備期間中、担任は放課後何度か教室に顔を出した。ただのぞきに来ただけで、みんながワイワイと作業をしている様子を見ると、満足そうに職員室に帰って行った。きっとバナナを巡る女子の分裂なんて知らないだろうし、海とスミレが衝突していることなど知る由もなかった。

 

前日はいろいろとやることがあって大忙しだったのに、スミレは塾だと言ってひとことのお詫びもなく下校してしまった。

「今日ぐらい塾休んでほしいよね。」

海は誰に言うでもなくボソッとつぶやいた。午前中で授業が終わり部活もなかったので、ほぼクラス全員が残って準備にあたった。pm8:00には完全下校となるので、何とかそれまでに作業を終わらせ、みな口々に

「明日は頑張ろうね。」

と気合を入れて教室を後にした。

 

 

つづく